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人的資本経営にたちはだかるふたつの障害とは

人的資本経営がますますトレンドになりつつある。ぼくも以前から着目していたテーマである。所属組織の公式noteでもそのことは書いた。

ダブついた財務資本を人的資本に投資し、よりイノベーションを起こすことが重要だ。ぼくが現場をまわってみても、各社、人的資本経営に向けて着実に動き出しているように思う。一方で人的資本経営にはいまだ遠い現在地にいる企業がほとんであることも感じている。この記事では、人的資本経営実践の現在地と今後求められるだろうことを書いていく。

人的資本経営に向けた各社の取り組み(現在地)

各社の取り組みでますます勢いづいているのがタレントマネジメントシステムである。導入の声が後を絶たない。

各社、自社の人事課題をとりまとめつつ、現存する人事データをシステム内にインプットするという環境構築をおこなっている。データをシステムに入れ、さまざまな分析ができる環境を整えているというのが多くの企業の現在地だ。着々と人的資本経営の準備が進んでいる。

とはいえ、課題はまだまだ山積している。今後、人事が直面するだろう大きくふたつの課題について確認してみよう。

AS IS TO BEギャップを明確にする

現在地は環境構築である。それは、現状の組織や人事を可視化したにすぎない。さらに取り組みを進めるためには、経営計画から人員・要員計画(TO BE)をつくり、どんなスキルをもった人材(質)がどれくらい不足しているのか(量)を明確にする(AS IS)必要がある。

多くの企業がこの段階に届いていない。あるいは、膨大な量の人事データをタレントマネジメントシステムにインプットしたあと、ハタと気づくのである。「それで、わたしたちは何がしたかったのだっけ」と。

人事にまつわる要件を詳細に定義する

AS IS TO BEギャップが明確になり、必要な施策をうった先にも課題がある。要件定義の詳細設定である。この問題は特に育成まわりで起こる。

たとえばこうだ。課長が全社において5名足りなかったとする。来年度はじまる前までには、課長を輩出するために教育研修を実施したとしよう。では、「課長が育った」とはどのような状況を指すのだろうか。

さすがに、所定の教育研修を受講しただけで、課長が育ったとは言えないだろう。どのような職務を、どのようなレベルでこなすことができれば課長として機能している言えるのか。この定義がなければ、AS IS TO BEギャップが埋まったとはいえないのだ。

このような話をすると、育成や人材開発は効果測定ができない、などといって「うちは採用で補充するから大丈夫」と考える人がいるが、話はそう単純ではない。必要な人材を充足する手段が外部市場からの調達に限られることほど大きな経営リスクはない。まして、業界トップのシェアがあっても採用に苦しむ時代である。組織内部での人材調達能力はこれからますます増していくだろう。

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