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スローターハウス5 byカート・ヴォネガット

第2次大戦中のドイツ、ドレスデン空爆については全く知りませんでした。
読書会でヴォネガットのこの本を読みましたので、感想をなるべく暗くならずに書きたいと思います。

ストーリーは3つの流れがあります。
●第二次世界大戦中のヨーロッパ。ドイツ系アメリカ人主人公ピルグリムは
捕虜としてドレスデン空爆を経験します。
●1960年後半もう戦後言えない時期に主人公はアメリカで成功した生活をしている様子
●トラルファマドール星人からみた人類の見方

あっちに飛びこっちに飛び複雑な進行です。本当はあまりにも残酷で読みたくない戦争の部分が私には一番理解しやすい部分でした。
でもドレスデン空爆については全く知りませんでした。
そして、ヨーロッパ系アメリカ人のミルフィーユのように重なる源流、祖国という概念です。
ドイツから来た移民の子孫(四代目)であり、対ドイツの戦いのためヨーロッパに来て、捕虜になった。そして捕虜として過ごしているドレスデンで英米(祖国)の空爆を受ける。
So, it’s goes.
そんなものだ。人生は、社会は、人間は、戦争は、命は…

繰り返される
So, it’s goes.
このフレーズは諦め、怒り、悟り、突き放した印象を受けました。

人類より高度な次元に存在するトラルファマドール星人からみると、30年くらいはあっという間です。そもそも時間の概念が違うのですから
このパーツが滑稽な感じがして、ヴォガネットは戦争の残酷さを描きながら、このストーリーをエンタメにつくりあげているのです。
でも私には戦争場面がショックでエンタメ感がなかったです。

自分では選ばない小説を読んでネットでドレスデン爆撃とかつて美しかったドレスデンの街並み、復興した街の写真を探しました。ネットでの歴史散歩ですが、あまり楽しくない。

ピルグリムはアメリカ大陸に渡った始祖の象徴としての呼び名です。最初のページにある子供十字軍を思わせます。
何かを求めて戦いつつ、無駄に終わる命を指し示すのかもしれません。

歴史もSFも好きな方にお勧めしますが、面白いというよりもモヤモヤする読後感を好む方にお勧めです。

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