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昔から障害福祉の現場では、アート活動や創作活動と呼ばれるプログラムが実践され、利用する人たちからも親しまれてきました。

アート好きな現場の職員が手探りで行ったり、著名なアーティストが関わっている事業所もあったりと、日々様々な現場で活動が行われています。

では、なぜ障害福祉の世界で創作活動や表現活動は、全国的に親しまれてきたのでしょうか。

アートで自己を表現することは何が良いのか、なぜ障害福祉に必要なのか、私なりに感じたことをまとめたいと思います。

例えば、アート活動で絵を描いたり立体物を創ったりしたとします。その中で生み出された表現は、どんな表現であっても許容されます。ありのままが受け入れられる体験ができる機会となるのです。

療育や支援が必要とされる人は、特に小さい頃、自分のありのままを受け入れられる経験が極めて乏しくなりがちです。ありのままを認められる経験を補完できるアート活動は、とても意味があることだと考えています。

小さな頃から社会のルールに適合するようにと、日々指摘されながら生活してきた人にとって、オアシスのような意味合いをもつのではないでしょうか。

これは支援者側から見ても同じと言えるかもしれません。社会の一般的なルールやマナーを伝え続ける日々…。そのことに意義を感じる一方で、その正解不正解のある訓練的な毎日に嫌気がさすこともあるでしょう。

彼らの既成概念にとらわれない表現を目の当たりにすれば、誰しもが認められる環境作りや活動を行いたいと思うことは、想像に難しくありません。

このようなことから、アート活動と障害福祉は、非常に相性が良いことが分かります。

試行錯誤を繰り返すうち、出来上がる作品のユニークさや作品を世に出すことで世界観が拡がることを支援する側が知り、実践の中で自然発生的に普及していったのではないでしょうか。

また、日々の何気ない日常であったとしても、支援者がアート的な視点で日々の関わりを見つめ直してみると、新しい発見に繋がったり、日々のルーティーンワークに彩りを感じられたりもします。

私が大好きな作品の一つも、関わる人が柔軟な発想をもっていたからこそ、生み出されました。

作品については、下記のリンクからご覧いただけます。

未知の細道 No.146 |25 September 2019
#4無意味な行為の先に
https://www.driveplaza.com/trip/michinohosomichi/ver146/03.html

現代アートのレビューポータル kalons
リビング - 日々の世界の奏でかた
https://www.kalons.net/index.php?option=com_content&view=article&id=10241&catid=339&lang=ja&Itemid=

武田 拓さんは、福祉施設の活動として、割りばしを牛乳パックに一定の量まで詰め込んで燃料を作るという作業を行っていました。既定の量はありますが、実は本人は、いつももっとたくさんそれを詰め込みたいという思いがあったようです。

そのことに気付いた職員が、試しにどこまで入れるか見守ってみようと周囲へ提案しました。すると天井まで届きそうなくらい積み上げた大きな集合体を完成させたそうです。

こうしたやり取りの中で生まれた作品は、結果的に数多くの展覧会で展示されることとなりました。

ぜひ生活の中にアート活動の要素を取り入れてみてほしいと思います。

実際に創作をしてみても良いですし、その時間や場所を確保することが難しい時には、煮詰まりそうな支援者こそ、アートのように、時には逸脱してみること、弾力のある関わり方や余白を大事することを意識ほしいものです。


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