見出し画像

読書メモ:イノベーションは日々の仕事のなかに

基本情報

『イノベーションは日々の仕事のなかに 価値ある変化のしかけ方』
パディ・ミラー、トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグ 著
平林荘 訳
2014年9月20日 発行

ここ20年ほどの日本経済の状況をよく「失われた20年」とよび、企業でイノベーションが起きなかったことが原因と言われている。確かに薄型テレビ、iPhone等、海外企業で生まれた革新的な製品はあるが、ここ20年ほどでパっと日本企業から生まれた世界的な製品があまり思い浮かばなく、むしろガラパゴス化してしまったということの方が印象に残っている。(全くないわけでもないと思うが)
そもそも「イノベーション」とは何か?また、普段人事という業務をしていて、なかなかイノベーションが起こるような場面、機会に出くわすこともなく興味があり、手に取った一冊である。

構成は、原文が英語ということもあり結論から入り、具体化し、ポイントを挙げ、職場のリーダーがどのようにイノベーションを起こせる環境を作っていくかがまとめられている。

構成

序章  日々の仕事のなかでイノベーションを起こすには?
第1章 フォーカス 真に重要なことに焦点を絞るには?
第2章 外の世界とつながる 影響力のあるアイデアを生み出すには?
第3章 アイデアをひねる アイデアに磨きをかけるには?
第4章 アイデアを選ぶ 本当に価値のあるアイデアを選別するには?
第5章 ひそかに進める 社内政治をかいくぐるには?
第6章 あきらめない イノベーション追求のモチベーションを高めるには?

感想

当初読みたかった本とは若干内容は異なっていたが、非常に勉強になる本だった。本書では、イノベーションを「昨日までとは違う行動によって、成果を生むこと」と定義し、職場管理者・リーダー向けに書かれている。
確かに冒頭で触れたような製品を作ることをイノベーションと捉えることが多いが、多くのサラリーマンにとってそのような機会よりも日々業務に追われ、新しいことに挑戦することもままならないのではないかと思う。

著者はリーダーが行うべきことは、以下の5つ+1を提唱している。
①フォーカス
②外の世界とつながる
③アイデアをひねる
④アイデアを選ぶ
⑤ひそかに進める
そして、あきらめない

部下が成果を生むための環境を整えるために、課題・テーマに関してリーダーがある程度絞り、出てきたアイデアをブラッシュアップしていくことを謳っている。
著者のパディ・ミラーはスペイン・バルセロナの教授なのだが、①~⑤の中で、特に「⑤ひそかに進める」が印象的な章であり、意外な章でもあった。第5章では、リーダーの仕事として「社内政治」をうまく行うことが求められており、日本でいういわゆる「根回し」である。出てきたアイデアに対して、予算をつけてもらったり、つぶされてしまわないように社内有力者とやりとりして軌道に乗るように取り計らうのが、リーダーの仕事だと著者は説いている。

イノベーションの本で、根回しが大事というのはとても意外だったが、事前のネゴシエーションの重要性は世界共通ということなのだろう。そして、確かにどんなに優れたアイデアであっても、社内政治によってうまくいかないことがあり、歴史的な具体例を取り上げて説明がされており、とても説得力のあるものである。

日本でも昨今、リスキリングや人的資本経営が叫ばれており、賃金含めた人への投資は非常に重要だと思うが、言葉に踊らされてしまう前に失われた20年の日本全体の分析に加えて、各企業でも反省や課題の洗い出しが必要ではないかと自戒も込めて思わされた一冊だった。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?