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[論文メモ] 渡り鳥の地図感覚


Thorup et al.
Evidence for a navigational map stretching across the continental U.S. in a migratory songbird
vol. 104,􏰁 no. 46, 􏰁18115–18119 (2007) 
https://www.pnas.org/content/104/46/18115

マイルストーン的な論文のひとつだと思う。

問い

渡り鳥は風などの影響で渡りルートから外れても飛行方位を修正して目的地にたどり着けるのか
= 地図感覚を持っているか

対象種

white-crowned sparrow (Zonotrichia leucophrys gambelii)
ミヤマシトド

繁殖を終えるとアラスカからアメリカ南西へ南下する(渡り)


検証方法

渡り中の成鳥と幼鳥を捕獲、各15羽に無線発信器を取り付け

→   通常の渡りルートである西海岸側から東海岸側(通常の渡りでは通らないエリア)へ 3700 km 運んで放鳥

→   飛行機で追跡受信して放鳥後の移動経路を記録(最長122 kmまで)

主な結果

放鳥後、
・幼鳥は南へ
・成鳥は西南西へ

つまり、成鳥は渡りルートから外れていることを知覚して目的地へ定位し直した。一方、初めて渡りをする幼鳥は元々の移動方位のままだった。

→   成鳥は経験ベースの「地図」を行動圏外まで拡張していることが示された。


この論文の意義

鳴禽類の渡りメカニズムに関する知見のほとんどは、室内ケージでの実験で得られたものである。この研究は、野外実験ベースの研究も可能&重要であることを示した。

気になったこと

・今は発信器やロガーの小型化が進んでいるので野外データもかなり増えてるんだろうか。

・放たれた鳥たちはその後どこに行き着いたのだろう...。


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