小説家の連載 夫が絶倫過ぎて離婚しました 第8話

【前回のあらすじ:絶倫夫・大和のせいで切迫流産になった妊婦の妻・七海は、兄夫婦宅に避難中。兄夫婦と夫の姉・優子の尽力により、弁護士を頼んでもらい、ついに夫と、両家の親や兄夫婦、弁護士を交えて話し合う事に。果たして無事に離婚できるのか?】

 七海はスマホを取り出して、動画を見せた。
「・・・七海さんを切迫流産と診断した理由は、出血があったからですが、出血に至った原因は、ご主人の無理矢理な性行為によって子宮が刺激されてしまったためと、母体がストレスにさらされたためです。妊娠初期は流産のリスクも高いので性行為はしない方がいいとされています。子宮の刺激により、今回血の塊が排出されたそうです。子宮が刺激されて収縮を起こし、このような結果になりました」
 画面の中では鈴木医師が大和にわかるように説明している。
 動画が終わった後、七海は静かに言った。
「わかる?あなたが私にやった事は、子宮を刺激して子供を殺そうとしていたのと同じなの。大げさとかじゃないの。それでも、切迫流産と診断されて反省してくれるなら良かったけど、あなたは大げさだと言って、何も理解してくれなかった。だから離婚するの。このままじゃあなたの性欲のせいで赤ちゃんが殺されてしまうから」
 動画を見た大和は、焦って弁解する。
「そ、そんな、でも、妊娠中にセックスしている夫婦だっているだろ」
「話を聞いていなかったの?妊娠初期は駄目なのよ。している夫婦もいるかもしれないけど、みんな安定期に入ってからだよ。でも、どうせ、大和は安定期まで待てないよね。私が妊娠したって言っても行為をやめないんだから。回数だって毎日3回」
「だ、だって、セックスして子供ができたのに、そのセックスのせいで子供が流産しそうって、意味がわからないよ!だいたい俺の子供なら俺に似て強い子のはずだ、やっぱり子供は七海に似て弱いんじゃないか。七海だって、前は俺の欲求に答えてくれてたのに、今じゃ安静にするからとかわがまま言って」
 意味不明な持論を展開して反論し続ける大和に、ついに七海の家族がキレた。最初に動いたのは七海の父だった。立ち上がり、大和を思いっきりぶん殴る。
「てめえ、うちの娘を何だと思ってんだ!バカにするのもいい加減にしろ!」
「いたっ、ひぃっ」
 殴られた大和は頬を抑えて義父を怯える目で見る。七海の父は、母になだめられて椅子に座ったが、まだ怒りに燃えている。
「うちの娘はてめえの子供を妊娠してんだぞ!ちょっとは労わる気持ちが無いのか!」
「でも、セックスしたんだから、妊娠するのは当然でしょう」
 怯えつつも堂々とそう言い放つ大和。頭がおかしすぎる。
「てめえ!!」
 大和の発言に憤る父。母も参戦した。
「七海は私達の大切な娘よ!私がお腹を痛めて産んだ子に何て仕打ちなの!あなた人の心が無いの?!」
「別に、お母様がどう育てようと、今は僕の妻ですから、僕がどうしようと勝手では無いですか」
「この鬼畜!」
 ついに母も立ち上がってビンタをした。大和はうめく。弁護士が慌てて母を止めた。
「お母様、殴りたいのは私も一緒ですが落ち着いてください」
「うう・・・ありがとう」
 ここで冷静な兄が再び口を開いた。
「大和さん、あなたは妹を性欲処理のように扱ってもいいと思っていたのですか?」
「性欲処理というか・・・どこの夫婦もそんなものでしょう。妻は夫の欲求に答えるべきなんです」
「それはあなたの偏見です。少なくとも俺は妻が嫌がるような事はしませんよ。自分の性欲より、妻の体調や気持ちを最優先します」
「僕も同意見だ」
 兄の発言に続いて、まだ大和を睨みながら父も言う。大和は2人の発言を聞いて、信じられないと言った表情になる。
「そんな・・・夫婦なのに?!夫婦なのにいちいち妻のお伺いを立てるなんて、信じられない」
「大和さんのその価値観は一般的ではありませんし、非常識です。イマドキそんな事を言う人はほぼいませんよ。いたとしてもあなたと同じぐらい非常識な人だけですね」
「そんな!だ、だって、七海も喜んでいただろう?俺に求められて・・・」
 焦って同意を求める大和に、七海はブチキレた。
「喜ぶ訳ないでしょーが!私はずっと嫌だって言ってたのに、無視して行為しようとしてたのはてめえだけだ!」
「なっ!てっきり、嫌よ嫌よも好きのうち、かと・・・」
 がっくりする大和。
「少なくとも俺はそう聞いたのに・・・」
「誰から聞いたのよ?」
「父さんだよ」
 すると、そこで、ずっと黙っていた大和の父が口を開いた。不機嫌そうに、
「若いおなごをもらったのが間違いだったかもしれんな、大和。ぎゃあぎゃあ騒ぎおって、みっともない。女っちゅうのは、男の夜の相手をするために嫁にもらわれるんだ。それを、妊娠ごときで嫌だの何だの、恥ずかしいと思わんのか。だいたい、夜の相手で流れるような子、弱いから流れるんだ。子供なんぞ、また作ればいい。嫁も嫁だ、妊娠だの出産だので、亭主の床の相手をできんような女、何の役にも立たん」
 その発言に、七海側の人間は全員怒りに震えた。怒り過ぎて誰も大和の父を殴りに行かないぐらいだったが、意外な人物が大和の父に渾身ビンタを食らわせた。わなわなと涙を流しながら腹を立てているのは、優子だった。
「なっ、何をする!」
「あんたのせいで!お母さんは死んだのよ!あんたが私のお母さんを殺したのよ!何が弱いからよ!あんたが自分の性欲もろくにコントロールできないごみクズだからお母さんは死んだんだ!大和のお母さんも死んだじゃない!あんた、その後ももう一回嫁もらおうって言ってたけど、二人続けて嫁が死ぬような男のところに誰が嫁に行くか!」
 何と、大和の父は再再婚しようとしていたのか。
「私が結婚しないのは完全にあんたのせいよ!あんたにお母さん殺されたせいで完全にトラウマになったのよ!恥を知れ!てめえもよ、大和!」
 義姉は大和にもビンタをした。
                             次回に続く
 


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