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『スター・ウォーズ』に学ぶ企画書の作り方

先日、若手社員から企画書を受け取った。熱意のある若手で、彼がやりたいことが強く主張されていた。

しかし、企画書には彼がやりたいことばかりが書かれていた。このままでは、企画書の読み手に、彼の熱意は伝わっても、彼が主張したいことは伝わらないなと感じた。そのため、彼と企画書について話し合い、修正することになった。

その後、「スター・ウォーズは観たことがあるか?」と聞いてみた。彼は「ない」という回答だった。そのため、『スター・ウォーズ』を観ることを勧めた。特に、エピソード4〜6、つまり旧三部作である。

『スター・ウォーズ』が人々を魅了する理由

『スター・ウォーズ』は、言わずとしれた大ヒット映画シリーズである。

『スター・ウォーズ』が人々を魅了する理由の一つに、優れたキャラクター設定がある。『スター・ウォーズ』には、魅力的なストーリーを作る上で必要となるキャラクターが、わかりやすく設定されている。特にエピソード4〜6は、それがわかりやすい。後年作られたエピソードは、舞台設定が壮大になり、登場人物も増え、魅力的なキャラクター設定を学ぶには、エピソード4〜6がよりふさわしいと感じる。

企画書や提案書では、読み手に新商品だったり企画案だったりをアピールする。それはつまり、新商品や企画案を主人公としたストーリーを伝えることになる。その点で、企画書にどのようなキャラクター(=要素)があれば読み手を魅了する企画書が作れるのか、『スター・ウォーズ』から学べることは多い。

『スター・ウォーズ』旧三部作の各キャラクターとその役割を参考に、「取引先に新商品を提案する企画書」を題材として、魅力的な企画書作りを考えていきたい。

主人公(ルーク・スカイウォーカー)

『スター・ウォーズ』エピソード4〜6の主人公は、ルーク・スカイウォーカーである。エピソード4〜6は、ルークの成長物語ともいえる。

しかし、この主人公ルーク・スカイウォーカーは、他のキャラクターに比べて、極めて個性が乏しいキャラクターである。「ちょっといい青年」でしかない。

主人公が「ちょっといい青年」でしかないという点は重要で、ストーリーの上で、必ずしも主人公が個性的である必要はないのである。一人で敵軍隊を壊滅させる、ランボーのような強い男である必要はないのだ。

主人公以外のキャラクターが強い個性をもっていれば、逆に「ちょっといい青年」でしかない主人公が目立つようになる。

企画書においても、「取引先に新商品を提案する企画書」の主人公、つまり新商品についてアピールばかりしていても、読み手には届かない。「画期的な商品」「革新的機能」「圧倒的低価格」など、美辞麗句をどれだけ並べても、読み手からは「本当か?」という疑惑を向けられるだけである。

企画書で主張したいこと(新商品や新機能、企画案など)は、さりげなく紹介する程度でよいである。これが今回、伝えたい事です、と。

強く伝えるべきは、主人公でなく、他にある。

敵(ダース・ベイダー、皇帝)

『スター・ウォーズ』の敵といえば、ダース・ベイダーもしくは皇帝(パルパティーン)となる。

ルーク・スカイウォーカーを知らない人でも、ダース・ベイダーは知っている、もしくは見たことがあるという人は多いのではないかと思う。主人公より敵が有名、それが『スター・ウォーズ』なのだ。

しかも、ダース・ベイダーは全身黒づくめ、マスクもいかつい。見るからに悪い奴である。実に、わかりやすい。皇帝は年老いているが、やはりいい人にはとても見えず、悪役とわかりやすいのである。

ダース・ベイダーと皇帝というわかりやすい敵によって、『スターウォーズ』を観る観客は、「ちょっといい青年」に過ぎないルークが、どうやってこの強力な敵を倒すのか?という困難なミッションを容易く理解する。そして、ワクワクすることになる。

物語において、敵が強ければ強いほど、盛り上がる。憎ければ憎いほど、感情移入が促進される。強力な敵に対して主人公が普通の人だったり弱点があれば、主人公を応援し、敵を憎く思う。なぜなら、映画を観ている観客の大勢は、主人公と同様、普通の人々であり弱点を持っている人々だからだ。

読み手を惹きつける企画書において、最も重要なのも、この敵となる。企画書における「課題設定」である。

この課題設定を間違えると、どんなに良い商品でも画期的な機能でも、読み手に企画書が受け入れられることはない。逆に、優れた企画案でなくとも、課題設定が的確であれば、少なくとも、読み手の興味を引き検討はされる。

課題設定とはつまり、読み手が困っていることである。売上が上がらない。コスト削減できない。作業をスムーズにしたい…等々。

企画書において最も力を注ぐべきは、この課題設定で、調査や分析など、読み手の課題をより具体的に深堀りし、読み手自身が気が付いていない課題まで設定するのが理想的だ。

同じ社内の企画書、また、他社の企画書を多く目にするが、この課題設定というのが間違っていたり、そもそも課題設定がされていないと、読む気にすらならない。逆に、もともと興味がない事案でも、課題設定が的確だと、その企画書を手に取り読んでみようと感じる。

