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①くすぐりフェチの僕が彼女の死ぬほど弱い腋をローションで徹底的にくすぐって笑い狂わせた話

「あーっはっはっはっはっはっはっはっ!! むりむりむりいいいぃっひひひひひひひっ!! わきはほんとに死んじゃうからあああぁっははははははははっ!!」

 高校1年生の夏休み。
 窓から部屋に流れ込む蝉の鳴き声が、大音量の笑い声に上書きされる。

 声の主は、 がみ ゆい
 僕の唯一無二の幼馴染であり、誰よりも大切にしている恋人である。
 しかし今は――

「挑発してごめんなさいは?」
「あっははははははははっ!! ごめんなさいごめんなさいっ!! くっひひひひひひひっ!! いやーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 ベッドの上で、あられもなく笑い叫んでいる。
 目尻に涙を浮かべながら、茶髪のサイドテールを激しく振り、斜め上に伸ばされた両腕を必死に動かしている。
 どんなに暴れたところで、そこから逃げることはできるはずないのに。

 そう――なぜなら唯夏は。
 手足に頑丈な枷を取り付けられて、ベッドにうつ伏せかつX字で拘束されているのだから。
 僕に背中に馬乗りされて、抵抗しようにも動けない状態にあるのだから。
 吸血鬼や異能力者ならまだしも、たかが人力程度でこの状況を打破するのは、極めて不可能に近いだろう。

 そして唯夏の恰好は、黒いレースデザインの下着姿。
 当然その構造上――彼女の死ぬほど弱い『腋』が晒されている。
 おまけにそこには、くすぐったさを倍増させるローションが塗られている。

 そんな無防備かつ敏感になった弱点を、同じくローションまみれの僕の指で、素早くコチョコチョとくすぐられ、唯夏はさっきから大音量の笑い声を上げている。
 しかしここは防音性の高いマンションなので、心置きなくくすぐれる。
 思う存分に笑い狂わせられる。

 僕は爆笑する唯夏を見下ろしながら、ぬるぬるになった10本の指で、両腋の窪みを貪るようにわしゃわしゃ掻き回す。

「何で笑いながら謝ってるの? ちゃんと反省してないよね?」
「あっははははははははっ!! してるしてるうううぅっはっはっはっはっはっはっはっ!! ちゃんと反省してるからあああぁっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
「だったら笑わずに謝れるよね? ちゃんと反省してるんだから」
「くっはははははははっ!! こんのおおおぉっはっはっはっはっはっはっ!! ごめんなさっはっはっはっはっはっはっはっ!! ごめんなっぶっははははははははっ!!」
「はーい全然だめ。罰として腋の下くすぐりの刑」
「いやーっはっはっはっはっはっはっはっ!! おねがいだからあああぁっはっはっはっはっはっはっはっ!! もうわきはやめてえええぇっへへへへへへへへっ!!」

 よっぽど腋がくすぐったいのか、唯夏は顔を左右にブンブン振り、手首を乱暴にガシャガシャ動かして、ただひたすらに笑い悶える。
 それを見るたびに、僕の身体は燃えるように熱くなり、胸の鼓動が異常に速くなる。
 しかし気分が高揚しているのは、きっと唯夏にも言えることだろう。
 なぜなら彼女はくすぐられるのが大好きな『ぐら』であり、僕はくすぐるのが大好きな『ぐり』だから。

 それを知ったのは、ちょうど去年の夏――付き合って1年の記念日である。
 あの日の夜、いつも通り2人で楽しく雑談していたところ、どういう訳か、いつの間にかお互いの性癖を明かす流れになっていた。
 そしたら何と――驚くべきことに、僕たちの性癖は同じだったのだ。
 一言で言えば、くすぐりフェチ。
 つまり僕は女性をくすぐることに興奮し、唯夏は男女問わずくすぐられることに興奮する。
 まあお互いくすぐりフェチに目覚めたきっかけが、幼少期のくすぐり合いだったことを考慮すれば、そこまで驚くべきことでもないのかもしれないけれど。

「ひーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!! ごめんなさいいいぃっはっはっはっはっはっはっはっ!! もうゆるしてえええぇっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」 
「そんな簡単に許さないよ? あんな挑発してきてただで済むと思ってるの?」
「あっははははははははっ!! おねがいしますうううぅっはっはっはっはっはっはっはっ!! もう二度としませんからあああぁっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
「だめ。今日は唯夏の腋を徹底的にくすぐるって決めたから」
「いやーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!! ごめんなさいいいぃっはっはっはっはっはっはっはっ!! ごめんなさいごめんなさいいいぃっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 一体どうして唯夏は、こんなにも腋をくすぐられているのか。
 それは遡ること、およそ20分前の話になる――


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