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Letter to ME

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自分へ贈る日々の備忘録
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#日記

中秋の名月

今日は中秋の名月だそうだ。自宅の駐車場に車を止めて、顔をあげるとうす雲がかかった満月と目があった。ほぼ真っ白の、丸い、月だった。液晶の人工的な白さばかり見つめた目に、優しい白さはよく沁みる。

いつか私が傷つけた友人も、今、孤独にさいなまれている恋人も、見ているだろうか。この月を。

携帯で撮影しようと思って、鞄をさぐったのだが、どうもばからしくなってやめた。暗闇でぼんやり光る液晶を見ている、自分

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朝が眩しいから

朝が明るくなった。朝の光、色、空気、音、全て、この間までの寒い空気や暗い色を払拭して、あっという間に明るい、夏のすべてを朝が背負って持って来た。夜は、まだ春が名残惜しいのか、夏の前の最後の悪あがきのように肌寒い風を窓から押し込む。
朝が眩しいと、起きたはなから少し悲しい。置いてきぼりにされたように思ってしまう。朝が眩しいと、力が全部持っていかれてしまうように思う。季節の変わり目に、どんどんついて行

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300日の命

姉が妊娠している。女の子。今月か来月には生まれるそうだ。
赤子は10か月間、母親の腹の中で大きくなる。その不可思議なこと。腹が大きくなった姉は姉だが、姉ではないように思う。私は女として生まれてきたものの、自分もあのように腹を大きくして、自分とは別の命を自分の命とともに体に宿すということが、全く理解できない。実は少し、妊婦は苦手だ。怖い。

昔、国語の授業で「I was born」という詩を読んだ。

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エナメルの靴

ひょんなことで地元の大きな病院に行った。日中、まだ新しい病院は混んでいて、いろんな年代の男女がみな呆然としたように待合室に並んでいる。まだ少し寒いからか、厚手のコートを羽織る人が多く、みな一様に暗く落ち着いた衣服を身につけていた。マスクをしてうつむいている。皆がみな、体のどこかに不調をかかえていたり、病魔におかされていたりするのだと思うと、気が滅入る。穏やかな気持ちになるようになのか、生成りのカー

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見ている方は少ないと思いますが、このnoteで書き溜めた随想を三月にまとめて本にする予定です。
その際、書下ろしで新たに何か書きたいと思うのでテーマを募集しています。
よければコメントやメールで寄せていただけると嬉しいです。

walk in line

先日の雪の日、交通機関がダメになってしまったので職場まで歩いて行った。

前の日に雪が降るとキャスターたちがやかましくいうので、早起きをして厚手のズボンに厚手の靴下を履き、ムートンブーツを履き、タートルネックのセーターにウールのカーディガンを着てダウンコートまで羽織った。玄関の重い扉を開けると雪の匂いと冬の匂いが一緒にやってきて、収縮した毛穴がみっちりとなくなる。
視界に映るのはただただ白い雪だっ

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Will you go out with me?

デートがしたい。やっと暇ができたので秋の服を見に行ったら、だんだんとそういう気持ちが沸き起こってきて、いてもたってもいられなくなってきた。デートがしたい。別に、この際異性でなくてもいい。友人でもいい。誰かと一緒にのんびり過ごしたい。でも、やっぱり、できればデートがしたい。

デートの良いところは、その人のことを考えて服装や化粧やアクセサリーを選ぶことだろうと思う。こういう、「女性特有」の話をすると

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