ツヤマ ユウスケ

フリーライター/ねとらぼ、マグミクス、Quick Japan Webで映画やアニメの考…

ツヤマ ユウスケ

フリーライター/ねとらぼ、マグミクス、Quick Japan Webで映画やアニメの考察記事を執筆/フォトメディアDof Magazine で取材記事を執筆/編集・ライター養成講座 即戦力コース 米光一成クラス12期生/カメラマン伴貞良氏主宰 おっさん写真道・虎の穴会員

最近の記事

本屋大賞2024ノミネート小説全作レビュー【第7位〜第10位編】

本屋大賞2024にノミネートされた全10作品をレビューする連続企画の最終回。以下、第7位から10位の読みどころを紹介する。 第7位『リカバリー・カバヒコ』作:青山美智子/毎日新聞出版【青山美智子節全開 癒しの連作短編小説】 5人の主人公たちが正面から過去と向き合い、己の弱さを受け入れていく小さな物語が描かれる。読む者の「傷」を優しく癒してくれる作家といえばこの人——青山美智子による連作短編集である。 何といっても、本作のシンボルである「カバヒコ」がいい。公園にある古びた

    • 本屋大賞2024ノミネート小説全作レビュー【第4位〜第6位編】

      今年2月以降、筆者はノミネート作品全10作を制覇しようと黙々と読んでいたところ、世の中には同志とも言える読書家が多くいることに気がついた。 同志が集うのは、読書家コミュニケーションサービス「読書メーター」。筆者はこのサービス内で一冊ずつレビューを書きためており、高評価のリアクションボタンをくれる相手のプロフィールを一通りチェックしていた。 そうしたら、まぁ書店員さんや図書館司書さん率の高いこと高いこと! 自腹でノミネート作品を買い、年に一度の「本のお祭り」を率先して楽しむ

      • 本屋大賞2024ノミネート小説全作レビュー【第1位〜第3位編】

        4月10日、「本屋大賞2024」受賞作が発表された。本屋大賞は2004年にはじまった文学賞。全国の書店員さんがその年に読んで面白かったと思う本を推薦し、全部で10のノミネート作の中から最も支持を集めた作品に大賞が与えられる。目利きの書店員さんが自身の読書経験を生かし、ぜひ売りたい推しの本を選ぶというのだから、読んで間違いのない作品のオンパレードになっている。 2月のノミネート作品発表以降、筆者は10作品全て読んだ。初めての経験だった。 それで実際にやった結果……想像をはる

        • 【予告】4/10に本屋大賞2024ノミネート作全作レビューを投稿します! 読書メーターに書きためた10作品レビュー(https://bookmeter.com/users/1363038)を再構成して、まとめてnoteの記事にしようと思います。 大賞が発表される4/10が待ち遠しいですね。 自分の推し作品が何位にランクインするのか……ドキドキ!

        本屋大賞2024ノミネート小説全作レビュー【第7位〜第10位編】

        • 本屋大賞2024ノミネート小説全作レビュー【第4位〜第6位編】

        • 本屋大賞2024ノミネート小説全作レビュー【第1位〜第3位編】

        • 【予告】4/10に本屋大賞2024ノミネート作全作レビューを投稿します! 読書メーターに書きためた10作品レビュー(https://bookmeter.com/users/1363038)を再構成して、まとめてnoteの記事にしようと思います。 大賞が発表される4/10が待ち遠しいですね。 自分の推し作品が何位にランクインするのか……ドキドキ!

          『ゴジラ -1.0』レビュー 吉岡秀隆の名台詞「ひとりの犠牲者も出さないことを誇りとしたい!」を噛みしめる

          『ゴジラ -1.0』のテーマのひとつ——「命を粗末にしない」ということ。 もしかしたら観客にとって、あまりに当たり前なことかもしれない。しかし、山崎貴監督はこれをド直球で投げかけてきた。 『ゴジラ -1.0』の主人公は、生き残ることに罪悪感を抱く男・敷島浩一(神木隆之介)。作中世界の1945 年当時、彼は零戦に乗る特攻隊員だった。しかし敵兵との戦いからも、離島で出くわした怪獣・ゴジラとの戦いからも、ただ「逃げる」ことで生き残ってきた。何も根っからの卑怯者だったわけではない。

