久々に勤めた病院は奇妙な職場だった〜‼️嫉妬😩
第29話 飛んで火に入るサワヤカさん
「来るもの拒まず、去るもの追わず」
アコガレクリニックは出戻りスタッフを歓迎している。
ここを辞めて他へ転職したとしても「戻りたい」と言えば、院長は快く迎え入れてくれるのだ。
しかし、一旦辞めた職場に戻るのは容易な事ではない。
ある日、以前受付で働いていたサワヤカさんから私のところに連絡がきた。
アコガレクリニックに戻りたいという。
彼女は、ここを辞めてから、内科を三社、眼科を一社、整形外科を一社勤め、転職を繰り返していた。
サワヤカさんの話では、病院はどこも同じようなもので、院長のパワハラは横行しているし、看護師は気難しいと言う。
受付は彼らから見下されて立場はものすごく低く感じられるそうだ。
特に最後に勤務した内科は酷かったらしい。
院長に毎日の様に嫌味を言われ、怒鳴られた事も数知れず。
あろうことか、院長が折につけ、受付の仕事ぶりを点数にし、1点、2点、3点と点数をつけては内申書のように成績表にして本人に渡すというのだ。
その内容は、患者さんを呼ぶ時の語尾が長いとか、忙しい日に休みを入れる(他のスタッフへの思いやりがないと言われる)等々納得出来ない項目が多く、サワヤカさんは1点や2点を付けられて大層傷ついたそうだ。
そうしているうちに、後頭部に円形脱毛症ができ退職に至ったということだ。
「もう人間関係でもめたくない」
アコガレクリニックのスタッフは良かったのに、院長からちょっと嫌なこと言われたくらいで、衝動的に辞めてしまった事を今は後悔していると言う。
うちも変わらないと思うんだけどな。
院長はあの通りだし、スタッフもほとんど入れ替わってしまったから。
「アコガレクリニックに戻れるか、アミコさんから聞いてもらえないかな?」
彼女の声はか細く疲れた様子が電話口まで伝わってくる。
私は、サワヤカさんが辞めた時のことを思い出していた。
衝動的に辞めてしまった彼女のことを、院長はあまり良く思っていないだろう。
「リハビリ助手の募集をしているからそれでいいなら院長に聞いてみるよ」
ちょっと難しいかもな💦
「人間関係さえ良ければどこの部署でも働かせてもらいます」
彼女は相当弱気になっていた。
次の日院長に「サワヤカさんが再びここで働きたいと言っている」ことを恐る恐る伝えてみる。
ところが私の予想に反して、院長はニコニコしていた。
「そうだろう、そうだろう、辞めたい人ばかりじゃないんだよ、ここに戻りたい人もいるんだよ」
たいそうな喜びぶり。
???
私は、不思議な気持ちで院長の言葉を聞いていた。
サワヤカさんはリハビリ助手で採用することになり、受付も兼任するという条件で迎え入れられた。
しかし院長がここまで気前が良いのには理由があった。
アコガレクリニックは、電子カルテなのだが、リハビリの患者さんだけは、患者さん専用の指示書(紙のカルテのようなもの)も電子カルテと併用して使用していた。
オープン時から電子カルテを導入しているのに紙のカルテも一緒に使っていることを、院長とセッカチさんは勿体ないとずっと思っていたようだ。
「これを機にペーパーレスにしよう」
なるほどそれであんなに喜んだわけか!
サワヤカさんは、他院の整形外科でペーパーレスを経験している。
即戦力としてリハビリ助手を引っ張る事を期待されたわけだ。
彼女にとっては、いきなりのリーダーは予定外だったのだろうが、張り切って仕事をしていた。
院長の目論見通りサワヤカさんはリハビリ部門を引っ張り、ペーパレスへの移行は成功した。
看護や受付は、サワヤカさんがいると仕事がスムーズに運ぶので、何かにつけ彼女を頼る。
どうやら、二階の理学療法士さんも彼女を相当頼りにしている様子である。
ところがそれが良くなかった。
リハビリ助手の先輩たちの気分を損ねてしまったのだ。
サワヤカさんは、入って早々に嫉妬され虐められてしまった。
“飛んで火にいる夏の虫”だ。
イケメン課長が辞めてからのリハビリ室はまとまりがなく、スタッフ同士の仲も悪くなっていた。
サワヤカさんが来る前は、リハビリ助手間で仲たがいしていた二人がいたのだが、シフトを被らないようにして欲しいとそれぞれが上司に頼んでいた。
ところがサワヤカさんが入ると、揉めていたはずの二人は仲良くなり、今度は二人で結託して、サワヤカさんと一緒のシフトにしないで欲しいと言い出した。
挙句に、サワヤカさんを辞めさせるか自分たちが辞めるかというところまで事態は悪化した。
リハビリ室の雰囲気は悪くなり、二階で働く他のスタッフも働きづらいと頻繁に訴えるようになった。
それに耐えきれなくなったサワヤカさんは、出戻って一年足らずでまたここを去ることになる。
本当に女の嫉妬は怖い!! つくづくそう思った。
独り言
仲が悪くていつも陰口を言ったいた二人は「彼女と一緒のシフトは嫌です、このままだと私は辞めます」と言って上司を困らせていた。
そこへサワヤカさんが入ってきたのだけれど、仲悪いはずの二人が急によく話すようになり2対1の関係になった。
私はサワヤカさんからの報告と愚痴、喧嘩しているスタッフからの自分有利な訴えを聞きながらしばらく過ごすことになる。
そして、サワヤカさんが辞めた後また二人の仲は悪くなった。
リハビリ助手のリーダーが不思議に思い「なんであんな行動を?」と尋ねたそうだ。
「消去法ですよ、別に仲良くするつもりはなかったけれど、今はこの人と組んだ方が得だと判断したからです」
人を陥れるこんな技があったのか😱
怖すぎる😨
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