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「和田誠 映画の仕事」を観てきた

またしてもギリギリで観てきました。
国立映画アーカイブで開催の「和田誠 映画の仕事」。

会期が終わってしまったと勘違いしてたんですが、Xの投稿で「まだやってる!」とわかって急遽時間を作って京橋へ。在籍している放送大学はキャンパスメンバーズのメンバー校なので、窓口に学生証を出して無料でした(ありがたい!)。

和田誠は言わずと知れたグラフィックデザイナー、イラストレーター。映画ファンで映画監督。タバコのハイライトのパッケージデザインでも有名です(私はこれが一番印象強い)。

この展覧会では和田誠の映画の仕事をピックアップして紹介しています。

和田誠というとイラストの印象が強いかもしれないですが、ポスターデザインが素晴らしかったです。特に日活名画座のポスターは色づかいと構図が大胆で圧巻。

この仕事、無償で受けてたというのもびっくりなんですけど、公式サイトで確認したら9年間も! ライトパブリシティに在籍中なので、収入はあっただろうけど、9年もいいのか…と余計な心配をしてしまう。

ただ始めたのは1956年から、つまり23歳の時みたいなので、確かにこういう「作品」として成立しそうなまとまった仕事(しかも好きな分野の)で(推測だけど)ある程度好きにさせてもらえるなら(食うに困らなければ)私でもやっただろうなあ(喜んで)…とも思うんですよね。実際これがきっかけで仕事が広がっている。(いいように使われてしまう場合もあるので、気をつけないといけないところだと思いますが。特に今は)

展示では懐かしい色指定入りの原稿もありました。線画だけ描かれていて、そこに4色(CMYK)の色指定が書き込まれています。

一応補足しておくと、一般に色指定をしていたのはイラストではなくて、全体のデザインのほう。例えば帯はこの色とか、文字はこの色でとか、モノクロの原稿(版下)にトレペをかけて、全部書き入れていたのです。
つまり当時のデザインの入稿前の仕上げは脳内塗り絵。クライアントもたいていは色校までモノクロ状態で判断します。力の入った予算のある仕事ではカラーカンプ(ラフの立派なやつ)をつくる感じ。
イラストは彩色されたものを別原稿として入稿することが多く、版下にはモノクロコピーを貼り付けていました。線の中に色がつくタイプのイラストだと色指定にする場合もたまにあり、一度某有名イラストレーターに線画をポンと渡され、「色は任せるから」と言われた時はちょっとビビりました(笑)。ご本人自身デザイナーでもあるので、デザインに合わせて決めていいよ、ということだったらしいですが……。
ちなみにDTPが普及する前はCMYKの順番はけっこう適当で、人によって割とバラバラ。私はいつもYを最初に書いてました。わかりやすいのでCMYKとしたけれど、黒をKとしている人は少なくてBKとかBとか(BLACKね)書いていたと思う。和田氏の原稿ではBになっていました。

展示は他に監督を務めた映画の絵コンテや台本、収集していた海外の映画のポスター(これも楽しい)やディレクターズチェア。それからアメリカの映画会社のロゴ写真。説明によると「上映中の映画を撮影したと考えられる」とは、なかなかマニアック、というか傍若無人!と思うけど、確かにあの頃の映画ロゴはなんともいえない期待感を抱かせるものでしたよね。気持ちわかる!

全体を通して感じたのは、昔のポスターはボディコピーなど太ゴシックがメインで書体もあまり多くない。でもなんだか力強いんですよね。今の私たちはフォントに頼りすぎてないか、とちょっと思った次第でした。

「映画」と区切っているのにそれでも彼の多才さが押し寄せてくる、圧倒的で楽しい展示でした。

開催は本日まで(ごめん!)


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