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「普通の女の子」として存在したくないあなたへ。

「女流作家」と言われて憤慨していた。
何なのそれ。私の文章を読んだ男友達の感想だ。

しかしもともと酒の入った私が「香水の匂いがしない文章が書けるようになりたいなぁ」と語って、
「香水の匂いした?」「した」と会話し、
その流れで「女流作家」と言われただけなので男友達には罪はない。完全に私の問題である。


そのことを女友達に話した。
「なんで女流作家って言われて嫌だったの?」
「女性読者ばかりのモノしか書けない感じがしたから。恋とかお洋服みたいな香水の匂いがするやつだけってちょっと」
「じゃあその逆はあり?男性読者ばかりのモノを書く男性」

彼女の場合、村上龍がどうしても読めないらしい。

私はそんなでもない気がしたが、言っている意味を知りたくて彼女が途中で読むのを辞めたという本を読んでみた。

1990年代前半ananに連載されたエッセイ集


「普通の女の子」として存在したくないあなた。
というのは当時のanan読者を指しているらしいが
タイトルはほぼ飾りで、
ずっと村上龍がキューバとキューバ音楽を語っているだけの、エネルギッシュな本だった。

キューバのことなんか知らんがなと思いながらも次々ページをめくってしまうので不思議だなと思っていたら、巻末の解説で石田ゆり子がまったく同じことを言ってくれていた。

行ったこともない、知識としても殆ど知らない遠い国のことを、とんでもなく素晴らしいんだよ、と話し続ける龍さんに、おいてけぼりにされてしまったような感じがする。が、楽しそうな人や、幸せそうな人を見ていると自分でもなんだか幸せになっていくのと同じで、だんだんそういう気分になる。そしてある瞬間、はたと気付く。
「なにかを好きになる、その強さはきっと、才能なんだ」
どれだけ愛することが出来るかそれこそがその人の生命力だ、と。

p270 石田ゆり子 解説


結局、私はスイスイ読めたので女友達の言っていることは分からなかった。(今度会ったら教えてね)

しかし村上龍がキューバ愛の合間にたまに挟んでいたメッセージはよく分かった。

〈『依存』はこの世の最大の敵である。〉

他者への依存は絶対に希望にはなり得ない。
貴乃花と宮沢りえの結婚がそんなに君の幸福なのかい?幸福の基準をメディアに決めてもらおうとするな。自分で考えろ。
それから、石田ゆり子の解説も良かった。
〈最大の依存、それは「自分が自分であることを諦める、自分への依存」なのではないだろうか。〉

3年前、本に出てくる「ガンボ」をもらった


女流作家と言われて腹が立った理由はまだハッキリしていない。
女性読者が多い作家がだめなのかというと、よく考えたらそんな訳ないだろう。

私は自分の書いた私小説に登場する「私」が依存体質であったことをすっかり見透かされていたのが嫌だったのかも知れないね…

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