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Design&Art|Colors in Finland 〈04. ブラウン〉

日本でも世代を超えて長く愛されている、フィンランドのデザイン。アアルト大学でデザインを学び、現在は日本とフィンランドを繋ぐデザイン活動を行っている、lumikka(ルミッカ)のおふたりが、フィンランドデザインをつくる様々な要素を探り、その魅力を紐解きます。

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回は、秋の乾いた風に漂う落ち葉のブラウンを出発点に、様々な風景をお届けします。


春の新緑にはじまり、時の経過と共にその色を変えてゆく木々の葉たち。最後は、新たな生命のための養分として地に還るという一連の巡りは、人生そのものに例えられたり、人という生命の儚さと重ねて語られることがよくあります。

夏の終わりの切なさや、秋の風がもたらす感傷は、そこに自分自身の残像が含まれているということの証なのだと思います。有限性の中に無限を乞うこと、瞬間の内に永遠を願うこと。「エモーショナル」の本質は、そこにあるような気がします。


独り、飼い主の帰りを待ち侘びて。鋭く差し込む秋の光は木漏れ日を映し出し、朽ちた落ち葉と共に街の日常に寂しさをもたらします。

秋の記憶の集積地。冬を待たずして、どこか遠くへと運ばれてゆくのでしょう。


アラビア・イッタラデザインセンターには、“秋の色”が収集されています。

ショーケースに入れられたウラ・プロコッペによるルスカシリーズは、アラビアの代表的なシリーズとして今も世界中で親しまれています。ルスカ(紅葉)というシンプルなタイトルと、プロダクトの美しいグラデーション・ざらつきのあるテクスチャ。「もの」を介して自然の風景が連想される、まさにフィンランドらしいアイテムです。

歴史の蓄積が生み出した、数多ものカラーサンプルはまるで美しい方程式のよう。人の心を惹きつけるための隠されたエッセンスです。


アラビア社やイッタラ社が色にまつわる美しい方程式を解いていったように、ふたりのアアルト、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルトは素材の調和を探求しました。

とりわけ、赤レンガと木の素材は“アアルト建築”の象徴とも言えるでしょう。


アアルト建築の他にも、フィンランドの街にはたくさんの「ブラウン」が潜んでいます。湖の青、雪の白、森の緑にも並ぶほど、この国においては馴染みの深い色かもしれません。

新しいヴァンター空港の天井。

市立図書館Oodiのエントランス。

石造りの教会の窓。

テンペリアウキオ教会(岩の教会)の天井。

そして、ラプアにあるLAPUAN KANKURITの建物も。


自然に見られるブラウンと、フィンランドの街に見られるブラウン。

それぞれが異なる物語・色の意味を持っており、そこに強い関係性があるわけではありませんが、両者が交わる秋の街の風景にはなんとも言い難い美しさがあります。「色」の時計の長針と短針がちょうど重なる瞬間、それが秋という季節なのだと思います。

きっとまた気付かぬうちにこの季節も遠くへ去ってしまうのでしょうが、それまでのひとときは秋の空気を、秋の色彩を楽しんでみるのも良いかもしれません。

次回はブラウンのお隣、赤の風景をお届けします。

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