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映画語り『生きる-LIVING-』


原作: #黒澤明
脚本: #カズオイシグロ
監督: #オリヴァーハーマナス

内容にネタバレあり(ご了承ください)


映画語り⇒映画を通し私に見えた世界を語る
『生きる』から私が見た世界であり、
私の解釈を記録しています。

語り音声ver.はYouTubeにて
後日公開いたします!


それでは、本編をお楽しみください♪


不朽の名作がイギリスを舞台に
いま、よみがえる

今のカタチに変わることで、今の人が見るきっかけになる
不朽の名作にこそ、今の命を吹き込むことが
"生きる"そのものなのかもしれない…


イギリスで役所に勤める紳士、
ウィリアムズは余命半年の宣告を受ける。

それまでは真面目に、
でも目立たず、波風立てずに生きてきた。

そう生きようと意識していたわけではなく、
自然とそう生きていたのだ。
だんだんと、本人の気付かぬうちに
流れるように時が過ぎていた。

子供の頃、
電車に揺られる紳士たちに憧れを抱き、
大それた夢ではないが、自分も紳士として生きたいと思った。

目立たなくてもいい、それぞれの仕事に淡々と向かう紳士になりたいと憧れた。


幼き頃の憧れであった身なりをして、役所に勤め、課長まで昇進していたウィリアムズであったが、
当人の顔に覇気はなく、仕事をこなしながら、
映画の日に見る映画だけを心待ちに日々を通り過ごしていた。


そんなウィリアムズの生き様は、
まさにゾンビというあだ名がピッタリだった。



余命宣告を受け、
いざ自分の命が終わりを迎えると知った時、
このまま生きている実感のないままで
死にたくないと、生き甲斐を求めて、旅に出る。

旅先で出会った自由に生きる若者に
羽目の外し方を教えてもらうが、
いっときの楽しさと引き換えに虚しさが残った。

死ぬまでの残りわずかの時間を
どう生きるべきか答えが出ぬまま、
また唯一の身寄り、息子夫婦にも余命を告げられぬまま、
誰にも心の内を打ち明けられず、誰とも心を通わせることが出来ず、
どんどん塞ぎ込み迷う心。


そんな状態で仕事を無断欠勤し続け、
当てもなく街を歩いていると、同僚の明るい女性と遭遇する。

彼女はお役所仕事が合わず、転職活動中であった。
合わないながらも目の前の仕事を楽しむ見方を見つけていく彼女の姿、
また自分で自由に選択し、生きたいように生きているように見える姿は輝かしく見えていた。

もう職場からいなくなるということもあるだろう、
しかしそれ以上に彼女の素直な生き様に羨ましく憧れていたからこそ、
気づくと余命の話を打ち明けていた。ずっと誰かに聞いて欲しかった話を。

彼女は涙を流してくれた。
その涙を見た瞬間、ストンと覚悟が決まり、目に光が宿る。

残りの時間を生きる覚悟が、今の自分に出来る生き方、
そしてこれまで本当は望んでいた生き方を生きる覚悟が決まった。

仕事に復帰するや否や、
これまでみんなが面倒くさがって後回しにしていた仕事を全力で突き動かし始めた。

これまで皆が棚上げにしていたということは一筋縄では行かないということ。
どんな理不尽を受けようとも怒っている暇はないと、自らの選択に責任を持ち、一切妥協せず、そして真心を込め感謝をしっかりと伝えていった。

そんなウィリアムズの変化を部下たちは気づいていた。


ウィリアムズは最後に自分の生きたいように生きられた。
幸せだった。
自分の人生に自分の心が満足できた。

そして命を終えた。


部下たちは、ウィリアムズの最後の生き様に感銘を受けた。
意志を受け継いでいこうと誓い合う。


しかし、いつしかまた、
部下たちは社会に飲み込まれてゆく。


それでもいい。
きっと部下たちもまた気づく時が来る。
自分の人生の終わりが近づいた時、思い出すだろう、
自分の生を全うしたかっこいい背中を見せてくれた先人がいたことを。
そして、その先人の幸せそうな姿を。



人間はつい忘れてしまう、人生には終わりがあることを。

”命には死が必ず訪れる、そしてそれがいつかは分からない“
頭では分かっていても、いつの間にか忘れてしまう。
いや、忘れたことにするのだ、考えない方が楽だから。

人間の脳には当たり前のことを忘れるシステムがある。
大事なものが目に見えないのも、大事なことが当たり前になって、見えなくなってしまうからだ。
見えないことは考えなくていい、だから人は忘れてしまう。

本当の意味で、生きたいように生きることは
何かを得ようと探したところで見つからない。
なぜなら、大事なことを忘れてしまうくらい当たり前に生きてきた人なら、
すでにこれまで生きてきた人生の中に答えを見つけているものだから。


人を幸せにするのは、過去や未来に獲得しうるものではない。
人を幸せにするのは、今を生き、与え合い繋がり合うことにある。

そして、
本当に幸せを感じて生きていると、
自ずと周りに伝播し、幸せを感じながら生を全し続けられる。

もし、自分の周りが淀んで見えたら、冴えない風景に見えたなら、
あなた自身が生きることを忘れているのかもしれない。

でも大丈夫。
命ある限り、今この瞬間から生きられるのだ。
だって命があるのだから。



最後までお読みくださいまして
誠にありがとうございます。

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