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自律神経と腸


★自律神経と腸の密接な関係

自律神経と腸は、互いにコントロールし合う、切っても切れない関係にあります。


自律神経が腸に与える影響については、皆さんも日常的に実感しているのではないでしょうか。



たとえば、大事な仕事のプレゼンテーションや習い事の発表会の前日など、緊張やプレッシャーでお腹が痛くなったことはありませんか?


また、ストレスフルな日々が続くことで、便秘や下痢をしたり、それらを交互に繰り返したりしたことはないでしょうか。



これらは、ストレスなどにより自律神経のバランスが崩れた結果、腸に悪い影響が現れてしまった典型的な現象です。




★腸は「第2の脳」

「腹が立つ」「太っ腹」「腹をくくる」「腹の虫が治らない」「腹黒い」「腹を割って話す」、、、


私たちは心(脳)と腹(腸)を結びつける言葉を知らず知らず使用しています。

これらは脳と腸の相関性について知識がある訳でもなく、経験に基づいてできた言葉です。



腸には脳に次いで1億以上の神経細胞があり、これは脊髄や末梢神経系よりも多く、脳とは独立して自らの判断で機能しています。


さらに、腸には副交感神経の主役の神経である「迷走神経」という太くて大きな神経が埋め込まれており、この神経の90%が腸から脳へと情報を運んでいることが明らかになっています。


このような「腸」と「脳」のつながりを『脳腸相関』といいます。




★脳腸相関

上記で述べたように、脳と腸は自律神経を介して密に関連していることが知られています。


腸の情報は自律神経を介して大脳へ伝わり、腹痛、腹部不快感と共に、抑うつや不安などの情動変化も引き起こします。



そして、これらの情動変化が自律神経などを介して消化管へ伝達され、さらに消化管の運動異常を悪化させます。



このように脳と腸は密接に関連しており、言い換えれば「腸は心の鏡」であり、同時に「心は腸の鏡」でもある訳です。



近年では腸は「第1の脳」ではないかと考える専門家もいるほどです。






★幸せホルモン「セロトニン」

「幸せホルモン」「幸福物質」と呼ばれるホルモン『セロトニン』はご存知でしょうか?



セロトニンは交感神経、副交感神経の働きを調整し、心のバランスを整える作用のあるホルモンです。


セロトニンは、

・活動時にスッキリとした意識にさせる

・起床時に身体を活動状態にする

・痛みの感覚を抑制する

・姿勢保持筋を活性化させる

などの様々な効果があり、


数値が低くなると、

・寝起きが悪くなる

・些細なことで痛みを感じる

・姿勢が悪くなる

・どんよりとした表情になる

などの症状を引き起こします。



セロトニンの分子構造は精神安定剤とよく似た構造となっており、うつ病の患者様はセロトニンの数値が低いとされています。




★セロトニンの95%は腸で作られる

セロトニンは90%が腸、8%が血小板、残りの2%が脳内に存在しており、95%以上は小腸の粘膜で産生されることがわかっています。



人体中に約10mgが存在しているとされているセロトニンですが、腸内の環境が悪いとセロトニンの産生がうまく行われず、全体の量が低下してしまいます。



情緒的な感覚や幸せを感じることにより、脳内で産生されるイメージのあるセロトニンですが、実は物理的に腸内の環境を整えることでその全体量を増やすことが可能なのです。




★セロトニンを増加させる食事

セロトニンは腸内で腸内細菌によって合成されます。


そのため、腸内環境を整え腸内細菌を元気な状態にしておく必要があります。



腸内細菌を元気にするポイントは2つ。


・食物繊維

・発酵食品


です。




◆食物繊維

食物繊維は善玉菌のエサになるため、動物性たんぱく質で悪玉菌優位になりがちな腸内環境を整えます。


また、腸を刺激して蠕動運動を促してくれるので、便秘の予防や解消にも有効です。



しかし、食物繊維の摂り方にはコツがあり、ただ闇雲に摂取すれば良い訳ではありません。


食物繊維には、

・水に溶ける「水溶性」

・水に溶けない「不溶性」

の2つに分けることができます。



それぞれの特徴や働きが異なるため、その違いをふまえて摂取することが大切です。



水溶性食物繊維は、水を含んでネバネバしたゲル状になり、便に水分を与えて柔らかくする働きを持っています。

さらに小腸では糖質や脂質の過剰な吸収を抑えてくれる、ありがたい存在。


一方、不溶性食物繊維は、水分や腸内細菌、剝がれた腸粘膜を吸収し、便のカサを増す働きがあります。

そして腸内をゆっくりと移動しながら、腸を刺激して蠕動運動を促します。



基本的に食物繊維を含む食べ物には、水溶性と不溶性の両方が含まれていますが、じつはほとんどが不溶性メインなので、何も考えずに食べていると、つい不溶性に偏ってしまいがちです。




◆腸内細菌の活性化には水溶性食物繊維

水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになり、善玉菌など有用な細菌を元気にする働きがあります。


そのため、セロトニンの分泌、自律神経のことを考えると水溶性食物繊維を摂取することが大切となります。


〈水溶性食物繊維を多く含む食材〉

・昆布やわかめなどの海藻類

・きのこ類

・麦類や豆類

・りんごやキウイ、柑橘類などの果物

・大根やにんじん、ごぼうなどの根菜類

・インゲン豆

・アボカド

・納豆

・オクラ

・プルーン


などがおすすめです。



こうした食物繊維の特徴や働きを把握して食材を選び、食物繊維の摂取をマスターしていきましょう。



◆発酵食品

腸内細菌の生態系には、できるだけ多くの細菌が活発であることが理想であり、多様性を保つことが重要です。


発酵食品は、菌を元気にして腸内細菌の多様性を維持するのに欠かせない食材です。


〈発酵食品食材〉

・ヨーグルト

・納豆

・味噌

・甘酒

・漬物


があげられます。


発酵食品を積極的に摂取し、腸内細菌の多様性を目指しましょう。




★水溶性食物繊維と発酵食品の最強料理

水溶性食物繊維と発酵食品の両方を一度に摂取できるおすすめの料理が「みそ汁」です。



発酵食品である味噌は、善玉菌の代表である「乳酸菌」「酵母菌」「麹菌」が豊富に含まれております。


これに、水溶性の食物繊維を含む食材(海藻類、大根、にんじん、ごぼう、きのこ類など)を加えることで、一度に効率よく両方を摂取することが可能です。



この味噌汁を一日一杯飲むことで、腸内環境をより良い状態へ導いてくれます。



是非、食生活に取り入れてみましょう◎



★まとめ

以上が自律神経と腸の関係性と重要性についてでした。


自律神経は、様々な要素が複合的に影響し合い、成り立っています。



何か一つを徹底して行うのではなく、少しずつ様々な習慣を改善していく必要性があります。


小さなことからコツコツと、意識することから始めてみましょう◎



最後までご覧いただきありがとうございました。


〈参考文献〉

・「ストレスと脳腸相関の法則を探る」福土 審 Jpn J Psychosom Med 57:335-342, 2017
・腸から脳の健康を考える ビフィズス菌 A1 株による認知機能改善作用 小林洋大,清水(肖)金忠,久原徹哉
・脳腸相関とストレス 福土 審 2013 年 28 巻 p. 16-19
・ Drossman, DA, The functional gastrointestinal disorders and the Rome III process. Gastroenterology 130, 1377-1390, 2006.
・ Longstreth, GF, Thompson, WG, Chey, WD, et al., Functional bowel disorders. Gastroenterology 130, 1480-1491, 2006.




ラスバル整骨院

院長 栁澤 昂希


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