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地球不動産「一間」場所が居場所になる。①



彼がインスタグラムで呟いた、「誰にも所有されていない公園があったらいいのに」と。そして僕も共感し、思った「そんな場所を作ってしまおう」と。

彼とは共通の知人たちを通じて知り合った。(その共通の知人も”ある”古本屋で出会ったのだが)お店のお客様として足を運んでくれたのが最初で、その時普段何してる人で何を考える人なのか全くわからなかったけど、なんとなく感性のベクトルが似ているような気がした。だから当然意気投合した。

休みが被ったりすると一緒に遊ぶようになった。彼は普段、東京と児島の2拠点生活をしている、(大体)2ヶ月間隔で岡山に帰ってきてはタイミングを見計らって会うようにしていた。会う間隔が空いているからなのか、それは分からないけど、毎回僕と会うときは「初めまして」の感覚に彼はなるらしい。
不思議な関係性が構築されている(気がする)。


今年の1月末ごろ、一晩だけ彼の家でお酒を飲んだことがあった。

彼が住む団地は窓から瀬戸内海を一望できる。
海は穏やかで、海が珈琲カップを片手に持ちながらソファでリラックスしているような日があったり、チャプチャプと音を立てなんだか楽しそうな日もあったり、時には雲や風と喧嘩してザッパーン!っとでかい怒鳴り声をあげるような日だってある。窓の景色は、そんな喜怒哀楽に溢れた日常が当たり前に存在していた。


「誰にも所有されていない公園があったらいいのに」の続きを話した。
突拍子のない話題で「誰にも所有されていない」ってどんな状態なんだろうとか、そもそも何で”そんな場所”を作りたくなったんだろうって「あー、たぶん、これは考えれば考えるほどメンドクサい話題だ」と頭を少し余儀ったのだけど、「この話題を掘りたい」とワクワクしている僕自身も存在していた。

僕の中の好奇心が背中を押す、というより”好奇心が僕にもたれかかっていて、メンドクサいと思っていた自分はあっという間に押し潰された。

正直「公園を作りたい」と思っただけ、特に「何のために」「誰のために」なんてことは一切考えていなかった。コンセプトが全くないただの「作りたい」という行動が僕らの気持ちを動かしていた。言葉だけを見ると、全く意味のない無駄な考えのように思われるかもしれないが、僕らにとっては意味ありげに、言葉としてアウトプットされた「誰にも所有されていない公園」というコンテンツにはきっと、これだ!と直感で感じられる理想の「解」が必ずあるはずだと信じた。


僕らはずっとこの話題やそれ以外の話題に触れ、尽きない会話を楽しんでいたのだが、答えに辿り着くことは無さそうだった。でもそれはそれでよかったり、模索のしがいがあるってもんで。
ただただ仮定をたくさんつくる工程が楽しかった。
これはある意味研究者っぽい、いや、ちょっと変態かもしれないね。

彼の団地周りの海岸沿いは散歩コースにちょうどいい道がいくつもある。
1月末のめちゃくちゃ寒い海岸沿いだったけど「いい散歩コースがあるから歩こう」と彼が言い出し、僕らは極寒の中、500mlの缶ビールを片手に持って、片道1km程度の真っ暗な道を歩くことにした。(ちなみに彼は一日一万歩 歩くというルールを自身に課している)誰がこんな寒い日に歩きたいと思うのか、せいぜい散歩に行けなくてフテている犬くらいだろう。でも僕らはそんなことはお構いなしにいろんな分野へ派生したり、ループしていたり、幾つもの話題に夢中になっていた。夜で真っ暗な海岸沿いではあったけど、月あかりで若干薄暗い海の景色が綺麗でどこか儚いものを感じ自然と心を奪われていた自分が居た。


道中は飲みながら歩いたせいか酔いが結構回ってあまり覚えていないけど、主に人の行動について斜め上から、下から、横から、角度を変えて行動心理(勉強したわけじゃないからそれっぽい感じで)を自分なりの解釈で考えを話しあったりした。


「そろそろ家に帰ろうか」と切り出し、自宅に帰ろうとした時だった。正直一言一句覚えていないし、前後の話も(酔いが周りすぎて)記憶が曖昧ではあるけれど、「誰も使われていない空間、スペース、岩場の出っ張り、森の中、そこに家具とか古道具とか置いて、そこに人は住めない環境かもしれないけど、本当に暮らしているような、ちゃんと住人がいる場所を作ろう」的な内容だったと思う、そんな会話をした。

ここにもまだ、コンセプトはない。
でも僕らにとってはなんとなく「必要な思考」もしかしたらそれは僕らだけしか満足しないアート的要素のような、でも誰かに届く「何か」がちゃんとそこには在る(居る)ような。そんな気がした。

その時は明確に出てきた言葉ではないけれど、
感覚としてはあったのは「『場所』が『居場所』になる」それだけが僕の中には一つ、はっきりとしていた。

「地球不動産『一間』」へ続く。








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