ー　この能力って『超能力』？　ー

私は運気が良いと、ある現象が起こる。


たとえば…
昔流行った音楽を思い出し口ずさんでいると、
テレビでその歌手の音楽や映像が流れたり、
ご本人が出てきてその曲を歌いだす。

はたまた、母と今日の晩御飯の献立を考えていて、
“じゃあ、ハンバーグにしよう！”と話していると、
夕方の情報番組で、“美味しいハンバーグの作り方”
が放送される。

あとは、お客が誰一人といない店に入り買い物していると、どんどんお客が入ってきて店内が混雑する。


この能力って、『超能力』？

いや、超能力というか予知能力…かな？


でもこの能力が役に立ったことはほぼない。

ただ単に、
「さっき話してたらテレビでやってる〜！」
ってなるだけ。

「誰もいなかったのにお店すごい混んできたね〜！」
ってなるだけ。

どうせなら、もっと役に立つ能力が良かったのに…


それに、運気が悪いと全く機能しなくなる。

年単位で機能しなくなる時もある。


そんな運気の悪い、超能力が機能しない時期に、
私は結婚をした。

運気は悪くとも、幸せを夢見て結婚した。


そして…
幸せに結婚生活を過ごしていた…
はずだったのに…

「そういえば結婚してから、
　超能力発揮されてないなぁ…」

運気悪い時期に入っちゃったのかな？

結婚すると機能しないとか？

超能力自体は大した能力じゃないから、
別に機能しなくたっていいんだけど…

運気が悪かったせいか、
ただ相性が合わなかったせいか、
なんだか結婚生活も上手くいかず…



結婚して3年後、私は離婚した。




***




母といつものように今日の献立を考える。

「今日はとんかつにしよっかー」

「“本日は、穴場のとんかつ屋さん特集です！”」

いつものように、テレビで放送されている。


「あ、運気上がってきたかもな〜」


…にしても、『“超”使えない“能力”』だ。


普段の予知能力なんかより、
一生幸せな結婚生活を送れる相手を予知しておくれよ〜
超能力さーん！

“そこは自分で頑張れよー”とか言わないで〜
超能力さんよ〜ぅ！


「それはそうと、もし結婚している間だけ機能しなかったんだとしたら…」


もしかして彼の名字に変えたから？

画数変わって運気が変わっちゃった？

夫婦別姓だったら変わらず超能力発揮できたのかなぁ〜？

***




「あなたは　病める時も　健やかなる時も　富める時も　貧しき時も　妻として愛し　敬い　慈しむことを誓いますか？」

「はい　誓います」

「あなたは　病める時も　健やかなる時も　富める時も　貧しき時も　夫として愛し　敬い　慈しむことを誓いますか？」

「はい　誓います」

「それでは誓いのキスを」

「皆さま　おふたりに祝福の拍手をお送りください！」

「おめでとうございます！」


パチパチパチパチ



友人Ａ「にしても、珍しいよね〜！」

友人Ｂ「でも今どき、結婚するからって同じ名字に
　　　　しない人も増えてるから、いろいろな
　　　　結婚の形があることはいいことだよね〜」

友人Ａ「確かにね〜。だけど、“夫婦別姓”とか、
　　　　“異性婚”“同性婚”とか、わざわざ表現を
　　　　分けること自体が結婚のハードル上げてる
　　　　気がしない？」

友人Ｂ「本当そうだね。誰が、どういう形で結婚
　　　　したって、“結婚”でいいじゃんね〜！」

友人Ａ「でも、そう言っておきながら私たちも…
　　　　ユズハの旦那さんが、ユズハの名字に
　　　　なったことを“珍しいね〜”とか言ってる
　　　　時点で、まだまだ考え古いっていうねww」

友人Ｂ「ほんとだーまだまだ頭固いね〜ww」

友人Ａ「ユズハの家、お兄さんいるから跡取りとか
　　　　関係ないのに、旦那さんが婿入りするって
　　　　特殊な感じがしちゃって…」

友人Ｂ「ふたりには、ふたりにしか分からない、
　　　　何かしらの思いがあったんだろうね！
　　　　さすが、ユズハは時代を先取りしてるわ」



こうして２度目の結婚をした私。


私が彼の名字を名乗るわけではなく、
夫婦別姓にしたわけでもなく、
彼が私の名字を名乗ることとなり、
友人Ａ、Ｂにこんなにも賞賛されてしまった。


これは想定外の好感度アップだ！（やったー）


が、しかし。

ただ私が、例のあの『“超”使えない“能力”』を
機能させたかっただけ。

そして彼が、それに賛同してくれただけ。


つまり、賞賛されるべきは彼だ！


こんな正直どうでもいい、
『“超”使えない“能力”』のために二つ返事で、

「名字、俺が変えてもいいよ！（ニコッ）」
と言った彼が、一番好感度上がるべき！

でも、ありがとう！

私の気持ち理解してくれてありがとう！

私の好感度も上げてくれちゃって本当にありがとう！

***

「俺、明日焼肉食べたいんだけど〜！」

「いいねーどこ行こっか〜？」

「“本日は、明日行くべき！おすすめの焼肉店特集〜！
　市内の人気店をご紹介します！”」

「あ！相変わらずいいタイミングで放送してるね〜」



彼にも、『“超”使えない“能力”』が備わったらしい。






○  おわり  ○