ほんとうにかわいいよ

#君の言葉に救われた

#初恋

わたしは三姉妹の長女として生まれた。

年が近い次女は、ほんとうに顔が可愛くて、周りにもかわいいかわいいいわれて育った。それにひきかえ、わたしはブサイクで、顔をずっとコンプレックスに思っていた。

かわいい妹は、可愛がられたこともあり素直で明るい「みんなの人気者」だったのに対し、私はスクールカースト最下位の「地味な学年一位」だった。テスト前だけカーストがちょっとランクアップする、なんか訳の分からない立ち位置だった。私は、親に他の子供がしていたことほとんどを禁止され、勉強していたので友達もほんとうに少なく、コミュニケーション力や社会力と呼ぶべきものは、いまだにみんなより数年遅れてついてくる。私は中学校後半になって、やっと小学校4年生並みの力がつき、友達ができ始めた。

わたしはクリスチャン家庭に生まれているので小さい頃から教会に通っていて、そこで好きな男の子ができた。中学2年生の頃だ。私とは逆で、成績は悪いけど、1歳しか変わらないのが信じられないほど中身がほんとうに大人だった。ほんとうに優しくて、親が養子にとっていた、全く血の繋がっていない年の離れた弟を可愛がっていた。自分が子供だったから、彼がほんとうに憧れで、それがいつしか恋になっていた。

そんな彼と、親に隠れてお出かけしたり、教会の中高生キャンプにいったりして仲良くなった。まだ付き合っていなかったが、限りなく付き合っているに近いような生活を半年以上続けた。その、微妙な期間、でも1番楽しい期間に、彼が言ってくれた言葉が、「あんみは、ほんとうにかわいいよ」という言葉だった。

わたしは、それまでかわいいと言われたことがなかったと思う(幼稚園の頃以外)。だから、ほんとうに嬉しくて、そのメールを保護までして、とっても大事にした。しんどいことがあったらメールをみるほどだった。それほど、わたしにとって彼の言葉は大きかった。

いまでもそうなのだが、周りに天才ともてはやされても、自分が頭がいいという意識はほんとうになかった。実力は全くないのに、偶然の積み重ねで高校、大学と特待生だったり、全額奨学金でアメリカに行けちゃったり。周りはそういうところだけ見てわたしの「天才像」を作り上げる。その上、この子は異次元だ、なんて少し距離を置かれる。ほんとうに嫌だった。

でもほんとは、わたしもただの女の子だ。好きな人には可愛いって言われたかったし、自己肯定感のないわたしに、ポジティブになれる言葉をくれる人が欲しかった。奨学金がかかっている定期試験前には、何も喋らなくていいからぎゅーってしてくれる人が欲しかった。

ただ、「強く、自立した、頭のいいリケジョ」という虚像が見えている周りの人にそんなことはあんまりいえない。

だから、学校ではない場所で出会った彼に大事にされ、かわいいよと言われたことは、私にはとても大きかったし、ひとつの自信になった。頭が良い、ということ抜きでも、ちゃんと私をみていてくれてる人はいるんだな、と初めてわかった。彼の前では、何も気にすることなく「ただの女の子」でいれた。そして、彼もただの女の子としての私が欲しかったものをくれた。

わたしは、彼の存在によって、自分を認めることができたし、人間として、女の子として生きる経験もできた。完全に彼に救われていた。

最終的には、前述した通り親が厳しかったので、彼と会っていることがバレてから、親の車で通学させられたり、もともと少なかった自由が全て奪われて、全く会えなくなった。そんな日々の先には別れが待っていたけど、彼とのお付き合いはわたしの中ではいまでもかけがえのない大切な思い出だ。




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