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【For my brother】弟が生まれた日、僕の人生は大きく変わった

あなたは兄弟がいますか? 兄弟とはどんな関係ですか? 多くの人が子どもの頃の兄弟関係について様々な経験を抱えています。子どもの頃は時に仲良かったり、悪かったりした兄弟関係も、年を重ねるごとに変化することがあります。逆に、子どもの頃から仲が良かった兄弟が、成人してより深い絆を築くこともあります。

私は、これまで数多くの人に家族との関係についてインタビューしてきましたが、今回は特に兄弟関係にスポットを当ててみることにしました。このブログは、先日誕生日を迎えた弟に向けて、お兄さんの立場から弟との関係について話しを聞いてみました。

弟が生まれた日、僕の人生は大きく変わった

ある国に住む兄弟の話。彼らは幼少期から仲が良く、その関係は成人した今も非常に強く、深いつながりに包まれています。なぜ彼らの絆がそこまで深くなったのか、お兄さんに話を聞いてみました。

「5歳の頃、父親と一緒に公園に行った時、父親から新しい兄弟姉妹ができると聞かされたんだ。父親は僕に、弟がいいか妹がいいか聞いたんだ。そのとき僕はなぜか女の子を敵視していたから、弟がいいと答えたよ。その答えがきっかけで、僕の人生は大きく変わることになった」

弟が生まれた日のことを、彼は昨日のことのようにはっきりと覚えていると話してくれました。

「母が家に弟を連れて帰ってきた瞬間、すごくわくわくしたんだ。ついに僕に弟ができる!ってね。僕は、子どもの頃ずっと孤独で、イマジナリーフレンドと遊んでいたんだよ。でも、イマジナリーフレンドは、僕の想像の友達だと気づいた日、突然消えてしまった。僕はとてもがっかりした。そんなときに生まれたのが弟だった。彼はイマジナリーフレンドとは違い、実際に存在していて、僕の前から消えない。

僕は、弟のベッドのそばに座り、彼が目を開く瞬間を待ったんだ。でも、弟は目を開けないから待ちきれなくて、指で弟の目を開かせたんだ。無理やり目をこじ開けられた弟はいやだったと思うよ。急に激しく泣き出した。その瞬間、僕は言葉では表せないほどの幸福感に包まれた。なぜなら、弟が目を開けて最初に目にしたのは、僕だったから」

「もう一人の自分」を育てたい

彼は、弟のことをとても愛しています。それは、彼が5歳のとき、初めて弟と対面したときからずっと続いている気持ちだといいます。いったいなぜ彼はそこまで弟のことを大切に思うようになったのでしょうか?

「僕は弟を見たとき、とてもかわいいと思った。同時に、弟をもう一人の自分として育てたいと思ったんだ。少しでも違ったらだめ。完璧に同じ。5歳のときにそう思ったんだよ。だから、弟にはいろんなことを教えた。ハイハイの仕方、歩き方。ペンやスプーンの持ち方も、全部僕が彼に教えた。友達と水泳に行くときですら弟を一緒に連れて行ったよ。僕が泳ぎ方を教えるから、弟は同じ年齢の子よりもすごく上手に泳げた。弟には僕ができることをすべて教えた。

弟と一緒に成長していけば、より強力なチームになると思ったんだ。未来への投資だった。弟が成長するにつれて、自分とは別の人間だということを受け入れるのに時間がかかった。でも、少しずつ現実を受け入れ、弟自身が一人の人間として育っていく過程を受け入れたんだ」


「お兄ちゃんなんて、小さな列車だ!」

幼い頃から仲がよかったとはいえ、一緒にいれば当然、兄弟でケンカをすることも。いったいどんなことでケンカをしたのでしょうか? また5歳差のある彼ら兄弟はどのような関係だったのでしょうか?

