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ビタミンDがマウスの腸内細菌を変化させ、がん免疫力を向上させる

ビタミンDは、マウスの腸内細菌の増殖を促進することで、宿主の免疫力を向上させるようだ、という研究報告。

ビタミンDが豊富な食事を与えられたマウスは、実験的に移植されたがんに対する免疫抵抗力が向上し、免疫治療に対する反応が改善された。この効果は、血中のビタミンDに結合して組織から遠ざけるタンパク質を遺伝子編集で除去したときにも見られた。

研究チームは、ビタミンDが腸内の上皮細胞に作用し、その結果腸内細菌の1種であるBacteroides fragilisの増殖を促進することを発見した。この細菌はマウスに移植されたがんに対する免疫反応を増強し、がんの増殖を抑制したが、そのメカニズムは不明であるという。

そこで、研究チームは、マウスに通常の食事と共にBacteroides fragilisを与えたところ、同様にがん細胞の増殖が抑制されることを発見したが、マウスにビタミンD欠乏食を与えた場合には効果がみられなかった。

先行研究では、ビタミンD欠乏症は、ヒトのがんリスクを高めることが報告されているが、一致する見解には至っていない。

これを調査するために、研究者らはデンマークの 150 万人からのデータセットを分析した。その結果、ビタミン D レベルの低下とがんのリスクの上昇との関連性が明らかになった。がん患者集団の別の分析でも、ビタミン D レベルが高い人は免疫ベースのがん治療によく反応する可能性が高いことが示唆された。

Bacteroides fragilisはヒトの腸内にも存在するが、ビタミン D が同じメカニズムを通じてがんに対する免疫抵抗力を与えるのに役立つかどうかを理解するには、さらなる研究が必要である。

「これはいつかヒトのがん治療にとって重要になるかもしれませんが、ビタミンDがどのように、そしてなぜマイクロバイオームを介してこのような効果をもたらすのかはわかっていません。ビタミンD欠乏症を改善することががんの予防や治療に効果があると最終的に言えるようになるまでには、さらなる研究が必要です」と研究者はコメントしている。

出典は『Science

http://dx.doi.org/10.1126/science.adh7954


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