企画書において最も重要なのは「課題設定」。これは重要なポイントである。

導き手(ヨーダ、オビ=ワン・ケノービ)

主人公が登場し、倒すべき敵が登場した。しかし、それだけでは物語は進まない。物語の進行をスムーズにする導き手が必要となる。『スター・ウォーズ』における導き手、それは、主人公ルークの師匠となるオビ=ワン・ケノービやヨーダである。

物語において、主人公より格上で全てを知っている全能のような存在。それが導き手で、『スター・ウォーズ』に限らずこのような導き手は多くの映画や小説、物語に登場する。

ヨーダもオビ=ワンも、年老いた老人で、衣装は白だったり顔はチャーミングだったりする。敵役のダース・ベイダーや皇帝とは好対照である。やはり、わかりやすく「年老いたいい人」という設定がなされている。

企画書において、聞き手の課題設定がなされ、その課題解決としてアピールしたい新商品がある。しかし、それだけでは、なぜその新商品が課題解決になるのか聞き手には理解ができない。新商品が課題解決を行うというストーリーを、聞き手がすんなりと理解するための導き手が必要となるのである。

企画書における導き手、それは、新商品の長所や新商品によるメリットとなる。画期的な技術なのか低コストなのか、ここぞとばかりに新商品の長所を具体的に論理的にアピールするのである。

協力者(ハン・ソロ、レイア姫など)

主役、敵、導き手がいれば、物語は進行する。しかし、よりその物語を魅了的にするため、もしくは、より主人公を魅力的にするため、協力者が効果的となる。

協力者は主人公と同じ目的をもつ人物で、『スター・ウォーズ』でそれは、ハン・ソロやレイア姫、チューバッカに、C-3POやR2-D2などとなる。

彼らは、主人公ルークとは異なり、ちょい悪でエネルギッシュだったり、ユーモアがあったり、個性豊かな面々が並ぶ。

このような個性的な仲間によって、個性の乏しい主人公ルークが引き立つ仕組みになっている。敵が強力なため、却ってルークが目立つのと同様のカラクリだ。

企画書において、新商品の長所だけを語っても、魅力を伝えるのは限界がある。そんな時、協力者を登場させる。競合分析や競合との比較である。

表形式で、競合と自社新商品の価格や性能などを比較するシンプルなものでもよいし、より詳細に競合商品を分析したものでもよい。

競合との比較があり、その上で新商品の優れている点を伝えられれば、聞き手は「新商品を購入したい」から「新商品を購入しなければいけなくなる」

この新商品は困っていた課題を解決できる。解決できる理由も理解できた。購入したい商品だ。さらに、同じような効能をもつ他商品に比べて遥かに高性能、もしくは低コスとなれば、その新商品を購入する以外選択がない。こうなるのである。

モブキャラ(ストームトルーパー)

『スター・ウォーズ』には、モブキャラとしてストームトルーパーが登場する。モブキャラは、主人公たちに蹴散らされる雑魚キャラであり、表情のない人物たちである。

ストームトルーパーは、ダース・ベイダーの手下の戦闘員で、全員が白い鎧と仮面を身に着けている。特に戦闘シーンにおいて、ストームトルーパーは大量に登場するが、誰一人、表情は見えない。同じ鎧、同じ仮面である。またしても、わかりやすいモブキャラなのだ。

モブキャラが大量に出てくれば、主人公たちが襲われるという危機を演出しやすいし、また、そのモブキャラを蹴散らしていけば、主人公たちはカッコよく見える。

そのため、モブキャラは重要なキャラクターである。

企画書において、これまで説明してきた新商品、その長所やメリット、さらに競合比較が正しい情報であることを裏付けるために、調査や分析に用いたデータを、備考や別添として付け加えるのは効果的だ。

文章や図形など、目立つ形でなく、ただの数字の羅列でかまわない。つまり、表情のないモブキャラ・ページでよいのである。このようなデータがあることで、企画書で語ってきたことが嘘でない確かな情報ということを伝えることができる。

「新商品を取引先に提案する企画書」という企画書であれば大抵、企画書の読み手というのは、その先に決裁者がいる。企画書の読み手が最終責任者でなく、社内で決裁者にプレゼンしなければならないのである。

その時、その企画書内容が正しいというデータ的裏付けがあれば、説得力が違う。読み手もそうだし、最終決裁者もそうである。データがその説得力を作ってくれる。

『スター・ウォーズ』から学ぶ魅力的な企画書

『スター・ウォーズ』は、公開以降、多くの人々を魅了してきた。

『スター・ウォーズ』は、とにかくわかりやすい。だからこそ万人受けしてきた。ストーリーは、シンプルな勧善懲悪物である。上述してきたように、各キャラクターが実にわかりやすく配置されている。

人々を魅了するために必要なこと。それを、実にわかりやすく教えてくれる『スター・ウォーズ』は、教科書的存在ともいえる。その教科書は、企画書というストーリーを作る上でも、多くのことを教えてくれるのである。

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