つい先日、来年の通常国会で道路交通法の改正案が提出されるニュースを見た．内容は自転車の運転手に対する青切符の配布だそう．背景には交通事故の自転車事故の割合が年々高くなっていることが挙げられるそうで、その予防措置と言うのも踏まえての改正案だろう．

確かに最近自転車運転手の横暴な運転が目立つなとは感じていた．少し前、私が青信号の横断歩道を渡ろうとしたところ横からスポーツ系の自転車が猛スピードで走ってきて危うく事故を起こす寸前だった．

まあ当の本人は何も感じることなく走って行ったが、歩行者の私としては猛スピードで迫ってくる物体に恐怖を覚えたのを覚えている．

その時感じたのが「日本人もエラくなりすぎた」ということだ．分かりやすく言うと「日本人は自分のことしか考えなくなってしまった」ということになる．

よく「日本人は空気を読んだり他人の気持ちを考えるのが上手だ」と聞くことがある．しかし今の話を聞いて「それでも日本人は空気が読める」と感じた人はいないだろう．要は個人主義にどんどん染まりつつあり、アメリカのような個人主義国家に近づきつつあるのだ．

自分さえ良ければいいということを突き詰めた結果である．戦後の日本は焼け野原から高度経済成長を起こし、文明の発展を急いだ．そして一緒に成果主義も育まれてしまった．

自分の給与を上げるために他人を蹴落としてでも上に登る．近年ではワークシェアリングという新しい構造が生まれつつあるようだが、当の本人たちからすれば最悪だろう．「何故あいつより働いてる俺の給与が減ってあいつと同じになるんだよ」という感じに．

これは江戸時代以前にも同じように成果主義の文化は存在していた．江戸時代以前と聞くと多くの人がヒエラルキーを考えるかもしれない．しかし本当はかなり自由な社会だったことは間違いない．

簡単な例で言えば豊臣秀吉なんかも同じである．尾張国の愛知郡中村郷中中村で足軽の息子として生まれた秀吉は結局天下統一し、最後には朝鮮半島にまで手を広げようとした人物である．

他にも江戸時代に儒学者として江戸幕府とともに進めた聖徳の地の中心人物である新井白石も上野国の新田郡新井村と呼ばれる群馬県の農村部の没落した藩の息子だった．

完全な身分社会として学校で教わった人も多いかもしれないが実際はそんなことはない．江戸幕府は優秀な人材を見つけてきては改革を進めていた．

「では今の社会と変わらないではないか」と言う者が現れるだろう．全くの勘違いだ．

江戸時代の活躍した人にとって必要だったのは関係であり、今の成果主義とは少し違っている．

自分の師に認められるようになり、徐々に名声を上げるようになる．同じ道を志す者と活動し協力する．とにかく一人で何でもできるような時代ではなかったのは確かである．

逆に一人で黙々と活動しても他人から見ればただの変人で、医学や生物学でよほどの論文を残し発見されない限り歴史に埋もれ存在しないだろう．

しかし今の現代社会ではそれが許されてしまう．会社に就職し一人で成果を残していき同僚から嫌われても成果主義の場所では順調に役職を上げていくことができてしまう．一人で行い一定の成果を出しX(元Twitter)にあげれば一定の名誉も何かしらの契約を手に入れることができるかもしれない．

要は一人一人が自分勝手な社会になったのだ．何をするのにも自由だし自分の行動に文句を言われる筋合いはない．そう言うことだろう．

成果主義の社会だけではない．家族というのも個人主義になり関係は以前よりも薄れてしまった．親が高齢になり介護が必要となれば息子が親の面倒を見る．それは当たり前のはずだった．しかし近年では親も子供も「自分のことは自分でどうにかしてくれ」の風潮が強い．誰からの手も借りないことが美徳化され、関係が薄くなっている．

要は一匹狼ならぬ一人の王様になってしまったわけだ．そんな社会では他人のことなんてどうでもいい．自分さえ良ければ他は全て無視だ．になってしまう．

だから社会はルールを決めて枠組みに入れ、何とか制御してきたわけだが、今ではその制御の範囲は拡大しないと治安が守られないフェーズにまで入ってしまった．

自転車に乗って音楽を聞く、スマホを触りながら運転する、赤信号でも横断歩道に突っ込む．それに対して何にも思っていない．当たってきたお前が悪いだろう．とまで思っている輩がいる．

それだけエラくなってしまったのだ．

この風潮をなくすためには国が法律を制定しても何ら変わらないだろう．当の本人たちは何一つ悪いと思っていないわけだから．ではどうすればいいのか．

それは田舎に帰るしかない．

田舎に帰ればその土地の周辺は顔見知りの住人で溢れている．（私も田舎ではないがマンションに住んでいたときは同級生が多くいたので自然とお母様方や知り合いと顔見知りの関係を築いていた．）

すると顔見知りの前で下手な行動はできないわけだ．もし自転車に乗りながら音楽を聞いて他人とぶつかってしまったなんて事をすれば一瞬で情報は拡散され、その社会からは追放を喰らう．　　

要は自然と行動を改めるようになるわけだ．自分と他人と分けてしまう社会が作られてしまった今に自分は他の人のために行動するなんてことは非効率だ．という主張が通ってしまっている．

日本人はエラくない．これに限る．