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Design&Art|Colors in Finland 〈05.レッド〉

日本でも世代を超えて長く愛されている、フィンランドのデザイン。アアルト大学でデザインを学び、現在は日本とフィンランドを繋ぐデザイン活動を行っている、lumikka(ルミッカ)のおふたりが、フィンランドデザインをつくる様々な要素を探り、その魅力を紐解きます。

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回はクランベリーパウダーの赤色を出発点に、人やモノ、都市から自然まで、様々な風景をお届けします。


“Botanica”, Esteri Tomula, Arabia, 1982-1986年

赤から連想されるもの。たとえば森のベリーや野花、街中の信号やポスト。紅葉や提灯、鳥居など。空の青や木々の緑と違って、赤は「面」というより「点」として存在していることが多く、他の色よりも目立つ存在・特別な状態なものとして感じられます。

「赤」とは、他の色とはすこしだけ距離のある、わずかに孤独を帯びた色なのかもしれません。


スオメンリンナ島のガラス工房にて
“Marja”, Saara Hopea, Nuutajärvi, 1956-1961年

真っ赤な窯の中から生まれてくる、フィンランドガラス。赤いガラスは製造上の理由(色が安定しない / 調合が難しい等)で値段が他の色より高いということがあります。


白や青などさわやかな色の印象が強いフィンランドですが、意外にも、街には様々な赤がひそんでいます。お隣デンマーク発祥のLEGOや、トラムの座席まで。


夏の間だけ街を走る、PUBトラム。大手ビールメーカーのKOFFによって運行されており、お酒を飲みながら市内の観光をすることができます。


レトロな車と仲良しなバイク、誰かを待っている赤いベンチ。


補色の関係にある赤と緑。対極にあるはずの色同士がかえってそれぞれを引き立て合うって、なんだか素敵です。


刻々と近づく冬の夜、夜の闇。そんな北欧の夜を照らすのは、街の鮮やかな光たち。

結局、私たちは暗闇の中では光を探してしまうし、光の方へと向かってしまう。街灯に群がる夏の虫や、満月に導かれる海の魚たちと同じく、人間もこの地球上の生き物のただ一種・一族に過ぎないのでしょう。

眩いほどの赤い光は、冬の沈んだ心の深くまでも到達します。


1月1日のヒエタニエミビーチ(ヘルシンキ西側にあるビーチ)で、星空を眺めたことがあります。冬の夜空に瞬く、大きな赤い星が見えました。

おそらくそれは、ベテルギウス。冬の大三角形、そしてオリオン座を形成する星のひとつで、地球からは640光年ほどの距離にある恒星です。一般的に青い恒星は若く、赤い恒星は老いていると言われているのですが、さらに、この赤い星ベテルギウスはすでに終末期を迎えていると研究者からは予測されています。

私たちが見ているあの赤い光には、宇宙の孤独が帯びているのでしょうか。
赤色の孤独は、宇宙の果てまでも続いているのでしょうか。


lumikkaによるコラムシリーズは、来月、2023年の12月をもって終了します。ここまで、およそ2年間続いてきた事実には驚くばかりですが、それも読んでくださる方が居てこそのものです。

最終回も、ぜひどうぞご覧ください!

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