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夫婦にならない

 A保育園の2歳児クラスは集団を小さくするために2部屋に分けている。子どもはそれぞれ10名ずつ。一方はみかん組、男性の保育士2名が担任。もう一方はぶどう組、女性の保育士2名が担任。4名とも保育士になって4年目から6年目である。
 
 2つの保育室はトイレでつながっていて、面積も作りも、採光も、ほぼ同じ。しかし、いつもきれいな保育室といつも雑然としている保育室と、一歩お邪魔しただけですぐに違いが分かるほど、様子が異なる。
 いつもきれいなのは、みかん組だ。そして、みかん組の子どもたちは、落ち着いている。この子たちが1歳児クラスから2歳児クラスになるとき、安定している子どもを選んでみかん組にしたわけではない。

 4月1日、男性の保育士2名という配置を知った保護者の中には、不安や疑問を訴えた者もいた。

 
 保育はチームでおこなう。しかし、子どもの育ちを保障する人的環境として適切な関係性を他の保育士と築ける保育士は、多くない。保育士はたいてい、どのクラスを持つか、何歳児を持つか、ではなく、誰と組むか、なのである。

 「保育」する2人は、油断すると上手くいっていない夫婦のようになって、子どもを不安定にさせ、自分たちも苦しくなっていく。子どもたちを育てるために、食べさせて寝かせて排泄させて、掃除して、受け止めて、励まして、2人で互いに労り合って、まるで子育て中の夫婦の日常のようだが、そうではない。生理的欲求を満たす、不快を快に変える、環境設定をする、子どもと愛着形成をする、アセスメントして計画をたてて、チームで実践する専門職である。

 男性か女性かというより、子どもが安定する「おうち」を作るチームをつくれるか、である。

 
 


 

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