西村 文

日本の地名と風景をこよなく愛するartist。 ❝そこはか❞となく綴る地名のエッセイと…

西村 文

日本の地名と風景をこよなく愛するartist。 ❝そこはか❞となく綴る地名のエッセイと風景画集です。

最近の記事

ある地名の風景

新緑の参道ー小豆沢神社 azusawa-2 連休だっていうのに地名の話~?辛気臭ー そんな声が聞こえてきそう。 まぁ、その気持ちもわかりますが(笑) 前回お話しした「小豆が流れ出た」という ”小豆沢”についての説話ですが、 その他にもいくつか地名の起こりを伝える話があります。 ・飢饉の年に小豆が流れ着き村名とした。 ・洪水の時に米が流れ着き、村人は腐らないうちに 小豆を入れて赤飯にして食べてしまった。 これを聞いた米の持ち主が訴えたものの 村人の勝利となり、村の

    • ある地名の風景

      小豆沢の昼下がり azusawa ここは東京の板橋区と北区の境界を流れる新河岸川の河畔。 とても天気が良く、日差しはちょっと強いのですが 乾いた風が心地よい日です。 対岸が北区、こちら側は板橋区。 そして私が立っているのは”小豆沢”という町名です。 ”小豆”と書いて「あずき」ですが 町名は”小豆沢”と書いて「あずさわ」です。 新河岸川は荒川の支流として江戸時代からあったらしいのですが、 大正から昭和にかけて本格的に整備されたようです。 荒川には古くから大小の入

      • ある地名の風景

        桜散る、おとめ山の緋鯉 otomeyama 神奈川の箱根に”乙女峠”という地名があります。 昔、バイク乗りの友人が、週末になると 「乙女峠をせめる」なんて話していました。 ”乙女”が付く地名は全国にあります。 栃木の小山市・大分の宇佐市に”乙女”、 滋賀の高島市に”乙女ヶ浜”、山梨の牧丘町に”乙女高原”、 奈良の河合町に”乙女山古墳”・・・ 若い女の子を連想しがちですが この”乙女”いった何でしょう? 前回の”落合”周辺をうろついていて見つけたのですが 実は都内

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          落合の夜桜 ochiai ここは妙正寺川流れる 西武新宿線下落合駅の近く。 ちょっと前に 新宿区の中井の回で”落合”に触れました。 落合という地名は特に珍しくもなく全国にあります。 川や道の合流点につく地名ですが 新宿の落合は神田川と妙正寺川が落ち合っています。 知ってはいたのですが どこで合流するのか実際に見たことがなく、 今回確かめてみました。 しかしなんと、現在の合流点は 下落合の隣の街、高田3丁目ではありませんか! 下落合の駅からだと1.5キロ近く離

        ある地名の風景

          ある地名の風景

          雪谷の円長寺に紅い花 yukigaya-2 もうすっかり春だというのに 雪の話で申し訳ありません(笑) 大田区の”雪谷”といい、鎌倉の”雪の下”といい なんとも情緒あふれるきれいな地名です。 語源や由来がどうであろうと これはこれで、地名の魅力だと思うのです。 もちろん文字のきれいな地名ばかりではありませんが どうしても漢字の持つ意味が その土地を印象づけてしまいます。 昨年でしたか、岡山の大学が お寺に伝わる「人魚のミイラ」を科学的に調べた結果、 精巧な作り

          ある地名の風景

          ある地名の風景

          池上線に揺られながら今日も帰る私なの-雪谷 yukigaya もうずいぶん前、「池上線」という歌がありました。 タイトルはその一節。 5~6年前、これを歌う西島三重子さんが 「小室等の新・音楽夜話」に出演されていて 久しぶりに聴きました。 まぁ、分かる人には分かる、懐かしい人には懐かしい(笑) ここは池上線雪が谷大塚駅のあたり。 小田急線や京王線などと違い池上線は3両編成。 なんだかとてもかわいらしい電車です。 前回、前々回の久が原を訪ねて もう一つ気になった

          ある地名の風景

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          久が原の道、色・ホワイトブレンド kugahara-2 絵はポップだし タイトルもどこかで聞いたよーな・・まぁ、春ですから(笑) この道は久が原の住宅街です。 碁盤の目状の街区で、こんな真っすぐな道が特徴的です。 散歩するにはちょっと単調ですね。 あまりキョロキョロすると不審者ですし(笑) 明治初期に作られた地図を見ると 直線道路が交差する久が原の中央部は ほとんどが畑だったようです。 どうりで・・ 久が原は、 昔は「久河原」「久川原」などとも書かれたようです

          ある地名の風景

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          久が原に春風舞う kugahara ここは大田区久が原の小さな公園。 心地よい風とちょっと眩しい日差しはもうすっかり春。 平日のせいか、 走り過ぎる池上線のほかは何とも静かな午後です。 井の頭線が走る杉並区には”久我山”という地名がありますが ここは似ているようでちょっと違う”久が原”です。 私はしばらく”ひさがはら”だと勝手に思っていましたが ”くがはら”だと知り俄然来てみたくなりました。 杉並の久我山と比べてみたいと思ってのことですが 来てみたところで何も

