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Let It Be ~流れのままに、しなやかに~

越膳こずえ(えつぜん こずえ)さん
出身地:札幌市
職業:通訳・翻訳家、ライター

ー 英国に来た経緯、理由は?
最初は語学留学で来ました。学生時代から主にビートルズ関連の翻訳の仕事をしていて、英語から日本語への翻訳をしていたのですが、英語をさらに学ぶことで日本語から英語への翻訳をできるようにして、活動範囲を広げたいなと思い、ロンドンに留学しました。もともとはニューヨークに住みたかったのですが、ジョン・レノンもまずはリバプールからロンドンに出て成功を収めてから、ニューヨークに渡っているということで、まずはロンドンにしようと思いました (笑)。

ー 英国での活動について教えてください
留学中は今のようにインターネットやSNSが発達していなかったので、こちらで出版されている雑誌や新聞からビートルズの最新情報を翻訳する仕事をしていました。ちなみに当時はFAXでのやりとりです (笑)。
アートやカルチャーを中心に、ビジネスを含め幅広い分野の翻訳・通訳者として活動しています。ジョンとヨーコの写真展のプロデュースやビートルズ関連の記事の執筆も手がけました。また、最近はS-AIRという札幌ベースのアート関連のNPOのお仕事をすることがあり、札幌と繋がっていけることをうれしく思っています。

BAFTA直前の「ディレクターズ・ラウンドテーブル」。オンラインで開催。濱口竜介監督の通訳を担当。パンデミック後は、このようなオンラインでの通訳が増加しています。

ー ビートルズとの出会いは?
洋楽好きの父親の影響が大きいと思います。ただ父はエルビス・プレスリーやベンチャーズが好きで、ビートルズファンではなかったのですが、私の中学の同級生や先生がビートルズ好きで、レコードやビデオなどを貸してくれて、そこからハマっていきました。ポール・マッカートニーのライブビデオの曲名を書き控えて、札幌の丸井今井近くの中古レコード屋で、その曲のレコードを買い漁ったことを今でも覚えています (笑)。

ー 「ビートルズ・ウォーキング・ツアー」なども企画されていましたが、その際のエピソードなどおしえてください
日本人のご家族(お母さんがビートルズファン。おばあちゃんと息子ともに渡英し、ツアーに参加)を、ビートルズがレコーディングしたスタジオがあるアビー・ロードの近くのポール・マッカートニーの自宅に案内したときのことなのですが、偶然車で帰宅したポールに遭遇しました!自分で運転して、大きな犬を乗せていました。ツアーで何度も来ていた場所ですが、まさか本人に会えるとは思わず、その瞬間は「もう、この仕事やめてもいい!」と思ったくらい興奮してしまいました (笑) 。ポールは、私もこのご家族の一員の思ったらしく、「わざわざ日本から家族で来てくれてありがとう」という感じで、気軽に握手にも応じてくれました。最後にポールが「Have a good time in London!(ロンドン楽しんでね!)」と言ってくれたのですが、感動のあまり「And you!(あなたもね!)」と返してしまったことは、赤面の思い出です (笑)。でも、なんとか挽回しようと「オッス!」と言うと、ポールが「オッス!」と返してくれ、今では皆に「私とポールはオッスの仲」と言いふらしています(笑)。

ー 英国の好きなところは?
春から秋にかけての気候。あと、パブ(PUB)ですね。
パブのお気に入りはたくさんあるのですが、ロンドン中心地のソーホースクエアの近くにある「The Toucan」というパブは、ギネスビールが美味い!20数年来の行きつけです。
このパブの近くには、ポール・マッカートニーの事務所があり、ポールも来店したことがあるようです。

ー 英国で苦労したことは?
独身・独居・フリーランスということで、全てを1人でやらなくてはならず、年齢的に体力も落ちてきて、時間のやりくりやライフスタイル一般で最近厳しいなと感じることが多いですが、おそらくそれは英国に住んでいなくても同じなような気がします。なので、正直あまり思い浮かびません!苦労を苦労と思わない性格なのかもしれませんね。苦労の度合いとか、自分がどう感じるかは他人と比べようがないかなとも思いますし・・・。
ロンドン生活が長くなったので、逆に札幌で迷子になったり、一瞬言葉に詰まったりということが多々ありますね。日本は私にとって、「言葉の通じる外国」のようです。

ー コロナ感染拡大、EU離脱などを経て、生活の変化や今後への期待などを教えてください。
パンデミック以前から言われていたことですが、機械翻訳などの発達もあって、通訳翻訳の業界は、今後は大きな発展はないと思っていました。それがこのパンデミックを経て私の中で明確になりました。これは決して悪いことではなく、いい意味で将来が見えてきたと思います。これからは何か新しいことに挑戦したり、別のプロジェクトなどに取り組みたいと考えています。

映画「アリータ:バトルエンジェル」ロンドンプレミアで、原作者・木城ゆきと氏を通訳。


ー 最後にご自身のPRを!
通訳/翻訳のお仕事は、お気軽にこちらにお問合せください。
PAW COMMUNICATIONS(ポー・コミュニケーションズ)

少し前になりますが、オノ・ヨーコの詩集「どんぐり」の翻訳を手がけました。心の滋養になるような一冊です。お手にとっていただけるとうれしいです。
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309276328/


☆ おすすめのビートルズ

巨匠ピーター・ジャクソン監督による「Get Back」は、アルバム「レット・イット・ビー」のセッションのドキュメンタリーです。ラストのルーフトップのコンサートはまさに圧巻。現在はディズニープラスで配信されています。
ビートルズ初心者には、ベスト盤がおススメです。「この曲知ってる!」、「聴いたことがある」といった曲がたくさん入っているので、世代を超えて、みんなで楽しめると思います


編集後記:
「気がつけば、ここまで来ていた感じなんです」と、まさにビートルズの名曲「Let It Be」を地で行く越膳さん。ロンドン生活のほうが、北海道にいた時間より長くなってしまったそうですが、パワフルで会う人たちに元気を与えてくれる越膳さんのオーラからは、道産子パワーを感じます!
「実は今でもニューヨークで暮らしてみたい」と思っているとの事。ご自身の感性に従い、流れに逆らわず、チャンスをつかんできた越膳さんですから、数年後にはニューヨークで活躍されていることでしょう。
越膳さん、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!




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