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自分たちが本当にやりたいと思うことを、スケールの大きな世界観を持ってやり続ける。

ついに開講した「能登ローカルシフトアカデミー」。今回は、「地域ビジネス創出に必要な起業家精神」をテーマにした、第1回目のオンライン講座の模様をお届けします。数々の実例を作り、昨年のコロナ禍においてもローカルシフトアカデミーを実施した新富町の話だけあって、受講生は興味津々で質問を投げかけていました。

■開催:2021年8月26日(木)19:30~21:00 オンライン開催
■講座テーマ:地域ビジネス創出に必要な起業家精神
■ゲスト講師 ※敬称略
齋藤潤一(一般社団法人こゆ地域づくり推進機構  代表理事)
高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
■モデレーター
稲田佑太朗(能登ローカルシフトアカデミープロデューサー)

ゲスト講師紹介

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齋藤潤一(サイトウ ジュンイチ)氏
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事 /
AGRIST株式会社 代表取締役社長/地域ビジネスプロデューサー

米国シリコンバレーの音楽配信会社でクリエイティブディレクターとして従事。帰国後、2011年の東日本大震災を機に「ソーシャルビジネスで地域課題を解決する」を使命に全国各地の地方自治体と連携して地域プロジェクトを創出。これらの実績が評価され、2017年4月新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任。1粒1000円ライチの開発やふるさと納税で寄付金を累計50億円以上を集める。移住者や起業家が集まる街になり、2018年12月国の地方創生の優良事例に選定される。農業の人手不足の課題を解決するために、農業の自動収穫ロボットAGRIST株式会社を2019年設立。2021年までに国内10以上のビジネスプランコンテストで受賞。メディア掲載:テレビ東京「ガイアの夜明け」、NHK WORLD世界17か国で放送、日経MJ(1面全面)、ワールドビジネスサテライト、他多数。MBA(経営学修士)スタンフォード大学Innovation Master Series修了。

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高橋邦男(タカハシ クニオ)氏
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事

宮崎市出身。徳島県の出版社、大阪府の編集プロダクションを通じて地域情報誌や講談社、リクルートなどの大手メディアの企画編集に20年間携わった後、2014年にUターン。行政広報紙のリニューアルにともなう官民連携プロジェクトのチーフディレクターを経て、2017年4月に一般財団法人こゆ地域づくり推進機構事務局長に就任。人材育成事業や視察研修を通じた1万人以上の関係人口を生み出しながら、企業誘致や移住促進に取り組んでいる。現役編集者として新富町やこゆ財団の広報活動にも関わっているほか、各種人材育成プログラムのモデレーターや講師としても登壇している。2020年4月より執行理事兼最高執行責任者に就任。


解決の一歩はまずアクションを起こすこと
チャレンジを続けることで見えてくるもの

第1回目ということで、これから全6回に渡って一緒に学んでいく仲間のことを知るために、まずはブレイクアウトルームで1人ずつのトークタイムからスタートしました。

緊張した面持ちだった受講生たちも幾分表情が和らいだところで、さっそく1人目のゲスト、こゆ財団執行理事の高橋さんから宮崎県新富町の事例について話が始まりました。
新富町は、「一粒1,000円のライチ」をはじめ、数々のビジネス展開を繰り広げている町。こゆ財団設立以降、町の特産品を目指したライチのブランド化ふるさと納税での寄附の創出、それらで得られた資金を活用して、新たなビジネスを産むための人材育成を行ってきたなど、一見、順風満帆にビジネスを成功させてきたように見える新富町。

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しかし実際は、何の実績もないところからの営業活動や販路の開拓、ヒット商品を生み出すことの難しさなど立ちはだかる壁も多く、なかなかうまくいかなかったと高橋さん。

それでもビジネスにつなげられてきたのは、諦めずに常にチャレンジを続けてきた結果。
パタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナードの言葉をあげ、「変化の激しい世の中で、産業経済の衰退、人口減少など問題はたくさんある。そこで何も行動を起こさないというのはあなたも問題の一部と同じこと。何かしらアクションを起こせば、解決の一部になる。それは、チャレンジをしていく上でとても大切な考え方になると思います」と話します。

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「新富町の話は、成功した事例の紹介ということではなく、その背景にある『今までもこれからも常にチャレンジし続けている小さな町』なんだということを知ってもらいたい」との言葉で話を締めました。

特別な能力が必要なわけではない
信念を持って発信し続けることが大切

高橋さんの話が終わり、お互いに気づいた点や感じたことを再びブレイクアウトルームで共有した後、質疑応答へ。チャット欄に書き込まれた受講生からの質問や、モデレーターの稲田からの質問に高橋さんが答えます。

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稲田「高橋さんは今まで雑誌の編集者として長年やってきて、今は町づくりや地域ビジネスという全く違う立場にいるわけですが、今までの経験が活かされていることはありますか?」

高橋「例えば、最初に『このネタで10ページもつかなぁ』と思うようなネタでも、取材に行けば面白い話がいっぱい出てくる。そいういう経験があったので、どこに面白いものが潜んでいるか、角度を変えたら何か見つかるのではという感覚が培われ、今に役立っていると思います」

