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企業分析への入り口とバフェットコード

2019年の目標の記事でも書いたが、1年ほど前からプライベートでバフェットコードというサービスを開発している。バフェットコードは企業分析を簡単に行うための個人投資家向けのツールだ。

私は株の売買や投資の経験もほとんどない上に企業分析に対する知識も全く無い。ファイナンスや企業価値の評価に関して専門的な知識を持ったメンバーがいるので機能的な要件は主に彼が決めている。私はそれを技術的に実装可能な状態に落とし込んでいく係だ。彼は企業分析におけるペインを熟知しているのでそれを解決するような機能がバフェットコードには盛り込まれていっている。

このように私は企業分析や投資に関してずぶの素人だが、それでも開発を続けていく中で、様々な指標、数値を文字通り見てきた。バフェットコードは企業分析を行う上で必要なフローがわかりやすいようにできているので(スクリーニング、企業比較など)私のような素人でもどのようなものを見て分析するものなのかが何となくわかってくる。中長期的な視点から株式投資を行うのであれば、もちろん各数値の意味、それがその値である理由を説明できる必要があるが、今回はバフェットコードで何ができるのかどのような情報が提供されているかをサービスを触りつつ概観してみたい。

目次
  - 企業検索
  - 条件検索
  - 企業比較
  - CSVダウンロード
  - 企業分析の入り口
  - Web API

企業検索

トップページにはGoogleのように検索窓がある。

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何か気になる企業の名前を入力してみよう。あるいは日本企業の銘柄の場合には銘柄コードと呼ばれる番号がつけられていて、これは4桁の番号で表されている。すでに株を売り買いしたことにある方にはおなじみのものかもしれない。興味ある企業の銘柄コードはお持ちのネット証券口座のサービスか、Yahooファイナンスでも調べることができる。銘柄コードを入力すると企業が一意に決まるのでわかっている場合はそちらでもよい。

企業名での検索にはある程度の表記ゆれを吸収するためのユーザの助けを借りて作られた辞書を使っている。ありがとうございます。

この辞書を使って例えば総合警備保障 (2331)は ALSOKとクエリをかけても引けるようになっている。

それではALSOKの企業ページをみてみよう。

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上の方には時価総額やROEなど財務諸表の数値から計算した、企業のファイナンスデータの数値が表示される。真ん中あたりはこれらの値の時系列上の推移をみることができる。ページ下部には有価証券報告書に記載されている企業情報のまとめと類似企業がでている。

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個人的に面白いと思うのは類似企業の欄だ。同じようなサービスを提供していても企業の規模や売上高は全然違うのだといういうことがわかる。この点に関してはあとで説明する機能を使うと更に詳細をみることができる。例えば上記の図だと、ALSOK (2331)、東洋テック(9686)、セントラル警備保障(9740)すべて警備関連の会社だが圧倒的にALSOKが売上、人員という意味で大きいということがわかる。

ちなみに英語表記でのページがみたい場合は /enというのをルートパスの下につけてもらえると各数値の名称が英語になったページが表示される。さすがに企業名や有報のテキストそのものは翻訳できないので日本語のままだけれど。

https://www.buffett-code.com/en/company/2331

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条件検索

自分で設定した数値に従って企業のスクリーニングができる機能だ。例えば下記の条件で検索をすると976件の企業がヒットすることがわかる。

- 売上高が10億円以上
- 売上高が前々期から前期にかけて10%以上成長している

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本当に数多くの指標がサポートされているのでここいろんな数値でスクリーニングをかけて遊んでみると面白い。

ただあまりに多くのコンビネーションがあるのでどこから触ったらいいかわからないというケースも多いと思う。私もどのようにスクリーニングしていいか、どの指標がよく使われる数値かがわからなかった。そういった場合にはいくつかの条件のプリセットが用意されている。

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例えばこのサービスの由来にもなっている「バフェット銘柄」と呼ばれるものを押すと以下のような条件でスクリーニングしてくれる。

- 売上総利益が40%以上
- 営業利益率が20%以上
- ROEが12%以上
- PERが40倍以下

これはアメリカの投資家で世界最大の持株会社バークシャー・ハサウェイを運営しているウォーレン・バフェットという人物にちなんだプリセットだ。彼のよく知られた運用ポリシーに「バリュー投資」というものがある。これは業績良好だが、株価がそれに比べて割安に抑えられている場合にその株を買うというものだ。業績がよく割安であればそのうち株価が実績を反映して上がってくることが期待される。先程のバフェット銘柄のスクリーニング条件のはじめの3つが業績、経営が健全であることを示し、PERの低さが割安さを示している。PERは株価収益率のことで、PBRと共に株価の割安さを示す値として用いられる。財務数値について詳細を述べることはここではしないがバフェットコードの数値がどのような計算をしているかは「財務数値について」というページを参照いただきたい。

