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課題解決しながら生成AIを学ぶ・使いこなす。八丈島の中学校で、島独自のデータを取り込んだオリジナルチャットボットを開発【生成AIパイロット校 実践事例】

東京から南に約300キロ。自然と固有の文化に恵まれた島、八丈島。

ライフイズテックでは、八丈町立富士中学校で、3年前より地域課題解決型の取り組みを進めています。それは生徒が島の魅力を探究し、Webサイト制作を通じて島外に発信するというもの。昨年度はNHKなどにも取り上げられ、注目を集めました。

生成A​​Iの活用が進む中で、その使い方を学ぶ授業は実施され始めていますが、「生成AIを使って課題を解決する」学習事例はまだ少ないのが実情です。
そこで今年度、富士中学校では、子どもたちがAIを使って新たな価値の「生産者」になるために「​​課題解決をベースに生成AIの使い方を学ぶ」というさらに高度なチャレンジを行っています。

今回は、自然に囲まれた島で「中学生が生成AIを活用してプログラミングしながら島のチャットボットを開発する」技術科の学びの先進事例をレポートします!


まずは、AIに触れてみる

今回の2日間の授業では、富士中学校の中学2年生26名が八丈島の魅力を伝えるためのチャットボットを制作していきます。チャットボットは独自のデータを取り込んだオリジナルで、制作には生成AIを活用しています。
地域の紹介に特化した対話型アプリケーションを生徒自ら作成することで、「生成AIの仕組みを理解し、AIを課題解決に活用できる」ことを体感してもらうことが目的です。

先生から生成AIに関するレクチャーがあった後、生成AIに慣れていくために、実際に触れながらミニワークを行います。
なお、今回授業で活用したのは、ライフイズテックが開発中の学校向け生成AIサービスです。生徒も教師も安心安全に生成AIを利活用してもらうため、学校向けに特化した機能やUI・UXの最適化を図っています。

開発中の生成AIサービスを活用。

「八丈島の魅力を伝える」ためのチャットボットのテーマを、生成AIと一緒に考える

生成AIの使い方を理解した後は、いよいよ「八丈島の魅力を伝える」ためのチャットボット作制作へ。ここからは先生のサポートの下、生徒各々で教科書を見ながら進めていきます。

まずはチャットボットのテーマを、生成AIと一緒に考えます。
八丈島の「自然」「観光地」「歴史」など、考えられる情報は様々ですが、生徒たちが頭を悩ませていたのが、このテーマ出しでした。先生やメンターが「例えば自分が観光客ならどんな情報が知りたい?」と声かけをしながら進めていました。

「黒砂砂丘」のチャットボットを作成するために、テーマ出しを行う

情報がある程度出揃ったらコードを実際に書いていきます。チャットボットが実際に動くと、生徒たちは明るい表情に。チャットボットの動きを実際に目の当たりにすることで、先ほどまで悩んでいたテーマ出しのイメージも徐々についたようで、生成AIに次から次へと情報を聞いていくようになりました。

オリジナルチャットボットの画面。生徒が試すと、生成AIで自ら聞いた「八丈富士」の情報が出てきた。

この作業を何度か繰り返し開発を進めた後は、チャットボットの「キャラ設定」を考えていきます。
もちろんこのアイデア出しにも生成AIを活用。生成AIにキャラクターの名前の候補をいくつか出してもらうのですが、「もうちょっとクールにして」「漢字を入れてみて」など、頭の中にあるイメージを言語化し、プロンプトを入力していきます。
捻り出したキャラ設定をチャットボットの開発画面にプログラミング。中には「八丈島らしさ」にこだわり、「八丈方言を交えて話して。一人称は『ワイ』にして」などと指示する生徒も。AIを活用してクリエイティビティを発揮する方法を体感していました。

AIは間違えることもある。ハルシネーションを体感する。

「これ(生成AI)が間違ってると思う」

と悩んでいたのは、八丈島にあるシダ科の植物「ヘゴ」をテーマとしたチャットボットを作っていた生徒。生成AIにヘゴが「何科か」を聞くと、自分の知識とは違う答えが出ると言います。疑問に思った生徒は、八丈島観光協会のサイトにアクセスして、生成AIの出した答えが間違っていることを確認。正しい情報をチャットボットの開発画面に読み込ませます。

自然科学が大好きだというこの生徒は、「でも、あとで理科の先生にも聞いてみようかな」と漏らしていました。

生成AIが間違った情報を与えうることを生徒たちは事前のレクチャーで学んでいましたが、実際に遭遇した際「調べ直す」「専門家に聞いてみよう」と考えることが自然とできていることに私たちも驚きました。

生徒が実際に開発したチャットボット画面。正しい情報を入力し直す。
事前のレクチャーでAIの特性を学ぶ

キャラクターの画像生成で大盛り上がり

次に、チャットボットのキャラクター画像生成にもチャレンジしていきます。先ほど考えたキャラ設定に合うキーワードを考え、画像生成AIでキャラクターを生成。
想像とは違う画像が出てきたり、かわいい!と思えるものを作ることができたり、生徒たちはそれぞれの画面を見せ合いながら、大盛り上がりで開発を進めていました。

「八丈島灯台」をテーマとしたチャットボットを作る生徒は「くじらの妖精」をイメージしたキャラクターを生成

生徒たちは、「これからも生成AIを使い続けたい」

2日間、合計たった4コマの授業で、生成AIを活用してプログラミングをし、オリジナルのチャットボットを作り上げてしまった中学2年生。生徒たちは

「3年生になってもこれ(生成AI)を使い続けたい。」
「出てきた情報があっているかどうか、見極めるのが難しかった。」
「生成AIから情報を引き出すことが最初は難しかった。でも、わかると楽しくなった。」

と生成AIの特性・可能性を体感してくれたようでした。

授業時間が過ぎても教室に残り、楽しそうに開発に取り組む生徒たちも

ライフイズテックの取組に共感し、この授業をしてくださった山下先生は、「(生徒たちは)面白かったんでしょう。響くものがありました。」と手応えを感じてくださったと同時に、「生成AIに『使われない』ために、自分の思いやアイデアをいかに取り入れられるか、AIを使っていかに発展させられるかということに今後チャレンジしていきたい」と語ります。

次回は生成AIを活用した地域課題解決型の授業を予定しており、「もっと生徒の想像力が引き出されるような授業をしたい」と抱負を語ってくださりました。

コンビニも高層ビルもない、自然豊かな島で生成AIを使いこなす中学生。AIの利用者に留まらない、AIを使った課題解決者や開発者といった「生産者」への一歩を踏み出していました。

ライフイズテックは今後も、様々な地域の先生方、学校と協働しながら子どもたちの学びを応援していきます!

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