好きな本の旅立ち

 私は、とにかく古本屋に行って、気に入った本や漫画を片っ端から買うのが好きだ。

 その気に入ったの基準がやたら広いせいで、小説も評論も参考書も、少年漫画も青年漫画も少女漫画もエロ本もと、とにかくパッと見て気に入ればこだわりなく買ってしまう。

 でも、やはり買いすぎて、読まないままたまってしまう。なので、そうなると断捨離するのだが、うまくいかない。

 ある時、ネットで調べると10倍以上の値で取引されてる本があり、そういう本なら売ってもいいだろうとアドバイスされた。しかし、私は売る気にはなれなかった。

 たとえ100円の本が10万円や100万円になっても、その本を読むことで自分の時間を埋めてくれるなら、その価値は金銭的なものだけで計れるものではないと考えるからだ。

 とは言っても、生活がひどく苦しくなれば、そう言った思いも消えてしまうだろう。

 結局、私もお金の誘惑には抗えず、フリマサイトで売ることにした。その本を丁寧にアルコール消毒して、「今までありがとう。本当に君のおかげで、僕は悩む時間を減らせられたよ。」などと声がけし、少し感情が強まり、涙がほろほろと出てきたが、堪えつつ、緩衝材に包みながら、また新しい読み人の元へと旅立たせた。

 できることなら、モノの価値が単に金銭的ものにも変え難いものだと考えられるような余裕が欲しいものだ。

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