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教師の「懲戒権」をなくす? 本気ですか?

耳を疑いました。
参議院予算委員会で与党の某議員が、学校教育法第11条について「体罰の禁止」だけでなく「懲戒権」も撤廃した方がいいという意見を述べたのです。

以前、私はこのnoteで、マルトリートメント(不適切な関わり)について書きました。
教師によるマルトリートメントは、子どもの発達に多大な悪影響を与えることは今後さらに周知していく必要があります。
とくにひどいマルトリートメントは、脳障害をも引き起こすという研究もあるくらいですから、決して許されるものではありません。

その議員は、マルトリートメントと「懲戒権」が関連していると限定したわけではありませんでしたが、なんらかの形でマルトリートメントを法的に規制することが重要であるとし、その手段のひとつとして学校教育法からの「懲戒権」の削除を求めたのです。

その議員は、さほど厳しい言い方をしたわけでもなく、簡単に触れる程度ではありましたが、国会議員が予算委員会で質問するということは、こうした意見を持つ人が一定数いるからでしょう。

学校現場、特に今の小学校の現状はかつての中学校の「荒れ」に勝るとも劣らないほど困難な状況にあると言われています。

子どものために良かれと思い、優しい口調で指導をしても保護者から苦情が入ることはよくあることです。
「なぜ、自分の子だけが注意されたのか」
「その程度で別室に呼び出すのはおかしい」
といった保護者からの問い合わせに若い教員は耐えきれず、
新採用後、一年を待たずに退職したり、病気療養に入ったりする例が後を絶ちません。

もし今、教員から「懲戒権」さえも奪ってしまえば、学校は無法状態になるかもしれません。

学童(放課後児童クラブ)の状況を見れば、それは明らかです。
もともと指導員であった人から指導権を奪い、支援員としたことで、子どもから
「お前に指導する権利はない」
と支援員が罵声を浴びせられることが頻繁に起こっています(私の地域だけの問題でしょうか?)。

教師のマルトリートメントによって、自ら命を絶ってしまった子どもたちがいます。
そんな悲劇を今後二度と生み出さないためにも、私は、マルトリートメントは絶対になくすべきだと思います。

けれども、もともと決定的な決め手を持たない丸腰状態の教師から懲戒権を取り上げたら、何を拠り所に指導すればいいのかわからなくなります。
無意味な混乱を生じさせるだけです。
最もいじめが発生しやすいのは、無秩序の教室です。

懲戒権をなくすためには、それがなくなっても教室が無法状態にならないシステムの構築が必要です。
それには、年齢別に編成されている学級を解体し、すべての授業を探究活動にするくらいの覚悟と準備が必要であり、それを受け入れる社会全体のコンセンサスも必要です。
当然、入試制度も根本から見直す必要もあるでしょう。

順番が逆なのです。
先にやるべきなのは、学校教育のシステムの見直しです。



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