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たとえ何ひとつ無くなっても

ホームレス、と一言で片付けてしまえばそれまでなのだが、
世の中には、住む家も、身分証も、携帯電話も、お金も、何ひとつ持たないで福祉関係機関に保護される人がいる。

それは、本人の意思でそうなっている場合もあるし、そうではない場合もある。
家族との関係悪化で家出の場合、虐待やDVなどがこれである。
自分の意思というより、我慢を重ねての結果こうするしかなかった。こうなってしまった。というほうが正しいかもしれない。

本人の意思でホームレスになる場合、触法も多い。
自暴自棄または生きるために法を犯す。孤独や貧困の背景があり、自分の意思でというより社会がそうさせたとも見えるが、罪は罪。

自分の意思がどうかもわからない場合、例えば認知症などによって徘徊してるうちに、見ず知らずの土地にたどり着き、名前も住所も言えない、思い出せない、記憶障害など。
身元不明者保護施設に入所する数も増加している。

私は仕事やボランティアで、このような事情を抱えた人たちの支援をしている。

どこの誰だかわからない人の、まずは住む家を支援する。
保証人もいないし、保証会社も通らない。
普通の不動産屋は貸さない。だが、誰かが受け入れなければ彼らは生きていけない。

受け皿的なNPOの手伝いをするようになってから驚くことばかりだった。
この時代に、スマホひとつ持たない。
未納金のために携帯契約できない。
身分を証明できるものを持たない。
銀行口座もない。
家族から縁を切られ、または縁を切りたくて、
仕事も続かず、続けられず、野宿または知人の家に身を寄せ、逃げるように、隠れるように、
社会から溢れて生きる人たち。

先日、私が支援を担当している女性がようやく運転免許証の再発行を終え、就労支援が可能となった。

運転免許証の再発行には身分と住所の証明できるものが2点必要だった。
携帯電話の契約も銀行口座が必要。
銀行口座の開設には連絡先(電話番号)が必要。
堂々巡りで手続きが進まなかった。
マイナンバーカードは、申請した過去があったため再交付できた。
もし、この糸口がなかったら、
彼女はどこの誰かわからず、
スマホも仕事も持てなかった。

決して他人事ではない。
明日は我が身かもしれない。
このような人たちを生まない社会、
救いの手を差し伸べる社会を強く願っている。

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