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いつだって、3月はきらいだ。

気づけば卒業シーズン真っ只中。
ラジオでも卒業ソングが頻繁に流れ、街を見渡せば、ピシッと正装をした幼稚園児とその両親が手を繋いでいたり、大学生と思しき袴姿の女の子が慣れない下駄で懸命に歩く姿を見かけたりする。

ああ、今年もこの季節がやってきたのだな、と微笑ましく思うも、どこか他人事のように、しばらくぼんやりとその後ろ姿を見つめてしまう。

わたしの会社でも、現在進行形で大学4年生のインターンの子たちが大学卒業とともに続々と卒業していく。ひとりひとりにメッセージを書いて、ありがとう、頑張ってねと送り出す。

昨年は、あちこちで盛大に送られる側の立場だったと思うと、この一年でぐっと年をとったような気がしてくる。ああ、でもまだ一年か。

卒業というのは一応学校の規定の全課程を修了することを指すものだから、社会人になった今、もう本当の意味での卒業は来ないんだなあと思うと少し寂しい。

春といえば出会いと別れの季節だと言うけれど、わたしはずっと、3月の別れをひきずって、4月からの出会いに前向きになれないタイプの人間だった。別れというイベントは、いくつになっても、何度経験しても、慣れることができない。

生きてきた23年間を振り返ってみても、3月の思い出というのはやはりいつもどこか寂しくて、切ない。

小学生の頃から、終業式の先生の異動の挨拶はたとえ直接関係のない先生であっても毎度ぼろぼろ泣いていた。
好きな先輩が卒業するときには、悲しくて花*花の「さよなら大好きな人」を聴いてずっと泣いてたし、自分が卒業のときは帰り道にレミオロメンの「3月9日」をカルテットバージョンで聴きながら、いろんなことを思い出して泣いた。
一年前に大学を卒業したときも、大好きな友だちと別れるとき新宿駅のど真ん中でみんなしてわんわん泣いた。本当、泣いてばっかりだ。

少しずつあたたかくなってきて、春の匂いとともに世界が色づき始める心躍るような季節なのに、別れを経験しなければ本当の春を迎えることはできない。それを思うから、わたしは春の訪れを心から喜ぶことができない。そんな前哨戦のような3月がきらいだ。

そもそも別れというのは、突然やってくるものと、期限付きですでに決まっているものの2種類あると思っている。

突然やってくる別れに対して、わたしたちは準備するすべがないけれど、3月というのは一年に一度決まってやってきて、「準備はできてますよね?さあ、お別れですよ」という前提で別れを押し付けられる。

それに対して、わたしたちは抗うことができない。だって、はじめから決まっているから。人生において当たり前にやってくるものだから、自分で準備をしておかなくちゃいけない。そんなツンとすました感じも、きらいだ。

今までとなりにいた大好きな友だち、先生、仲間、恋人、家族と離れ、それぞれ新しい道を進むということ。そのこと自体はポジティブなことだ。わかってはいる。別れを通りすぎなければ、次に進むことはできない。わかってる。でもやっぱりつらい。

わたしたちは年を重ねるごとに、別れは永遠ではないことに気づき、それとともに「また会おうね」が実はとても難しいことを知る。
「言ってもすぐ会えるでしょ!」そんなふうに別れたあの人とは、もう1年以上会っていない。卒業後に何度か連絡を取っていたが、仕事柄休みが合わず、「またお互いに落ち着いたら会おうね」と結局断念してしまった。

それまでの関係だと言ってしまえばそれまでだけど、そうやって簡単にはもう会えないかもしれない、ということを知っているからこそ、人との別れがかなり重みを持ってのしかかるのだと思う。

どれだけ悲しくても寂しくても、別れを受け入れて、前向きに進んでいかなければいかない。「まだ見ぬ明日への希望に胸を膨らませて」とか「出会うために別れがある」とか未来のことにばかりフォーカスされて、今この瞬間の感情や思い出がおざなりにされてしまうような空気もやや苦手で、もうちょっとみんなといた時間に思いを馳せさせてよ、と思ったりもする。だからやっぱり、わたしは3月がきらいだ。

まあ、あれこれ言ってもしょうがないのはわかっているのだけど、毎年3月になるとこんな気持ちになっているのでいっそのこと言語化してしまえと思い、つらつらと書いてしまった。正直、自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。あかん。

別れや思い出に固執しすぎなんだろうなあ。ほんとうは、もう少しこの春の出会いと別れを素直に受け入れられたらいいのになあ。未来に向けて素直にわくわくしている人を見ると、うらやましいしなあ。

そんなことを思いながら、今、スキマスイッチの「奏」を聴いている。
最後にすこしだけ訂正。3月に聴く卒業ソングは、切なくって大好きである。

(おしまい)

#エッセイ #日記 #コラム #春 #卒業 #別れ



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