こひつじ・LAMB

アルコール依存者。ニコチン依存者。シュガー依存者。

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最近の記事

【ラブソングα】

ゲキ坂 平ら かすかな下り それらを僕は Google地図ではなく 君への 妄想的なナビゲーションで 立体視できる 都会の毛細血管が 酸素満タンの赤血球を運び 降ろし 折り返すような 行き止まりの 路地の奥に 僕はいる 君を待って 24時間営業の 24度設定のエアコンと 24時間おなじくつきっぱなしの 危うくて確かな和紙ランプのそば 見る夢の 時間はいつも昼 凍えて汗ばむ うそのつけない身体 微細な蚊たちが 僕のからだをついばむ 夏の終わりの 繁殖の栄養として

    • 【離脱作法 01】

       子供のころ大人の飲むビールの泡に口をつけるようなのを別として、16歳から日常的に酒を飲んできた。  直近の量は40°のバーボンを一本(700ml)以上だ。  いわゆるアルコール依存度テストをしても必ず満点である。  この病についてあらゆることを包み隠さず書くつもりだ。  私は55歳の男性である。  多額の借金はあるが貯えも職も無い。  友人知人を頼りに生きて来て三年近くなる。  何もかもアケスケに書くというのが、このブログ執筆においての誓いだ。

      • 『亀のはなし』

         私の父の故郷は、北海道東の女満別という町である。  香川県から入植した祖父と、途中山形で連れ添った祖母が、十二人の子をもうけた。  父はその十一番目なので、ずいぶん可愛がられただろう。    その頃の、開拓農村の話を聞くと、興味が尽きない。  より年長の伯父伯母に聞くことができれば、もっともっと、いろんな話があるだろう。  楽しいことも、切ないことも、父より、知っているだろう。    伯父伯母は、年齢順序に関わらず、次々と亡くなっていく。    そう! 亀の話だ。  父のす

        • 『なくしたもの・もってるもの』

           昔、オホーツクの常呂という町でのこと。  150円くらいかな、入ってたはずのガマグチを無くした。  小さな町だし、そんなん盗るひともいない。  たぶん、散歩してた砂浜で落としたんだろう。    いま90の祖母が、信金に行く用事があるという。  おれはクサってたけど、いっしょに行った。  大通りという名の一本道を、漁港方面へ、すぐだ。    すると向こうから、砂まじりの突風が吹いてきた。  祖母もおれも、しばし屈んだ。  やっと目を開けると空宙から!(祖母のマジックではないっ

        【ラブソングα】

          『完全な海』

           色の見えないぼくにも、鮮やかで忘れられない絵がある。  夏の日、人たちの影がまるで小さな、南中の太陽。  空は、ヘタクソな油絵のようにベタベタに青く、  カチカチのアイスクリームのような、巨大な入道雲。    海は、よくわからないが、真っ青な空に比べると、暗いやつ。  とうぜん、とうぜん、くり返す、波の泡の白さ。  砂浜は、ぼくにもよく理解できるグレーのグラデーションだ。  あとは海水浴の人たちの、原色の水着。    二人の叔父と、その浜にいた。  虚弱だったぼくは、波に近

          『完全な海』

          『行人坂を転がる君は』

          行人坂を 転がる君は いつも 汗ばんで 合鍵持っているくせに ノブをガチャガチャ 行人坂を 駆け下りる君は 雨に びしょ濡れで 素敵なヘアスタイルも もっと素敵さ ぼくらの 閉じ込められた ような 本当は自由な 明かりが 足りないようで ひそかに 眩しい ここで君と会おう 秘密を重ねよう 恐ろしいことさ 二人で分け合おう ここで君と笑おう バカなビデオ見て ケンカもしようよ イデオロギーで 行人坂を 上ってく君の 後ろ姿すぐに 小さく ぼくは切ないんだよ 行人坂

          『行人坂を転がる君は』

          『アンダンテ・カンタービレ』

           伯母の訃報を合図にしたように、良くないニュースや小さな事件が続く。  都心の寓居に戻ってから、初めは堕落的な安逸を満喫していたが、やがて変になってきた。  何のことはない、積るキッチンシンクや俺の体温が復活した部屋の感じ。  自堕落とはこのことだ。  聖書預言、世界情勢、陰謀論、666、いくらでもまみれて、祈ったり、疑ったりしている。  クリスチャンの友人は、部屋に住む悪霊のせいだといい、バプテスマ(洗礼)を勧める。  俺が今はそんな気が無いと知っている彼女は、賛美歌を勧め

          『アンダンテ・カンタービレ』

          『見回す』

           見回すと、ふつうに溶岩だ。  とはいえ、赤く湧き出しては冷えて黒くなる溶岩を、ひとはあまり知るまい。  俺が立ってるところは、火照ってはいるが、それゆえに乾いているところで、それは熱い稚児の淵であり、冷めたハワイのハワイ島。  あるいは、どこにでも名付けられている、千畳敷と言われる岸辺。  体力のある俺は、見回し、あちこちに同じ境遇にある人を見かけたので、声をかぎりに、 「おーい! そこのあなたー! ここはどこかなのー? 少し寝ぼけてしまったようなんですー」  と呼びかけた

          『逃亡ゲヘナ』

           八方塞がりと言っても、どこか逃げ場所を残していた時と、逃げ場所が無いなら、未来にそれが出来るとあてにして、それなりに生きて、だいたい十年。  しかししかし、債鬼は怖くなくなるほど鈍麻しての挙句、ごく親しい者ら、親族からの攻撃に、こう晒されると、すごく滅入る。  すごく滅入るだなんて、紋切り型に言ったが、紋切り型しか出せないほどに参っている。  それでも、こうして立って、スマホで文章を書くだけの視力も指もあり、暖かい夜とはいえ、凍えない毛のコートもある。  新宿は紀伊国屋書店

          『逃亡ゲヘナ』