第8回 〔聞く〕少しだけ多めに刷って、いろいろな場所で売ってみてほしい(兵庫 尼崎 武庫元町『DIY BOOKS』)
武庫之荘のつくれる本屋『DIY BOOKS』
第2回でご紹介した、兵庫県尼崎市武庫元町にある書店『DIY BOOKS』が2023年10月27日にオープンしました。
新刊や古書、リトルプレスを取り扱い、リソグラフ印刷機を使った本づくりもできる書店です。
平日の夕方、少し早めに仕事を切り上げ、阪神尼崎駅から宝塚行のバスに乗りかえて『武庫の郷』で下車し、徒歩5分ほどで到着しました。
お店に入ってすぐの棚には、尼崎南部地域活性化のための情報誌『南部再生』のバックナンバーが並べられ、興味を引く特集と味のある2色刷りの表紙を見ると、思わず手に取ってしまいました。
「本をつくる人がたくさんいる町はいい」
本を選び終えた頃にはすっかり日も暮れ、閉店の時間ということで、DIY BOOKS 店主 平田さん(以下:ひ)にゆっくりお話をうかがうことができました。
は:今日はありがとうございます。(購入した)「南部再生」は以前から知っていたんですが、尼崎市にある書店でバックナンバーを読んだり、購入ができるとなんだか嬉しいです。
ひ:ありがとうございます。実は「南部再生」の発行人である若狭さんも、このお店のオープンに協力いただいた方の一人なんですよ。杭瀬(くいせ)中市場で、古本屋をされていたり、尼崎地域活性化のために様々な活動をされている方です。
は:そうだったんですね(そんなつながりが!)。
平田さんが書かれた「武庫之荘で暮らす」には、この場所で書店を開くまでの経緯が綴られていますね。
は:10月27日にお店をオープンされてから、どんな方が来られますか?
ひ:20代~30代の子ども連れの方や40代~50代の女性が多いです。
このあたりは小学校や大きな公園も近いので、学校帰りの小学生や、公園に向かう家族連れなど、意外と人通りがあるんですよ。
は:この町に住む方が気軽に入って来られる場所なのはとてもいいですね。そういえば、DIYBOOKSさんのサイトにはよく『町』という言葉が出てきます。
ひ:この本にも書いたのですが、Web編集者・ライターとして、以前からオンラインでの打合せも多く、人に会うことが少ない中でコロナ禍になり、更に外出の機会が減りました。
一日中事務所に一人で仕事をしていると、このままでいいのだろうか、という気持ちがどんどん強くなったんです。
毎日最寄り駅までの限られた範囲で生活をすることで、必然的にこの町の人と触れ合う機会が増え「この人たちと、町の人の役に立つ仕事がしたい」と考えるようになりました。
は:あの時は近所のスーパーでさえ行くのをためらうほど、自分の行動範囲について考えましたよね。その中で「この町で」という考え方が生まれたんですね。
ひ:もともと書店をするつもりはなかったんですが、大学時代からZINEを作っていたこともあり、印刷機を触りたいと思って、神奈川県横浜市にある『本屋・生活綴方』さんのリソグラフ講習会に参加したんです。
そこで、自分がやりたいことはこれかもと思えたんです。
は:『生活綴方』さんも書店の中に印刷機を置かれて、そこで作家の方が本づくりをされていますよね。
先日大阪で開催された『KITAKAGAYA FLEA』のトークイベントで、そこを拠点に活動されている、安達茉莉子さんのお話を聞きました。
ひ:そうですか!僕も行きたかったのですが……。
安達さんの書籍『私の生活改善運動(三輪舎)』にも、とても影響を受けました。
「少しだけ多めに刷って、いろいろな場所で売ってみてほしい」
は:本づくりについてもうかがいたいです。どんな方がリソグラフ印刷機を利用されていますか?
ひ:先日は「料理を待つ間に読めるものを刷りたい」と、芦屋にある飲食店のオーナーさんに利用いただきました。
不定期でリソグラフ講習会も開催していて、これまでに数名の方に参加いただいています。
は:「料理を待つ間に読めるもの」素敵ですね。
DIY BOOKSさんのリソグラフ印刷機で刷れる、用紙とインクはどんな種類がありますか?
ひ:用紙は、
表紙などに▶じゃこ/半晒クラフト
本文などに▶理想の友II/淡クリーム書籍/藁半紙/コピー用紙
インクは、
ブラック/ブルー/イエロー/レッドの4色です。
今のところの取り扱いになりますが、今後はもっと増やしていきたいと思っています。
は:平田さんの著書「武庫之荘で暮らす」もこのリソグラフ印刷機を使ってつくられているんですよね。これからどんな作品がこの印刷機で刷られるのか楽しみです。
ひ:今は誰もが文章を発信できる時代、インターネット上で書くことは、多くの人に見られるという良い点もありますが、同時にたくさんの言葉の中に埋もれてしまうこともあります。
自費出版というと「費用が高い」とか「編集が大変」というイメージがありますが、リソグラフは100部以上など、ある程度の数を刷るとかなり一冊あたりのコストが安くなります。まずは少ないページ数や簡単な手製本でもいいので、本をつくってみてほしいです。
少しだけ多めに刷って、いろいろな場所で売ってみることで、新しい体験や出会いが生まれて、本をつくる前と後ではいろいろな意味で見え方が変わると思うんです。
は:そうですね。印刷や本づくりは「少しだけ多めに作って売ってみる」にとても向いていると思います。
「まずは綴じよう!話はそれから!」ってことですね。
は:今後、DIY BOOKSさんではどんなことを企画されていますか?
ひ:トークイベントや読書会、本づくりのための相談会や文章設計のワークショップなども開催したいと考えています。
それから、ゆくゆくは子どもたちに文章の書き方を教えたり、印刷・製本・出版を体験してもらったりできたらいいなと思っています。
▶小さな出版と本の研究室は、本や冊子づくりをサポートします
この研究室は大阪市内の印刷会社で働く二人が中心となり運営しています。「こんな製本できますか?」「この色と組み合わせる紙は何がいいですか?」など、少しこだわりのある本や冊子づくりを考えている方のサポート(時には一緒に考えます)をいたします。
小さな出版・本づくりについてのご相談や、印刷・製本・用紙のご質問などは【小さな出版と本の研究室】はだ 宛にメールをお送りください。
contact@littlepress-lab.jp
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?