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【観劇感想】2023年 六月大歌舞伎 昼の部


色々見えづらくてすみません。なかなか難しい。


1『傾城反魂香』「土佐将監閑居」「浮世又平住家」


「土佐将監閑居」は通称「ども又」で知られる演目で、大津絵を売って暮らしているが、生来吃音に苦しみ、弟弟子に先を越され、吃音のせいで才能が開花しないと思ってしまっている又平さんが、一筆一筆魂を込めて描いた絵で才能開花し、師匠に認められる話はとても人気。
絵が手水鉢を抜けてからの夫婦のやり取りはちょっぴり面白いけれども、「やったね!!良かったね!」の気持ちが強くて、涙してしまう場面。思い出しただけでも泣けてくる。

ワンピース歌舞伎から観始めた私でもこれまでに2度観ていて、大好きな話。


「浮世又平住家」は初めて。土佐の苗字を貰ってからの場面。前回その後が見られるのは嬉しい。あまり上演されることはない珍しい場だと思う。
「戯場花名画彩色(かぶきのはなめいがのいろどり)」という題名がついている。又平の家に銀杏の前が逃げて来て、又平の描いた絵が抜け出てきて追っ手と戦うという舞踊。
華やかでもあって、歌舞伎らしい場面かなと思う。
おとくさんも鬼の面をつけて対峙する。
正確にはくわえてかな。
最後は夫婦が息の合ったやり取りで奴を相手にする。ご飯炊いたりすり鉢すったりしてて、面白かった。筋書きを買うのを忘れたので、配信があったらもう一度見直したい。


以前観たのは2019年、白鸚さんの又平、猿之助さんのおとく。
これもまた普段見ることのない序幕「近江国高嶋館」と「館外竹藪」を上演されて、ここで初めてなんで虎の絵が走り回ってるのかがよく分かった。


今回の「土佐将監閑居」は通常と少し変わっていて、虎の絵の騒ぎの前に又平夫婦が師匠の元に挨拶にくる。
それによって、弟弟子の修理之助が絵を書き消し、名前を貰うのを目の当たりにし、落ち込む又平という構図になってる。
もはや絵の功でなくとも名前を!と夫婦が願い出るのも、より理解できる話になってると思った。

将監北の方の代わりに女中お百に寿猿さん。
女中さんなので、師匠と又平夫婦のやり取りの最中はいない。
最後に又平が着物をもらう時にやってきて、又平の踊りを後ろから心配そうに見守るようにしてたのが印象的。



さて、吃音症は発話障害の1つ。あがり症は現在は社交不安症といわれ、精神的な病の1つなのだそう。

又平さんは吃音症で、ずっとずっと悩まされてきた人。
国立障害者リハビリテーションセンター研究所の吃音についての詳細を見てみると、台詞の中にそこで載っていた吃音の特徴が現れていた。よく表現されていると思った。
又平が「節のあるものは話せる」というのも、吃音の方がいつも発話に苦労してしまう訳ではないということを表しているものなのだろうと理解した。

師匠の前であがってしまって……という精神的なものとは少し違うということを、頭に入れておくと物語がすんなり入ってくると思う。


チラシでもHP(歌舞伎美人)でも生来苦しんでる人と書かれているし、筋書もイヤホンガイドもあるのだけど、なんとなく観られる演目でもあるので、何も目を通さないで初見の方も多かったのでは、という印象を受けた。

もちろん、それで観られる演目は沢山あるのだけれど。

この話に関しては、見え方によって受ける印象が変わりそうで、勘違いしてると話が進むにつれて疑問だらけになっちゃうと思うんだよなぁ。

私自身、違う演目でそういう経験があって、全く勘違いして頭の中ごちゃごちゃになって疑問だらけで帰宅、後日解説付き配信で理解したということがあって。
なので、分からないと思ったら、途中からでも筋書を購入したり、場内のチラシであらすじを確認することをオススメします。
高いチケット代払って、理解不能で帰るともったいないので。


中車さんの又平は少し感情の起伏が激しい又平さん。丁寧に演じられてるのはすごい伝わってきた。
そのぶん、力が入っちゃってるのかな。
ちょっとオーバーになってしまって、面白みに繋がってしまうところがあるのが残念。絵が抜けるまでは、もう少し控えめでも本人の辛さや苦悩、必死で話していることが伝わるかなと思う。

