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あの日見たものを超える景色を、私はこの先知ることがあるだろうか

フィンランドはオウルへの短期留学も終わりに差し掛かり、プログラム最終日のプレゼンも修了式も終わり、あとは帰国するのみといった頃だったろうか。同じプログラムで仲良くなった後輩が「すごく景色の綺麗なところがあるんです」とある場所へ連れて行ってくれたのは。

私はオウルという街がとても気に入っている。都会的なヘルシンキも、サンタクロース村のあるロヴァニエミも、どの街もそれぞれの特徴があって大好きだが、特にこのオウルが大好きだ。

それほど大きな街ではない。かといって田舎すぎるわけでもない。程よく都会で、程よく自然があって、刺激が多すぎず退屈すぎず。少し歩けば緑に溢れる公園があり、白樺に囲まれた湖があり、外国語書籍も充実した図書館があり、現代アートの美術館がある。私の好きなものがすべて詰まったまさに理想郷だ。

その理想郷を、さらに理想郷たらしめたのが、後輩に連れられてきたピキサーリという場所だった。

市街地から少し離れ、橋を渡った先にある小さな島。民家もあるが、ほとんどが自然の森。まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようだった。歩きにくくない程度に舗装された道を行くと、ちょうど湖を挟んで市街地を見渡せる場所があった。そこで撮ったのが以下の写真である。

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夕暮れ時の、風のない時間だった。波のほどんどない澄んだ湖は鏡のようだった。ウユニ塩湖にも負けず劣らずだと思った。あまりの美しさに、後輩とふたりでしばらく黙りこくってしまった。景色が綺麗だと連れて来てくれた後輩も、驚いた様子だった。湖のほとりに腰かけ、ずっとここにいたいと思った。

再びオウルを訪れることがあったら、私は絶対にピキサーリへ行きたい。だが、この景色を見た同じ場所にまたたどり着けるかは定かではない。その場所に行けたとしても、あのときと全く同じものは見れないだろう。

帰国前の忙しさもあってか、あの日のあの時間の記憶は今となっては夢のように思う。あの場所は実在するのか、あの景色は本当にこの目で見たものだったろうか。それほどまでに美しく、私の脳裏に焼きついている。世界には私がまだ知らない景色がある。しかし、私にとってはあの日見た景色が、世界で最も美しかったと思う。一生忘れたくはない景色だ。

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追記
散策したあとに食べた、あのシナモンロールの大きさと美味しさの衝撃も、この先一生忘れることはないだろう。。。

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