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【書評】『刑法事例演習ーメソッドから学ぶ』十河太朗著 有斐閣

最近よく紹介する本なのでnoteにしてみました!

刑法といえば刑法事例演習教材(第3版)という名著があり司法試験ないし予備試験の受験対策では多くの方が使用していた本だと思います。

この本ですね。こちらは有力な先生方による事例問題とその解説というスタイルで50問以上の問題が掲載されています。レベル感としては予備試験~司法試験の中間という感じの分量です。解説はコンパクトでさらっと問題を読んで構成ないし答案を作り読んで不足をつぶす。というのにはよい本です。

しかし,解説がたんぱくなため,刑法が苦手という方やある程度問題慣れしていな方からすると,やや難しいように感じると思います。加えて知識の補充は各自でというスタンスの純粋な演習書ですのでこれで得られるのは問題演習に対する経験とこういう事案が出るときはどう対処するか?ということになります。

そして,最大の難点が参考答案がない点です。この点,各種予備校の講義やヤフオク等での解答販売,ロー生の場合は先輩作成のレジュメや答案などがあると思いますが,レベルはまちまちです。もちろん答案謎なくても大丈夫という方には問題ないでしょうが。

そのため総じて刑法にある程度抵抗感がない人の本という印象でした。

かたや,今回紹介する本は,端的に言って初学者向け。刑法の事例問題を読んだことがないけど~という方に向けられているような本です。予備校の講義で言えば,「論文の書き方講義」や「論文基礎力養成答練」とかのあたりでしょうか??(講座名から私の使用した予備校がわかるw)

本書,何がすごいかというと学者の先生,しかも『基本刑法』シリーズを書いているような先生,さらには試験員の先生,が問題文を読む際のコツや思考方法を惜しみもなく解説しているという点です。具体的には問題文にアンダーラインがありこの事実はこういう行為であるからこの要件を~というような解説があります。それだけにとどまらず問題を解くに際して必要な背景知識の丁寧な解説もあります。構成要件を分解した図表や,放火の罪などの細かい犯罪類型の違いも表になっていたりして一種の択一六法的な部分もあります。問題数は20問前後ではありますが,書き方,考え方の基本が理解できるように深い解説がされているという印象です。かといって変に知識に偏るものでもありません。

細かい部分ですが私が気に入っているのは行為の特定やそれに対する罪数も丁寧な点です。この点は既存の基本書演習書や予備校講義でも後回しにされがちな部分ですが,常に書かれており犯罪が行為であり,行為に対して処罰が加えられるという基礎中の基礎・大原則を認識させてくれます。

あくまでも初級や中級の方向けという印象ではありますが,ある程度刑法が得意だよという方もまとめとしてあるいは復習として読むのに適した分量だと思います。

気になった方はポチって見るといいと思います!

今後も定期的に書評をしていきますので参考にしてください!




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