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          逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』レビュー ナチス政権下のドイツを生きた少年少女の知恵と勇気

          野蛮な暴力にさらされた人を見捨てない。 逢坂冬馬の最新作『歌われなかった海賊へ』は、そんな勇気をくれる力強い本だった。 前作『同志少女よ、敵を撃て』(2022年本屋大賞受賞作)があまりに衝撃的な内容だっただけに、筆者は期待MAXで読み始めた。結果、「また違った方向性で傑作だ!」と大満足。逢坂節全開の戦争小説でありながら青春小説でもあり、そして音楽小説でもある。是非お勧めしたい本だったので、以下、読みどころを紹介する。 「私は、人の焼ける臭いを嗅いだんだ」舞台は 1944

          逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』レビュー ナチス政権下のドイツを生きた少年少女の知恵と勇気

          WOWOWで実写版配信中『三体』レビュー 期待を上回る完成度だったサイエンス・ミステリードラマ

          劉慈欣原作の大ヒットSF小説『三体』(早川書房)が遂に映像化。WOWOWオンデマンドでドラマ版(制作:中国 テンセント社)の配信がはじまった。 原作既読勢からすれば、あまりにデカいスケールの作品であるがゆえに映像化には正直不安があった。ところが配信を観てみたところ、期待以上の完成度にビックリした! なんなら原作よりも先にこのドラマ版を観ちゃうというのもアリだし、劉慈欣作品の入門編として最適じゃないだろうか。 10/7から配信の1〜10話は、めちゃくちゃスタイリッシュなサイ

          WOWOWで実写版配信中『三体』レビュー 期待を上回る完成度だったサイエンス・ミステリードラマ

          『神田ごくら町職人ばなし』レビュー 時代劇マンガで描かれる江戸の職人の究極ロマン

          もし、自分が作ったモノが100年先まで残っていて、ずっと使い続けてくれたとしたら……。 これぞ職人としての究極の夢であり、ロマンではないだろうか。 時代劇マンガ『神田ごくら町職人ばなし』(作:坂上暁仁)は、江戸の職人街ではたらく若者の日常を切り取り、匠の技とアツい想いを描く作品だ。2023年8月31日に発売された単行本第1巻では、桶職人や刀職人、藍染職人、畳職人、左官職人らが登場する。 浮世絵を思わせる素敵な装丁に惹かれて、筆者は書店でこの本を手に取った。そして実際に読ん

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          読書感想文コンクール課題図書『5番レーン』レビュー 頑張りすぎるあなたに読んでほしい韓国発の水泳小説

          選手として結果を追い求めることと、競技を楽しむこと。頑張りすぎる人にとっては、どちらか一方だけではない「ちょうどいい」状態に至るなんていうのは、もはや悟りの境地かもしれない。 韓国の児童文学作家ウン・ソホルの『5番レーン』では、主人公がそんな「ちょうどいい」をめざして少しづつ成長する姿が描かれる。 小学6年生のカン・ナルはアスリート一家に生まれた水泳少女で、人生の全てを競泳にかけてきた。しかし、強力なライバルの出現で自分を見失い、スランプに陥ってしまうところから物語がはじ

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          『この夏の星を見る』レビュー しんどいコロナ禍の日々を見つめなおす辻村深月最新作

          しんどい思いをしたコロナ禍の3年間も、決して悪いことばかりじゃない。辻村深月最新作『この夏の星を見る』(角川書店/2023年6月30日発売)は、そんなポジティブな気分にさせてくれるイイ作品だった! 過去作『かがみの孤城』に通ずるメッセージ描かれるのはコロナ禍がはじまった2020年の学校現場。修学旅行やインターハイ、合宿などが次々と中止になって、本作に登場する中高生たちは意気消沈する。しかし彼らは、これ以上自分たちの青春を奪われてたまるかと、力強く立ち上がる。 最初に出てく

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          超ロングラン上映中『トップガン マーヴェリック』レビュー 『M:I』に通ずるトム・クルーズの絶対的信頼感

