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vacilando

旅行の準備をしているとき、人間は2つのタイプに分かれると思う。事前に行動計画を綿密に立てるタイプと、行先しか決めず行き当たりばったりで行動するタイプだ。

人生はよく旅に例えられる。自分のなりたいものとか、数年後にこうなっていたいとか、目標を決めてそこに向かって歩いていく。時々走ってみたり立ち止まってみたりする。人に助けられることもあるが、全く同じ道を歩く人はいない。昨今では《人生100年時代》ともいわれている。孤独で長い旅路だ。

”vacilando”とは、スペイン語で「どこへ行くかよりもどんな経験をするかに重きをおいて旅をする」という意味だ。さきほど挙げた2つのタイプだと後者にあたる。いや、行先すら曖昧なので後者以上に無鉄砲だ。

私には夢は特にない。小さい頃なりたかったものはあったが、常に一貫していたわけではなかった。ずっと持ち続けてきた夢や憧れがこれといってない。このことで大学時代、特に就活生時代に苦しんだ。今でも悩みの種である。自分が進んでいく道の指標となるものがないのだ。

そんな私の心を軽くしたのが、この“vacilando”ということばだ。
計画が練られすぎた旅は、窮屈でかえってつまらない。何か起こったときに計画が総崩れになることだってある。あえて行先すら決めないのもアリなのではないか。とりあえず自分の心の赴くままに歩きだしてみて、突然思いがけないことが起こって、想像もしなかった方へ向かっていく。人生そのくらいの方が楽しいのではないか。

どこへ行くか、よりも、どんな経験をするか。
心の向くまま気の向くまま、歩いたり走ったり転んだりしながら、一度きりの人生を楽しんでいきたい。


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