稲田「ANAやユニリーバといった大手企業との協働も実現していますが、初めからそうなることを考えていましたか?」

高橋「そうなるといいなとは思っていましたが、実現できる自信は正直ありませんでした。チャレンジを続けていく中で、僕らと同じ価値観の人が集まって来てくれて、その中に、普段ならなかなか会えないような企業の方がいて。協働が実現した喜びというよりも、そういった方々に『新富町でやってることおもしろいね』と共感してもらえたことが何よりうれしいですね」

稲田「価値観が共有できて、協力してくれたりパートナーになってくれたりする人や、意見に賛同して応援してくれるファンを獲得するために行ったことはありますか?」

高橋「『こういうことやろうよ!』と自分たちの意見に巻き込もうとするのではなく、自分たちが良いと思うことを一歩一歩続けていたら、興味関心を持った人たちが周りにいたという感じですね。自分たちのビジョンや町の良いところを真摯に伝え続ければ、それが届いていい関係が築いていけるんだと今までやってきた中で思いましたね」

最後に、高橋さんから「自分は編集者だし、もともと役場の臨時職員だった人もいる。こゆ財団は何か特別な能力を持った人たちの組織ではなく、小さいことを積み重ねてきて今に至っている。受講生の皆さんにももちろんチャンスがあるのでそれをぜひ活かしてほしい」との言葉をいただき、前半は終了しました。

ビジネスの基本は課題解決
そして学んだことは即実践

続いて、こゆ財団の代表理事でもあり、農業課題を解決するため自動収穫ロボットを開発する会社AGRISTを立ち上げた齋藤さんのお話へ。事前に受講生から寄せられた質問を稲田が問いかけます。

その中で一番多かったのが「ビジネスを起こす際にどういうところに目星をつけているのか」という質問。これに対し、「シンプルにお客さんの声を聞け」という齋藤さん。ライチの時も、AGRISTの立ち上げの時も、農家さんのところに何度も通い、現状の問題について話を聞いてきた結果だと言います。

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「ビジネスの根本は課題解決。砂漠の真ん中で水を売れば売れますが、それは持続可能な解決方法ではない。徹底的に話を聞き、課題を見極めそれを解決するためにあらゆる手段を尽くしていくのはビジネスの基礎中の基礎。それができていない地方創生が多すぎるので、皆さんにはそうならないでほしい」との厳しい言葉に、表情が引き締まる受講生たち。

また、「起業家育成の際に大事にしていることは」との質問に、「楽観性」だと答える齋藤さん。3歩進んで2歩下がっても、2歩下がったことを落ち込むのではなく、1歩進めたことを喜べる楽観性は、行動し続けるモチベーションにもなります。
「誰でも手に入る、ビジネスのハウツー本やネットの情報だけで満足するのではなく、学んだ上でそれを行動していくのが大事。これからの講座で毎回素敵なゲストが登場しますが、聞いたことを実戦で取り入れつつ、皆さんそれぞれのオリジナリティを作っていってほしい」とアドバイスを送ります。

地域課題解決のためには
世界を見据えた挑戦を

最後に、受講生たちから直接齋藤さんへ質問が。

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受講生「地域課題解決のために、こゆ財団で活動するのではなく、AGRISTを立ち上げた背景をもっと詳しく教えてください」

齋藤「担い手不足といった農業課題を解決するために、行政からの補助金や助成金だけを当てにしていると続かないし、なかなか変わらないなという難しさを感じていました。しかも農業課題は新富町だけの問題ではなく、日本、世界中の問題。そうしたときに、こゆ財団でやるよりも株式会社という手段を取った方がいいと思い立ち上げました」

受講生「地域にとどまらず、広い世界観でものを見ていく必要があるとのことですが、新富町ではどのようなことを視野に入れて事業に挑んでいるんですか?」

齋藤「こゆ財団は立ち上げの時から『世界一チャレンジしやすいまち』というビジョンを掲げていますからね。他にも、世界から人を呼び込むために、古民家を改装した一棟貸切の宿も展開しています。地元の人だけ来てくれたらいいやと思うのではなく、日本中、世界中から人を呼び込むつもりでやらないと良くならない。世界中をターゲットにするんだという明確なビジョンや世界観を語れる人にみんな惹かれますから」

受講生「いろんなところで起業家を増やしたいと動いている地域はありますが、それについて齋藤さんの考えを教えてください」

齋藤「ただ起業家を増やせといっているだけで、ビジョンもミッションも何もないことが多い。そういったところは、予算がなくなればそのまま事業も終わってしまう。その要因としては、行政の仕組み上、トップが数年で変わってしまうことが大きいですね。こゆ財団の場合は途中で町長が変わりましたが、同じビジョンがしっかり共有できていたので今に至ることができました」

最後に齋藤さんから一言。
「事業を起こしやり続けていく上で、自分が本当にやりたいこと、好きなことを探究し続けるのが重要。『have to(〜しなければならない)』ではなく、『want to(〜したい)』を追求してください」

初めは緊張した面持ちだった受講者の皆さんも、講座が進むごとに積極的に質問を投げかけていて、とても有意義な回になりました。

今後も講座の様子をお届けしますのでお楽しみに♪

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