イジメをとめることができなかった少年の恋物語

中学2年生の夏。
サッカー部だった僕は毎日毎日、サッカーの練習に明け暮れた。

ちょうど、学校でも野球部よりサッカー部の方が人気で、サッカーがうまい男の子がモテるようだった。

そんなサッカー少年の僕にも“初恋”と呼べるようなステキな女の子がいた……。

名前はナツミ。

夏がよく似合う、色黒で、手足が細く、セミロングの女の子だ。
外で元気よく走り回っているような雰囲気の子。とにかく色が黒い。

同じクラスで、ちょうど席替えでとなりになった。
僕はもうそれだけで毎日学校に行くのがウキウキで楽しかった……。

ナツミは“吹奏楽部”で放課後は校舎の3階で運動場を眺めながらフルートを吹いている。

僕はもちろん運動場でサッカーの練習をしていた。

すると……。

ちょっとナツミの方が気になり見てみると、目が合ってしまった。

これがたまらなく恥ずかしい。

いや、ホントに恥ずかしい。

サッカーのシュートもいつも以上に気合いを入れて蹴ってしまう。

男って単純だな……。



そんな日常の小さな初恋に事件が起きる。

同じクラスの男の子タケルだ。
タケルはナツミと小学校が同じで、もともと仲が悪かった。

タケルは1番後ろの席で、授業中も消しゴムのカスをナツミに投げつけている。ナツミは廊下側の前から3番目の席で、僕はそのとなりだ。

先生が気付き、タケルを注意する。

僕はホッとした。

ところが、そんな簡単におわることはなかった……。

休み時間にタケルが黒板消しを右手に持って、近付いてきた。

ん?なんだ?

すると、思いっきりナツミの頭を黒板消しでバフッと叩いた!!

ナツミの頭は真っ白に。

他の女の子たちがやってきて、ナツミを女子トイレに連れて行ってくれた。

当時の僕は何もできず、ただただ暴走するタケルを眺めるだけだった。

毎日タケルがナツミになにかをする。

教科書をゴミ箱に捨てたり、ノートをビリビリに破いたり……。

そんな状況でもナツミは1度も泣くこともなく、毎日学校に来ていた。

僕はナツミに、大丈夫?の一言ぐらいしか言えない。

てゆーか未熟な僕は、これがイジメだという認識とその対応が分からなかった。


そんな毎日を過ごしながら、中学3年生になった。

僕とナツミとタケルはそれぞれちがうクラスになった。

それでやっと嫌な関係はおわった。

そして僕もナツミのことは忘れ、受験勉強をやり始めた……。


それから、時は経ち……。


15年後。

僕はナツミと運命的な再会をした。

サッカー少年だった僕は薬局の店長。

すると処方せんを持った女性が入って来た。

お互いすぐに気付いた。

「ナツミさん?久しぶり。覚えてる?中学の時の……」


「えっ!?ここで働いてるの?しかも薬剤師って。私は今は温泉旅館で働いてるの。なんかビックリだね」

「ホンマめっちゃなつかしいし! もし良かったら今度ゴハンでも行こうよ!」

「行く行くー!」

その場でラインを交換し、ナツミは風邪薬を持って、笑顔で僕に向かって手を振りながら、帰って行った……。

〈1200文字〉

あとがき
えーstand.fmのお友達からの依頼でエッセイを提供することになりました。しかもテーマは「恋バナ」しっかり実話で書いてみました。いやぁやっぱり夏ですねー。




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