「子どもの頃は、よく弟とケンカをしたよ。僕は、彼よりも5歳上だったから、僕の部屋に入るのも、僕のおもちゃを触るのも、全部僕の許可が必要だと弟に言ったんだ。

ときには言い争いをしたり、取っ組み合いのけんかをしたこともある。僕は彼を床に押し倒して、彼の両手首を抑えて、上から彼に唾を垂らすんだよ。弟はそれがすごく嫌いでね(笑)。
口喧嘩するとき、僕は弟に「クソ、消えろ!」といって、汚い言葉で弟を罵った。でも、弟はそんな言葉を知らないから「リトルトレイン(小さな電車)」というんだよ。どういう意味かわかる?

僕の家の前から列車が見えるんだけど、それらの列車には、長く連結したものと短いものがあったんだ。弟は長い連結列車が好きで、短いのが嫌いだった。僕とケンカしたとき、彼は彼が知っている言葉の中で最大限の侮辱として”お兄ちゃんなんか小さな電車だろ!”と、僕に向かって叫んでいたんだよ。僕の弟、かわいいでしょ?」


「僕の鶏は空を飛べるんだ!」

「弟との思い出で楽しかったことはある?」と彼に聞いてみたら、「たくさんあるよ!」といいながら、楽しかった思い出のいくつかを話してくれました。

「弟が4歳か5歳くらいの時かな。ある日学校から帰ってきたら、弟が家の2階の窓からひよこを投げていたんだ。合計10羽くらいいたかな? 焦って”何してるんだ!”と弟に聞いたら、弟は”ひよこに飛び方を教えたいんだ。僕の鳥は飛べるよ!”というんだよ。弟を止めたかったけど、”僕の鳥は飛べるから!”といって聞かなかったんだよね。

また別の日、学校から帰ってきたら、弟が2階のテラスの階段のところに弟が立っていたんだ。しかも、当時人気だった覆面剣士「怪傑ゾロ」を思わせるコスチュームをしてたんだよ。僕と一緒にいた友達が「お前の弟はクレイジーなやつだな!」といって大笑いしてた。あれは今思い出しても、弟の格好は本当におもしろかったし、かわいかった!」

弟を失うことが人生で最大の恐怖

一見すると、彼らはどこにでもいる仲の良い兄弟のように見えるかもしれません。しかし彼らの絆が強いのは、お互いに頼り合って生きる必要があったからかもしれません。彼に「 あなたにとって弟はどんな存在なの?」と聞いてみました。

「弟は、僕にとってなによりも大切な存在だよ。 もし、彼と別れたら僕はどうなるのかといつも考えている。そして彼を失うことが僕の人生で最大の恐怖なんだ。彼は、僕の過去であり、現在、そして未来なんだ。弟がいない人生なんて考えられない。この先、僕が結婚して家族ができても、妻や子どもたちよりも弟のことを一番に考える。それくらい、僕にとって彼は大切な存在なんだ。

弟は、僕が深く愛着をもったたった一人の人間なんだ。僕は、彼にとても依存している。自分でもわかってる。この先、どこか別の場所に引っ越してもずっと弟とは一緒に行動すると思う。

この街に引っ越してきたとき、どこに一緒にいくにも弟と一緒だったし、今もそうしてる。たくさん友達がいても、いつも弟と2人で隣同士に座る。まわりからみたら”あいつらゲイかよ”といわれることもあるけど、そうじゃない。普通の兄弟だよ。ただ、僕らはこれまでずっと2人で一緒に行動してきたから、それが今も続いているだけだ」

「いい兄」ではなかったかもしれない

先日、誕生日を迎えたばかりの弟に対して、どんな思いを持っているのか彼に聞いてみました。

「僕は、弟にもっと幸せに生きてほしいと思っている。残念ながら、彼は今のところ幸せで楽しい生活を送っているとはいえない。彼はほとんど一日中一人で自分の部屋にいる。
僕ら兄弟は、一緒に住んでいるけど、彼が朝起きてから夜寝るまでに会うのは、兄である僕ひとりだけだ。その原因は僕にあるのかもしれない。これまでのことを考えると、僕は、決して弟にとっていい兄だったとはいえない。だからこそ、僕はこれから弟が幸せになるためなら、なんでもするつもりだ。
たとえば、最近僕が一生懸命働いているのも、お金を貯めてそれを彼に渡して、新しいビジネスを始める手助けをしたいと思っているからなんだ」

今、弟に伝えたい言葉は?

