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バベルの塔と歌うたい

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少しずつ書いて載せていきます。物語です。完結しました。
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記事一覧

バベルの塔と歌うたい #1

理解出来ない。紗羅は物心ついてからこの方、父のことも母のことも、家族の誰のことも理解出来…

WE
4年前
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バベルの塔と歌うたい #2

神楽坂の駅を出てすぐ左手にあるその神社は、著名な建築家の設計が話題を呼んだ一大プロジェク…

WE
4年前
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バベルの塔と歌うたい #3

紗羅は言いようのない不安と恐怖に襲われて身動きすら出来ないでいたが、意を決してベッドから…

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4年前
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バベルの塔と歌うたい #4

紗羅は驚きのあまりしばらく声も出なかったが、その一方で不思議と合点がいくところもあり、意…

WE
4年前

バベルの塔と歌うたい #5

紗羅にとってのサバイバルはまず自分と自分の回りの環境を知ることだ。歳は多分12、3歳といっ…

WE
4年前

バベルの塔と歌うたい #6

紗羅はこれまで無理にでも冷静に現状に向き合おうとして来たが、この粘土板によってそんな気持…

WE
4年前

バベルの塔と歌うたい #7

サーラとヨゼの父親は文字の読める人だった。紗羅がヨゼとともに粘土板の文字と格闘を始めた日、父親は家に帰って来た。紗羅はヨゼが誰か文字を読める人のところに自分達を連れて行ってくれることを期待していたが、父親が帰って来ると状況は一変した。浅黒く日に焼けた彫りの深く整った顔つきをした男性が部屋に入ってくると、母親とヨゼは盛んに彼に訴えかけている。父親らしいその男性は落ち着いているように見えたが、話をするうちに驚きの表情を浮かべ顔が険しくなりやがて紗羅に歩み寄って抱きしめ、何かを話し

バベルの塔と歌うたい #8

紗羅がここに来てから2ヶ月が過ぎたある日、とうとう母が沙羅を外に連れ出した。外には沙羅の…

WE
4年前
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バベルの塔と歌うたい #9

バビリ。バビロンか。その瞬間、パズルのピースが全て埋まった。恐らくここは古代の都市バビロ…

WE
4年前

バベルの塔と歌うたい #10

階段は思ったより急で紗羅はヨゼの手をしっかり握って足下を見ながら慎重に登っていく。ヨゼは…

WE
4年前
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バベルの塔と歌うたい #11

旧約聖書のバベルの塔の逸話はあまりにも有名だ。地上の人々が天にも届こうという塔を作り始め…

WE
4年前

バベルの塔と歌うたい #12

その夜もいつものように父親が持ち帰った粘土板を家族4人で囲み僅かな灯りを頼りに文字を学ん…

WE
4年前

バベルの塔と歌うたい #13

翌朝、子供達に仕事に連れて行けとねだられないうちに出かけようと早く起き出した父親は、すで…

WE
4年前
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バベルの塔と歌うたい #14

ジッグラトに着くと今日は父は上に行くそぶりは見せず、足下の作業現場に留まって監督者らしい男達と話し合いをしている。作業行程の確認か設計上の問題の議論かは分からないが、皆盛んに話をしていて会話が行き交っている。紗羅はジッグラトに登りたくてそっとその場を離れようとしたが、たちまち見つかってヨゼとともに叱られてしまった。父親は2人に粘土板と葦ペンを渡しそこにじっとしているように言いつけた。紗羅は仕方なく粘土板に文字を刻んでいった。先程教わった歌という言葉をどう書くか、父にねだって教