小説家の連載 夫が絶倫過ぎて離婚しました 第9話(最終話!!)

【前回のあらすじ:絶倫夫のせいで切迫流産になった妊娠初期の七海は、兄夫婦の家で、両家の親を交えて話し合い。無神経な大和の発言に憤る七海の家族。大和の父も非常識な発言をし、全員が怒りに震える中、父をビンタしたのは夫の姉の優子だった。優子は大和にもビンタ。無事離婚できるのか?!】

「あんた、自分のお母さんが死んだ経緯聞かされて育ったのに、何とも思わなかったの?!お父さんみたいになるなってばあちゃんに言われたでしょ?!」
「・・・言われたけど、そこまで深刻に考えてなかった。父さんに応えられない母さんの責任だと思ったし、俺も男だから、性欲が・・・」
「あんたの性欲の強さは異常よ!これだけ多くの人にあんたはおかしいって言われたのに、まだ自分が正しいと思ってる訳?!」
 実の姉に激怒され、流石に何も言い返す気が無い大和。
「あんたは病院に行くべきよ。私は妊娠も出産も経験してないから、偉そうに言える立場じゃないけど、それでも、具合が悪い人や安静にしないといけない人の気持ちはわかるわ。そういう人に行為を迫るなんて、もう、人間のやる事じゃないよ」
 大和も大和父も黙っている。七海は大和に言った。
「離婚して、大和。あなたと一緒に居たくない。あなたと一緒に居ても、安心して赤ちゃんを育てられない。もしこの子が男の子だった場合、ロールモデルにあなたはふさわしくない。この子に大和みたいなクズになって欲しくないの。あなたは何より自分の性欲の方が大事なんでしょ?でも私が何より大事なのは私とこの子の心身の健康なんだよ。もう別れよう。慰謝料と養育費はきっちりもらうから」
「完全に有責配偶者はご主人の方です。ここで拒否すれば、奥様は調停や裁判も辞さない覚悟ですよ」
 弁護士がとどめを刺した。大和は頭を抱えて、うずくまる。
「そんな・・・俺は、俺は・・・」
 
  
 泥沼の話し合いから時が経ち、七海は実家に帰って両親と一緒に暮らしていた。
 七海が流産しかけた子供はその後驚異の回復力で元気に育ち、無事産まれた。子供は女の子だった。心配していたような絶倫クズ男には育たないだろう。
 娘は母乳もミルクもごくごく飲み、離乳食もしっかり食べ、一歳の誕生日を迎えた。
 離婚後、七海は兄・圭太が勧める男性と交際を始めた。この人は兄の親友で、紳士的ないい人。男性不妊症で子供を作れない。それが原因で奥さんに不倫と離婚され、心に傷を負っていた。七海と彼は、少しずつ心の距離を深めていき、やがて「僕をこの子のお父さんにしてほしい」とプロポーズをされて、婚約した。まだしばらくは実家生活だが、いずれ彼と再婚し、三人家族を築いていくだろう。
 
 一方の大和は、あれから病院へ行った。
 自分の性欲を異常だと言われ、しぶしぶ精神科や泌尿器科にかかった結果、セックス依存症では無いが、男性ホルモンの量が多く、人よりも性欲が強め、精子の量も人より多いという事がわかった。どちらかと言えば、欲をコントロールできないというよりも、「自分の性欲はすべてパートナーの女性にぶつけていいのだ」という間違った価値観を持っている事が最大の原因だという事が判明した。
 この診断結果に大和は大変ショックを受けた。自分が間違っていたという事を改めて突きつけられ、自分の人生を見つめ直すことにした。自分が正しいと思っていた父親の価値観が全部間違いで、元妻の方が正しかったのだと理解したのだ。今は父親から離れ、カウンセリングを受け始めたらしい。
「娘に会わせて欲しい」という手紙を送ってくるが、七海は娘に会わせるつもりは一切無い。「あなたは自分の子供より性欲を優先したから一生会わせるつもりはない」という一言だけで、返している。
 自分は離婚して良かった、それが七海の一番の思いである。
                                完

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