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毎日日記|観葉植物と司書さん

 図書館で「三月のライオン」を読んでいると、ばたばたばた、と走る足音と「おかあさん!ねえ!」と大きな声がした。小学校低学年……もしくは幼稚園の年長さんくらいだろうか、小さな男の子が走り回っているようだった。ちら、とそちらを見て、誰もがそうするように、私も手に持った漫画に視線を戻した。
 しかし、彼はなかなかの声量でしゃべり続けた。おかあさんもたしなめたりしているのだが、一時的には静かになっても、またすぐ大きな声で話し始める。まあ子どもってそういうもんだろう。
 そのうち、司書さんがやってきた。なにかお話かな、と思って聞き耳を立てていると、司書さんと男の子が会話している。もう一度そちらを伺えば、おかあさんの方はなにかをこぼしたのか床に膝をついており、その間、司書さんが男の子の相手をしておられるようだった。
 設置されている観葉植物に触り、男の子はたくさん質問する。
「この木は誰が切ってるの?」
「そういうお仕事の人だよ。おじさん」
 想定よりもきっぱりとした「おじさん」という単語になぜかおかしさを覚えた。
「これどんどん大きくなったらどうすんの?」「土はどっから持ってきたの?」
 男の子の素朴な質問にひとつひとつ答えてあげている司書さんの姿勢が印象的だった。男の子の声は、確かに図書館という場にしてはやや大きく、作業中の方が眉をしかめている姿も見られたが、聞き耳をたてている私としてはおもしろく、かわいらしい光景だった。
 おかあさんの跡片付けが終わったのであろう、男の子は妹か弟と一緒におかあさんに連れられ、図書館を出て行った。それに気づいたのは、いつの間にか声がしなくなってからだった。

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