💎ひかりものが好きなからす💎

からすと名乗る男性がいた。
年齢は34歳。
博識で、盛り上げるのが好きな男性だ。
様々な配信者と実際に会い、その様子も配信することもしばしばあった。
自分に関する情報を、事前にすべて開示するタイプの男性だ。
いろんなことに挑戦するアグレッシブさを感じられた。
人に教えることが好きで、質問を受けると積極的に答えていた。

うさみみは、ひとつ気になることがあった。

からすは、他人の交友関係の情報収集に憑りつかれている。
知りたがる。把握したがる。掌握したがると表現すればいいのだろうか。
この人とあの人の繋がりはいつからある。そしてこの人とあの人はこういった経緯で、今疎遠である等とリアルタイムで把握したいのだ。

また、自分の配信に固定メンバーも置きたがる。
からすの中で管理していると認識している固定メンバーが、からすの配信に揃わないと落ち着かないようだ。

スケジュールを決めず、突発的に始める配信（ゲリラ配信）がからすの基本スタイルだ。
そのため自分が今から配信を始めるというときには、他の配信者の配信に顔を出す。
それはその配信者の配信にリスナーの誰がいるか、確認するためである。
また、その配信者がいつ配信が終わるかの確認も兼ねている。

からすは配信に呼び寄せたい人が居そうな他人の配信に来ては、「今から、からすの配信を始めるから」と、コメントして去っていく。

実は他人の配信に顔を出す前に、からすは呼び寄せたい人に個別になぜからすの配信に来ないのかや、からすの配信に来るように促すメッセージを他のSNSを使って、送ってきていたという。

twitterやInstagramなど連絡先の交換をしているひとは、アプリ内には多くいる。
アプリに掲載も出来る機能はあるし、交換してしまったひとが悪いわけではないのだ。
配信の中だと良い関係でも、個別のやりとりでこじれてしまうのはよくあることだ。

からすとにとってのひかりものは、他人の個人情報であるとうさみみは感じていた。
その人の年齢、出身地、家族構成などはもちろんだが聞きたがる。
自分が開示しているため、他人にも求める人が多いが、からすはその典型だ。

夜中にうさみみが配信を行っていると、ふらりとからすが立ち寄った。

うさみみちゃん、あのね。

珍しくからすが深刻そうに切り出す。
からすは自分の恋愛事情など話すのだけは、嫌がるのだけれども。
自分自身の体験を書き込みしだした。

からすが昔、長く付き合って同棲していた彼女が男を連れ込んで、性行為していたところを目撃したそうだ。思わず、からすは家を飛び出した。気づいたら線路の上にいたとのこと。

それからどうやら、からすは恋に億劫になっているとのこと。

いつものからすからは、想像できないような秘め事をうさみみは聞かされてしまった。
からすは他人の会話泥棒してしまうし、自分が見聞きした情報もすぐに開示する。
常に自分が会話の主役でないと気が済まないのだ。

うさみみの傾向なのだが、最初の印象が良い、誰とでも仲良く出来そうな雰囲気の人は、時間が経つにつれてうさみみは苦手になっていく。

徐々に時間をかけてなど、相手の都合を考えないからか、うさみみがしつこく感じてしまうのだ。
また自分自身のプライベートの情報を開示してくる人は、他人にも同じように開示を求めることが多い。
その中でも人を選んで自分自身の情報開示した際は、相手にもなかなか開示しない、重要な秘密の開示を求める。

からすにとってのひかりものは、 情報。
とりわけ“ 秘め事”なのだ。

でも、ひかりものは暗闇では輝かない。
光に照らされて、輝きを増すのだ。

だから、うさみみはからす一人だけに隠し事は教えない。

秘め事を漏らす時は、全ての人の前で行う。

そういうことにしておこう。

＊20話完結です！オムニバス形式ですが、順に読んでいくのがオススメです！＊