絵が抜けてからはあまりの嬉しさにちょっとお茶目な部分が出てきて、クスッと笑えるところや、おとくさんとの掛け合いは息ぴったりで、本人も肩の力が抜けていい具合になってたと思う。

結構難しい役なんだと初めて知った。
又平さん、踊りもやらなきゃならないので、中車さん的には精一杯なんだろうなぁ。。
毎日試験みたいな気分だろうなぁ。
今月が終わっても、これからも又平に挑戦して、役を突き詰めて欲しいと思う。


壱太郎さんのおとくさんは、前向きで明るくテキパキとして、旦那さんの世話をよく見ている若い奥さんという感じ。
始終、又平を励ましているところが、旦那さんをちゃんと想ってる感じがして良かった。
見事に物語の雰囲気を引っ張ってくれたと思う。何度涙したことか。

絵が抜けてからのおとくさんのしっかり感も、今まで夫婦がどう過ごしてきたのかが垣間見えて、見ていて心地いい。
おとくさんの力量で雰囲気が変わるのだということがよく分かる。
すごく良かった。
初めて観る方にも分かりやすい感情表現をされていたなと思った。


團子くんの修理之助は早く師匠に認められて名前をもらいたいという向上心もありながら、優しい一面もある修理之助。
兄弟子又平の気持ちを理解しながらも、師匠に逆らうことはできないし、土佐の名前ももらったし活躍して役に立ちたいという気持ちが表情に現れていて、私は良かったなと感じた。


演じる人なのか、座組なのかによって修理之助像が違うのが面白い。
兄弟子の又平のことを他の人と同じく馬鹿にしてるのか、冷徹な感じの修理之助も見たことがある。
修理之助のイメージは、あんまりよくなかった。
けれど、今回の團子くんの修理之助は好感が持てた。


物語の構成が今回は又平の置かれている状況が、より分かりやすく組み立てられていたので、それもあるのかもしれない。



2『児雷也』

父の敵を討つ為に、ガマの妖術を譲り受けた児雷也のもとに敵が現れ、秘術の巻物が狙われるものの、ガマと綱手が出てきて事なきを得る話。

妖術を体得するのはやっ!って思っちゃったよ。
ガマがなんだか可愛らしく見える。
ガマちゃんが真ん中にいたのはこういうことか!という驚きと納得で終わり。
続きが気になる演目でした。



3『扇獅子』

福助さんに児太郎さん、壱太郎さん、新悟さん、種之助さん、米吉くん、というなんとも眼福な皆様!

米吉くんだけ「くん」だなぁ。

お綺麗だし、華やかでしっとりとした舞踊で、観てるほうは自然と頬がゆるんで、うっとりしてました。

獅子の毛振りは、女の人がやってるという感じもありつつ、踏ん張りがきかないと思うのに、連獅子のように速くなっていて、凄かった。

壱太郎さんの体力消耗が激しそう。夜の部はびびびのお里ちゃん。パワフルな方だと思うけれど、千穐楽まであと数日、頑張って!!

最後に華やかな演目で気分もすっきり、晴れやかに劇場を後にすることができました。


夜の部も通しだから見たかったけれど、昼夜1等は………
私も友達もおちびなので、なるべく1等のほうが見易いという……ね( ;∀;)


幕間では、お昼ご飯の他に、4月からだったかな?再開した焼きたての人形焼きを食べました♪歌舞伎座といえば、人形焼きの甘い香りが出迎えてくれるのも楽しみのひとつ。
美味しかったー❤️


帰りにセイコーハウス銀座ホールで開催されていた、坂東玉三郎 衣装展に立ち寄り、繊細で豪華な衣装の数々を間近で見てきました✨

阿古屋や揚巻の衣装もあり、感動でした。
阿古屋の帯もあったら良かったなぁ、なんて。
六条御息所の衣装がすごく鮮やかだった!

左上・六条御息所、左下・扇屋夕霧、右上・揚巻、右下・班女の前。夕霧の鷺の刺繍が盛り上がっていて、より際立っていた。


いつもの友達と観劇、あの事件から1ヶ月後で、お互い少し落ち着いてからの観劇で良かった。
メールでのやり取りはしてたけど、色々話して思いを共有して、、、


来月の昼の部は、、、三十数年ぶりの上演かぁ。観たことないから気になるし、中車さん的にもこっちなら結構大丈夫そうだけど、複雑な思いにもなりそうなので、保留。

8月3部は行く予定です。
まだチケット未確保だけど。
久しぶりに1~3部全て観たいなと思ってるところです。

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