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『フィンランド式産後お話し会』の振り返り


昨年度、『つくばネウボラ by産後TOMOサポ』のゆーみんさんと一緒に開催した『フィンランド式産後お話し会』を振り返ってみたいと思います。

フィンランドの対話の背景には…

対等な立場で相手を尊重する姿勢や、

何かコミュニティ内(家庭、学校、会社組織等)で心配なことや問題だと思うことが起きたら、早めに対話の場をもとうという意識、

関係者それぞれが当事者として集まって、継続的に対話をしようという姿勢、

なかなかコミュニティ内の関係性では、安心して対話ができない場合は、信頼できる第三者が関わって対話の場を開く点、

当事者の感じる安心や、ありのままの自分で話ができる場づくりが大切だという視点、

などが私の中で思い浮かびました。


昨年度実際にやった取り組みとは…

実際にやったのは、フィンランドや北欧の対話を参考にして、「リフレクティング」を使ったグループワークや、「未来語りのダイアローグ」を参考にしたワークを行ったと思います。
お一人でご参加の方もいらっしゃれば、ご夫婦で参加してくれた方もいたことを思い出します。

「リフレクティング」は私なりの言葉で表現すると、直接相手に言葉を投げかけず、聴いていた二人で感じたことを話す対話の枠組みで、聴くことと話すことをしっかり分けながら、自分の言葉の力(コントロール性)を意識して、言葉をその場に置きながら話をする対話の形式だと思います。

また、「未来語りのダイアローグ」は、私なりに表現すると、お互いの関係性が安心できる未来をそれぞれが想像し、それを実現した未来に行った設定で、どんな安心感なのか、それを実現するにはどいった関係を築いたのかなどを、お互いの視点を尊重しながら話し合う対話の形式だと思います。

それらの対話の背景には、上記した考え方や姿勢があると思います。

ということで、実際にやった感想としては、毎回いい時間だったなぁ、参加してよかったなぁという記憶があります。

課題点としては、なるべくコミュニティ内のメンバー(夫婦や子供、そのほか一緒に暮らしているメンバー)でやれるといいなという点と、心配ごとが大きくなっている場合は、必要に応じて毎日、週に1回などの頻度で
対話を続けられる環境があるといいなと思ったことです。

とはいえ、お一人で参加したり、いくつかのご夫婦が混ざって対話をすることでも、自分の家庭でも起こっている似た課題を少し客観的に眺めることができたり、違う捉え方を感じたり、解決のヒントを発見したりなどできるので、昨年度と同じスタイルで、定期的に対話の場を設ける形で続けても、きっといい場が生まれると思います。


対話を続けることで期待できることとは…

フィンランドの対話では、しいて目的を言うなら対話を続けること自体が目的とされ、その副産物として、お互いの心配な気持ちが軽減したり、お互いの基本的な信頼を感じやすくなったり、何かエンパワーメントされる感覚が芽生えたりするということが起こると思います。

具体的に、それをエビデンス化するとどうなるのでしょうか。
私としては、対話を通して、自己受容感に変化が生まれたかどうか(状態自尊心尺度の対話の前後での変化)や、自律神経の状態(腹側迷走神経の状態のチェック、心拍数の変化、皮膚電気活動(electrodermal activity: EDA)の変化)、神経伝達物質の分泌(オキシトシンの分泌の変化、ドーパミンやセロトニンの分泌の変化)を測定できるといいのかな、などとぼんやり思っております。

私の個人的計測においては、対話的な場に参加すると、「状態自尊心尺度」は対話の前と後で結構変わる体験をしました。

自分や周りに「安心(腹側迷走神経優位状態)」を感じているかどうかのチェックリストにおいても、対話の前と後で変化すると思いました。
(参照:『発達障害からニューロダイバシティへ~ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動』モナ・デラフーク著/花丘ちぐさ訳 春秋社2022年 P138)

それから、最初は普段より少し緊張して高くなった心拍数が、対話を経て終わりのころには、睡眠と落ち着いている状態の間の心拍数に毎回なるなぁと思っております。
対話によって、副交感神経が優位な状態になり、あたたかな気分や、頭がスッキリした気分、なにかポジティブな気持ちが生じていると感じています。
そして、もしこの対話がコミュニティの中で行われれば、関係者の間で、こういった気分が生じ合うことになると思います。

まだ、ちゃんとした形で、統計的な測定はしていないので、やれるといいなと思います。


今後の展望

家族内での心配ごとを、早い段階で対話の場にのせる環境が作れるといいなと思います。関係者内では煮詰まってしまい、コントロール性が生じたりすると、お互いに安心して、ありのままで話すのは難しいので、
信頼できる第三者がいる場所で対話が気軽にできるといいなと思います。

その前段階として、対話がはいいものだ、気軽にできる、安心を感じられるという体験の場として、『フィンランド式産後お話し会』のような場が地域にあるのはとても大切なことだと思っています。

2023年度も継続して実施しますので、ご参加お待ちしております!

次回の『フィンランド式産後お話し会』のお申込みはこちらです。
https://sangoohanashikai6gatu.peatix.com/?fbclid=IwAR3d_qYpUMjUM2aLSz3BEslTrXOY-eT6OthFerSl-zgpdDzZG55VX7x9SyI

日時: 2023年6月24日(土)13時~15時半
場所: オンライン ZOOM
参加費: 500円


【参考文献】

・「オープンダイアローグ」ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル 訳)高木俊介、岡田愛 日本評論社 2016年
・「オープンダイアローグ対話実践のガイドライン 第一版」ODNJP版 2018年
・「あなたの心配ごとを話しましょう」トム・エーリク・アーンキル、エサ・エーリクソン(著)高橋睦子(訳) 日本評 論社 2018年
・「開かれた対話と未来」ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル 監訳:斎藤環 医学書院 2019年
・「トム・アンデルセン会話哲学の軌跡」矢原隆行(著・訳)、トム・アンデルセン(著) 金剛出版 2022年
・「ポリヴェーガル理論入門」ステファン・W. ポージェス(著)/花丘 ちぐさ(訳)春秋社 2018年
・自分や周りに「安心(腹側迷走神経優位状態)」を感じているかどうかチェック(参照:『発達障害からニューロダイバシティへ~ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動』モナ・デラフーク著/花丘ちぐさ訳 春秋社2022年 P138)
・ 「状態自尊感情尺度の開発」 阿部美帆 今野裕之(筑波大学大学院人間総合科学研究科
目白大学人間学部)パーソナリティ研究 2007 第 16 巻 第 1 号 36–46
・「日本語版状態自尊心尺度の作成」村上史朗・中原洪二郎 奈 良 大 学 紀 要 第44号

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