          トム・クルーズ主演『ミッション・インポッシブル』(以下『M:I』)の最新作が大ヒットを飛ばしているが、今だに『トップガン マーヴェリック』も超ロングラン上映中だ。 2023年8月1日現在で上映日数436日を突破し、「君の名は。』(351日)や『鬼滅の刃 無限列車編』(288日)をとっくに抜いている。最近筆者が日比谷の劇場へ久しぶりに観に行ったところ、老若男女幅広い層の観客がいた。 それほど愛され続ける本作の魅力を紹介しよう。 マーヴェリックは背中で語る男前作『トップガン

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          『超新星紀元』レビュー 『三体』を超えて爆発する劉慈欣の妄想力

          『三体』で大ヒットを飛ばした中国の作家:劉慈欣の最新刊『超新星紀元』(早川書房 7/19発売)が凄い。13歳の少年少女が全地球規模で豪快にサバイバルを繰り広げるSF小説で、この夏ぜひ手に取ってほしい傑作だ! 15億人の「ワルガキ」が暴走する物語の冒頭、太陽系に程近いある恒星が超新星爆発を起こす。地球に高エネルギーの宇宙線が降り注ぎ、全人類の染色体を破壊。調査の結果、13歳以下の子どもは自己修復が可能だが、14歳以上の人間は全員死亡することが判明する。こうして、まだ幼い子ども

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          今日の金ローは『もののけ姫』/『君たちはどう生きるか』も観てきた

          『もののけ姫』考察記事の告知今日7/21放送の金曜ロードショーで『もののけ姫』が放送されるということで、ねとらぼ様に考察記事を寄稿した。 前から個人的に気になっていた「モロは実は人語を話していないんじゃないか説」を検証するもの。 リサーチにあたって『もののけ姫』の絵コンテを読み込んだ。 宮崎駿監督の細かいト書きがとにかく面白い! こんな意図があったのかと発見の連続だった。 そして監督はやっぱり絵が上手い。 で、後半になるにしたがって制作期間が足らず、絵も字も荒れまくる

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          読書感想文コンクール課題図書『それで、いい!』レビュー 大人が読んでも大満足な本格「モノづくり系」小説

          苦悩の絵描き・キツネのひたむきさが愛おしい今年の青少年読書感想文コンクール「課題図書」。これ、読んで胸が熱くならないわけがない! 小学校低学年の部の図書『それで、いい!』(文:礒みゆき、絵:はたこうしろう)は、絵を描くことが大好きな主人公の挫折と再生を描く全77ページの物語。 喩えるなら大人気マンガ『ブルーピリオド』や『ルックバック』の児童文学版みたいな作品だ。 主人公のキツネは、どこに行くにもクレヨンを手放さないという天性の絵描き。散歩中に見つけたカッコいいバッタ、き

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          ジブリ『風立ちぬ』レビュー ただならぬ熱量で感じるアニメ制作の「愛」と「哀」

          宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』公開直前の今、2013年のスタジオジブリ映画『風立ちぬ』を改めて観てほしい。 本作は、ジブリ史上初めて実在の人物を主役に据えたリアル路線のアニメだ。しかもヒロインは快活な冒険少女ではなく、病に冒された薄幸の女性。公開当時、『風立ちぬ』はそんな異例づくしの作品として話題になった。 筆者としては、この映画が「モノづくり」をメインにしたドラマだったことに感銘を受けた。作中の飛行機職人たちは実にカッコいいし、それを描くスタジオジブリ自体も凄

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          露伴の初恋の決着を目撃せよッ! 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』レビュー

          誰にでも、少し背伸びした恋の思い出はあるだろう。いつも偉そうで俺様キャラな岸辺露伴も例外ではない。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、これまで明かされなかった彼の青春時代の心情を描くストーリーだ。過去作『ジョジョの奇妙な冒険』第4部や、彼を主人公にした一連のスピンオフマンガ『岸辺露伴は動かない』のファンからすれば、従来の露伴イメージがガラッと変わること間違いなし。5/26から公開中の実写版映画を原作マンガ版(作:荒木飛呂彦)と比較しながらレビューする。 露伴も経験した「思春期の

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