「僕はいつもオープンマインドで、言いたいことは直接弟に伝えている。ただ…。

もしかしたら、僕は兄としての責務を果たせていなかったかもしれない。また、彼のいくつかの挫折には、僕の影響があったのかも。決して彼の幸福を妨げるつもりはなかったけれど、僕の接し方がよくなかった。僕は、自分が思っていたほど大人ではなかったと反省している。過去は変えられないけど、彼には謝罪したい気持ちだよ…。」

「完璧主義」から脱却する30歳の決断

実は、先日、彼自身も誕生日を迎えたばかり。「30歳を迎えた自分に伝えたい言葉は?」と彼に聞いてみました。

「変化の時が来たと自分に言い聞かせたい。時計は刻々と過ぎていく。もう言葉も想像力も必要ない。今は行動を起こす時だ。今まで僕はいつも完璧主義者だった。すべてを完璧にしたいと思っていた...。そして、ほとんどの場合、完璧を達成することは難しい…。だから、落ち着いて今できることを精一杯やり、それで満足すべきだと思う...。

僕が15歳のとき、アメリカの映画に夢中になり、自分は完璧な人間で、理想的な未来があるという「幻想」が生まれ始めた。自分は重要な少年である、と。つまり「自己うぬぼれ」と「ナルシシズム」という幻想。
振り返ってみると、それはあまりにも過ぎたと思う。30歳になった今、15年間努力しても何も成果が得られなかったので、そろそろ諦める時期がきた」


彼は、15歳で幻想が生まれて、今もそれに取りつかれているのではないかと感じているようです。これは、日本人の私たちでも同じ感覚をもつことがあるでしょう。たとえば、「思春期の頃、自分は将来、何者かになれると思っていた。でも、30前後でそうでもなかったことを知り、焦りと絶望を感じる」。性別関係なく、誰もが感じることかもしれません。彼の場合は、いろんな事情があり、人一倍その気持ちが強いのかもしれません。

彼は、これからもずっと弟との関係を大切にしていくでしょう。同時に、これから先は、彼も彼の弟も、お互いに少しずつこれまでとは違った生き方や考え方をするときも出てくるのかなと思います。彼らが、本当の意味で自由になり、心から安心して生活できるようになったとき、それが選択できるようになるのかもしれないと感じます。

For my brother

ここでは、誤訳が生じないように、彼が書いた原文の一部を載せておきます(※インタビューは英語で行いました)

── How do you want your younger brother to live from now on?

He:Mostly, I want him to live a happier life. Unfortunately, he isn't experiencing much joy at the moment. He's alone, spending most of his day in his room.
I am the only person he interacts with when he wakes up in the morning and goes to bed at night.

I think I might be the reason for his current state. Perhaps, I haven't been the best brother so far. However, from now on, I am committed to doing everything I can to enhance his happiness.
For instance, one of the reasons I've been working so diligently lately is to save money and support him in starting a new business.

I'm a straightforward person. I never hold back my words. Everything I've wanted to express to him, I've conveyed directly.

Perhaps I'll apologize if I haven't been sufficient, or maybe I played a role in some of his setbacks. I never meant to hinder him from leading a joyful life, but perhaps my approach towards him wasn't adequate. I wasn't as mature as I believed. While I can't alter the past, I want him to understand that I'm sorry.

I want to remind myself that it's time for a change. The clock is ticking, and it's time for action, no more words or imagination.

Until now, I've always been a perfectionist, striving for everything to be perfect. However, most of the time, achieving perfection is challenging.
I should take it easy and learn to be satisfied with normal things.

Since turning 15, I've been nurturing this 'illusion' that I'm a perfect person with a perfect future, an important individual. I've developed the illusions of 'self-conceit' and 'narcissism' in myself and my character.

In retrospect, I think that was too much.

Now, at the age of 30, after 15 years of effort and achieving nothing, I believe it's time for me to consider giving up.



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