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やりたい事をやる方法

15歳の夏に新規オープンのイタリアンレストランで雇ってもらった時は、年齢も一番下だった事もあり、毎日10時から17時まで延々と皿洗いばかりやっていた。
そのお店はめちゃくちゃ繁盛していた事もあり、ピーク中は皿洗いを2人がかりでやっても間に合わない位だった。

なので、ピークじゃない時間帯にも1人でずっと皿を洗っていた。
1週間位で飽きた。物凄くつまらなくなった。

隣で玉ねぎを切ったり、ジャガイモの皮を向いている人達が羨ましくて、「玉ねぎを切らせて下さい!」とお願いしても、返ってくる言葉は、「洗い物が終わったらね」だけだった。

もちろん、同じ要領でやっていたら終わるわけがない。
だから、どうやったら早く出来るのか一生懸命考えた。
どうやったら一回で食器をたくさん持てるのか?
どのタイミングで食器を片付けにいったら、調理中の人達の邪魔にならないで素早く片付けられるのか? 
どうやったら手を早く動かせるのか?

そしたらかなり早くなって隙間時間がちょこちょこと出て来たので、その余った時間で念願のオニオンスライスやジャガイモの皮むきをやらせてもらえた。

今まで包丁なんて家庭科の時間でしか握ったことがないから、ほぼ毎日手を切ってた。絆創膏ばかりだった。
でも、早く他の仕込みもやらせてもらって、トマトのマリネの味見とかしたかったので1秒でも早く切れるように頑張った。

仕込みも全て覚えたらまた飽きた。
次はパスタを作りたくなったから、同じように「パスタを作らせて下さい!」とお願いしたら、案の定「仕込みが全部終わったらね」と言われた。

また洗い物と同じ時の要領で、少しでも早く終わるように色々なやり方を試して、どんどん早く終わるようになった。
そして無事パスタも全部作れるようになって、ピークもなんなくこなせるようになったらまた飽きてしまった。

この時点で働きだしてから1年程、当時は16歳だった。
自分って飽きやすいんだなと自覚してきた。


そして、次はピッツァを作りたくなった。
当時の地元では珍しく薪窯を使って薪を燃やして焼き上げる本格的なピッツァで、ガラス張りでいつもお客様から見られている姿は凄くカッコよかった。

例のごとく「ピッツァを作らせて下さい!」と言ったら、その時の返事は、「ひかるはパスタだからダメ、今パスタ人いないし」だった。
あれ?今までと違うぞ?と思って諦めそうになった。

しかし、どうしてもピッツァが作りたかったので、また一生懸命方法を考えた。
そして思いついた方法は、「自分が休みの日に来たら、ちょっとは教えてくれるんじゃないか?そして、ピッツァを焼くのが誰よりも上手になれば、ピッツァのシフトにも入れてくれるんじゃないか?」だった。

そして、その作戦は成功した。
週6で働いていたので、数ヶ月間の間は毎日レストランに行っていた事になるが、ピッツァを作るのが楽しすぎたので、毎週休みの日を楽しみにしていた。

それと同じ方法を使って、パフェの作り方も教えてもらった。
ハンディというオーダーを入力する機械がゲームみたいで面白そうだったので、注文の取り方も教えてもらった。

その後、19歳の時につくばに新しいお店が出るという事で、
新しいお店で働くのはとてもワクワクするので、是非行かせて下さい。とお願いして、キッチンの責任者として行かせてもらった。

研修期間中は、トレーニングで作ったパスタやパフェやケーキが食べ放題で夢のような2週間だった。
とんでもないカロリーを摂取していたはずだが、とんでもなく動いていたので、全然太らなかった。

しかし実際にオープンしてみると、その新店舗の売上は見込みを大幅に下回った。
当時はまだまだ若かったので、正直、売上?利益?という感じだった。毎日、お客様が来なくて、やる事を探すのに忙しかった。
鍋とか壁を磨きすぎて、どこもかしこも鏡みたいだった。
当時4人いた社員も次々と抜けて、最終的には1人になった。

そして、21歳か22歳になった時に、社長からこのまま赤字なら閉店の可能性があるという事を伝えられた。 

え?閉店??と思った。一生懸命働いているスタッフの事を考えると悔しさと自分への不甲斐なさで、涙が出てきた。仕事で泣いたのは人生でその時の1回だけだ。社長にどうする?と聞かれて、

「それは嫌なので頑張ります、もう少し待って下さい。」と答えた。

それからは、基本的に毎日朝9時30分に出社して、夜の23時に退社、ピークの時間帯にしかスタッフを雇う余裕が無かったので、連休や年末年始は仕込みや清掃の為に、朝7時から夜の2時頃まで働くこともあった。

辛いという感情は無かった、自分がやりたい事をやらせてもらっている環境が無くなってしまうのは困るから、自分がやれる事をやっていただけだった。

でも、そんな感じで半年位頑張っていたらとても疲れてきた。
巻き込んでいるスタッフにも非常に申し訳ない気がしてきた。
新しいスタッフを雇わないと長く続けられない気がしてきた。
仕事も楽しくなくなってきた。

どうやったらスタッフを雇えるのか考えたら、自分の力で売上、利益を上げて、採用費と人件費を捻出しないとダメなんだという事に気がついた。
パスタとピッツァを作っているだけじゃ、環境は変わらないんだと気がついた。

その後は、毎日マーケティングの本や経営の本を仕事が終わった後に読んでから寝た。夜中の12時に帰って来てから3時までは必ず本を読むというスケジュールで過ごしていた。

毎月2万円分の本を買っていた。

そして、本から学んだ事を参考にしながら販促をしはじめたら、売上げがめちゃくちゃ伸びた。
結果に繋がったのは、学びだして半年位が経過してからだったと思う。

お陰で人も雇えるようになって、皆早く家に帰れるようにもなった。

仕事後に皆でカラオケやボーリングに行く余裕も出てきた。

楽しくなくなりつつあった仕事もまた楽しくなってきた。

その年は前年対比120%から130%位になった。

その次の年も少しずつ伸びていって、会社を離れる頃にはオープン時の売上のほぼ倍位になった。
チェーン店だった事もあり、やれる事に多くの制約があった為、最初は色々な提案をしても中々受け入れてもらえなかったが、結果を出してからは、何でもやらせてもらえるようになった。

そこまでかかるのに、10年間を費やしたが、よくその時の社長が言っていた「行動こそが真実」という言葉を理解するのには、きっと必要な年月だったと思う。

その後で渡米した時も、世界中の人を相手にする仕事の為、英語を0から学ぶ必要があったが、飲食店時代の経験があったからこそ、時間さえかければ自分には何でも出来る能力があると信じてやって来れたんだと思う。

もし、あなたが今やりたいことがあっても、出来ない理由があるのだとすれば、まずは目の前の仕事をとことん楽しむ事、そして、あなたが置かれている環境の中で、実際にあなたがやりたい分野で、一番の力をつける事で、やりたい事を出来るようになると思う。

それは、長い道のりかも知れないが、価値がある物は簡単には手に入らないからこそ価値があるのだと僕は信じている。


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