このプリセットを使うと何となくバリュー投資に向いてそうな株の候補をリストアップすることができるかもしれない。このプリセットの値をいじりながらどんな企業がランクインしてくるか、どれだけの企業がふるい落とされるかなどを遊んでみると面白い。自分だけの独自のスクリーニング条件を作ってみるのもよいかもしれない。

企業比較

企業比較機能は任意の企業の指標同士を比較できるようにした機能だ。これを使って同じような業種、同じような規模など好きなように企業同士を比較することができる。例えば携帯電話大手3社(KDDI 、NTTドコモ、ソフトバンクグループ)であれば以下のようになる。(ソフトバンクに関しては本当はSBGではなくソフトバンク株式会社の方を比較するべきかもしれない)

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上記にあるようにデフォルトで

- 売上高
- 営業利益
- 当期純利益
- 営業利益率
- 純利益率
- ROE
- 時価総額
- PER(株価収益率)
- PBR(株価純資産倍率)
- EV/EBITDA(企業価値 ÷ EBITDA)
- 配当利回り
- 自己資本比率

 の比較が行われるが、表示科目は「表示科目を変更」というボタンを押して自由に変更ができる。基本的にはスクリーニングで使用したものとほぼほぼ同じもので比較ができる。比較対象の中で一番大きなものが緑、小さいものが赤く染められる。先程のスクリーニングで何か興味のある企業がでてきたらそれと同じような企業をここで比較すると面白い。なぜ同じような規模の企業AとBで同じようなサービスを提供しているのにある数値に大きな差が生まれるのか、考えてみると新たな発見があるかもしれない。

CSVダウンロード

いくつかの指標についてはCSVの形式でダウンロードすることができる。株価ダウンロードページでは銘柄と期間を指定して日毎の終値をダウンロードすることができる。

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また目立たないのであまり知られていないかもしれないが、各企業の年間毎の業績、指標をダウンロードすることもできる。企業ページから業績タブを押してもらえると出てくる。

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もし独自のエクセルシートなどを持っていればこれらのデータを用いてさらに高度な独自の分析をできる。

Web API

バフェットコードは有料機能としてWeb APIを公開しており、下記のようなデータを取得することができる。

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詳細はこちらのドキュメントを参照のこと

またAPIを利用しやすくするためOmahaというライブラリを作った。これを使うと簡単にAPIのレスポンスと株価とjoinしたり、PandasのDataFrameにすることが可能となる。


企業分析の入り口

駆け足でバフェットコードの機能紹介を行ったがこれからも機能は追加されいく予定だ。そのために先日Campfire上でクラウドファンディングの募集を行った。もうすでに目標額を達成してしまったのだけれど、もし興味があれば見てもらえるとうれしい。

これからも企業分析を容易にする機能をバフェットコードに追加していく予定だが、私は企業分析という行為がひとつのツールやサービスで完了することはないと思っている。ひとつの企業が成長していくか、投資家に利益をもたらすかどうかを知ることはとても奥深くチャレンジングな作業だ。

スクリーニングして「PERが低い、買いだ!」とか「売上が3年連続で上がっているから成長性がある!」と短絡的に投資は行うものではないと思う。バフェットコードで良さそうな企業を見つけてもそこで立ち止まらないで欲しい。世の中には驚くほどそれに関する多くのニュースや分析、見解がある。ある財務数値が良かった、悪かった理由についてぜひニュースや書籍、分析記事を読んで追求してみてほしい。それらひとつひとつが答えなのではなく、それを踏まえてあなたが考えた結果があなたにとっての答えになるはずだ。そのプロセスは簡単ではなく、とても時間と手間のかかるもので、ときにはどこから手をつけていいかわからないこともあるはずだ。

そんなときバフェットコードがあなたの企業分析の入り口になるとしたら開発者としてこれほどうれしいことはない。

Reference

- バフェットコード
- バフェットコード: 条件検索
- バフェットコード: 企業比較
- バフェットコード: 株価ダウンロード

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