          ある地名の風景

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          妙正寺川にたなびく-中井 nakai 練馬に用事があり、その帰りに大江戸線の中井で途中下車。 こんな風景に出会いました。 とはいっても、「染の小道」なる年に一度のイベントです。 新宿区の中井、落合のあたりは 江戸時代の手描き友禅や小紋などの技術が今でも息づき、 戦後は京都や金沢と並ぶ染物の産地だったそうです。 そうした歴史を絶やすまいと街をギャラリーに見立て、 2月23日から三日間、さまざまな催しが開かれていました。 街を流れる妙正寺川は神田川の支流で、 杉

          ある地名の風景

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          春まだ遠し鬼子母神ー雑司が谷 zoshigaya-2 雑司ヶ谷鬼子母神の境内には 都内でも一二を争うイチョウの巨木があります。 私もいろいろ見てきましたけど、あれは見事です。 今は冬枯れなので、この絵には入ってませんが(笑) ところで、前回の”千登世橋”ですが ”千歳”という言葉があるので 単純に縁起の良い意味で付けた名前だと思っていました。 でもよくよく調べてみると 明治のころ、あの一帯は”高田千登世町”という町名でした。 そこからとったんですね。 その由来

          ある地名の風景

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          雑司が谷の千登世橋 zoshigaya 江戸っ子の言葉遊びに 「恐れ入谷の鬼子母神」というのがあります。 「恐れ入りました」を 地名の入谷(台東区)に引っ掛けたシャレです。 毎年、七夕のころに朝顔市が開かれる入谷界隈ですが、 真源寺というお寺に、その鬼子母神が祀られています。 そして江戸にはもう一つ、 有名な鬼子母神堂が雑司ヶ谷にあります。 これは近くにある法明寺持ちのお堂ですが、 境内の広さといい拝殿の大きさといい お堂というより別個の寺院です。 そもそ

          ある地名の風景

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          新井薬師に陽のあたる午後 arai ここは東京中野区にある新井薬師。 西武新宿線にその名の駅があります。 ちょっと聞くと 足立区にある西新井大師と間違いそうになるのですが、 こちらは薬師様、あちらはお大師様(弘法大師空海)をおまつりしています。 どちらも”新井”がつくせいでちょっと紛らわしいですね。 新井薬師は通称で、本当の名は梅照院という真言宗のお寺です。 目の病気や子育てに霊験あらたかなそう。 新井薬師のあたりは中世から新井村だったようです。 この”あらい

          ある地名の風景

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          代官山のふたり daikan-yama-2 なんだか頭も足元もヘン? 実はこの”ふたり”、路地裏に並べてあったマネキン・・ ではなく、洋服スタンド。 代官山にはこんな小さなショップが多いのです。 そういえば、ずいぶん昔 ”ハウスマヌカン”という言葉がありました。 いつの間にか聞かなくなりましたね。 渋谷の”代官山”は 文字通り江戸時代の代官所が管轄した雑木林の高台。 明治時代に創刊した日本初のグラフィック雑誌「風俗画報」には 「渋谷川並木橋より鉄道踏切を越えて、

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          代官山に冬色の・・ daikan-yama 最近のニュースで 東京の昭島市に”代官山”という町名が誕生する・・ そんな話を聞きました。 「渋谷の代官山に比べられて恥ずかしい」 「おしゃれな町名でよかった」など 地元にもいろいろな感想があるようです。 なんでも、”代官山”はもともと地元の小字(こあざ)で、 まさか渋谷にあやかろうなんて思いはなかったはずです。 古い地名を復活させるなんて素晴らしい。 郷土史を伝える一助になります。 それにしても”代官山”と聞いただ

          ある地名の風景

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          北上川に降る雪 kitakami-3 盛岡はとても寒い町です。 雪はそんなに多くないのですが、朝の最低気温は北海道なみ。 日中でも零度のこの日、 夕顔瀬橋の上から北上川を眺めていました。 町の中を川が流れているのはとても風情がありますね。 降り出した雪が冬の旅を演出してくれます。 北上川の旅もだいぶ上流に来ました。 このあたりも古代は”日高見国”だったのでしょうか。 奈良時代の地誌「常陸国風土記」(ひたちのくにふどき)では ”日高見”を”常陸”の古い名称だと

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          朝焼けの弧船ー北上川河口 kitakami-2 北上川には河口が二つあります。 一つは元々の流れの石巻湾。 もう一つは、洪水対策のため 途中から新しく東へ河道を作ったので追波(おっぱ)湾です。 この追波湾のあたりは 現在は石巻市ですが、合併する前は北上町でした。 ここにも”北上”があります。 川の名はたいてい流域の地名をとるものですが 北上川はどこの地名をとったものでしょう。 その他にも北上山地、北上盆地などなど。 ”北上川”が初めて文献に現れるのは 鎌倉時代

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