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特権に無自覚なマジョリティ

特権性、英語ではPrivilege(プリビレッジ)
皆さんは耳にしたことがありますか?

初めて聞いたという方も多いかと思いますが、DE&Iをより理解し、DE&Iに関するさまざまな取り組みに共感、納得感を持てるようになる。そんな概念だと、私は思っています。

読んでいただきたい方
・DE&Iはマイノリティの問題と考えている
・DE&Iに関心はあるが、偽善と思われるのが
 不安で動けなくなっている
・DE&Iに関心があり、知識を得たい

もちろんこの文章を読んで、理解できない、納得できない方もきっといると思いますが、こういった考え方がある。ということを知っていただけるだけでも、私は嬉しいです。

※本文は多くを上智大学教授の出口真紀子先生の著書、記事を参考にしています


特権とは

ここでお話しする特権性とは、アメリカのいわゆる社会公正教育の文脈での“特権”(privilege)で、「マジョリティ側の属性を持っていることで、労なくして得ることができる優位性」です。

たまたまマジョリティ性を持った側に属していることで、マイノリティ性に属する人よりも、社会構造の中で優遇されていることを、「特権性がある」といいます。

マジョリティ性とは

「マジョリティ性」とは多数派という意味ですが、ここでは数の多さではなく、より多くのパワー(権力)を持っている側を指します。

皆さんもご自身がどのマジョリティ性を持っているか確認してみてください。

東京人権啓発企業連絡会 広報誌「明日へ」寄稿記事

このチェックリストは日本社会におけるマジョリティ性とマイノリティ性を示していますが、日本人もアメリカに行けばマイノリティ側になるように、社会が変わればマジョリティ性とマイノリティ性も変化します。

マジョリティ側の特権

マジョリティ性に多くチェックが付く方は社会の中でも特権を有している側に属しています。
そしてマジョリティ性を有している項目の観点で社会で自動的に受けることができる恩恵があると言えます。

例えば、マジョリティ側の人はTVや新聞で自分と同じ言語、人種の人を容易に見つけることができる、大学進学が当たり前の環境で育った、結婚ができてかなりの確率で祝福してもらえる、職場に同性のロールモデルがいる、など。自分の努力に関わらず恩恵を得ています。

逆にマイノリティ側の方は、人種的な容姿の違いで差別される、日本人なのに「日本語上手ですね」と言われる、愛する人と結婚ができない、夜人気のない道は避けて通るように注意する、地下鉄の駅など利用する際にエスカレーターやエレベーターの有無を事前に確認する、など。マジョリティ性の人は気にしなくてもよいことに、嫌でも向き合わなければいけません。

もちろん、属性は無限にあるので、誰もが何かしらのマイノリティ性とマジョリティ性を有しているのだと思います。

志望大学に合格できたのは特権だけじゃなく、努力して勉強したからだ!と思う方もいるかもしれません。勿論努力なしには決して成し遂げれないことは事実です。ただ、そもそも大学進学に理解を示してくれる両親、勉強に集中できる家庭環境があったならば、その環境がなかった人に比べると恩恵を受けていた、と感じられるのではないでしょうか。(こんな話が『これからの「正義」の話をしよう』にもあった記憶)


マジョリティ性が自動的に受ける恩恵=特権性は、マジョリティ性の人自身では気が付きにくいことが多いです。出口先生は「自動ドア」に例えています。超分かりやすいです。

特権とは、ゴールに向かって歩き進むと次々と自動ドアがスーッと開いてくれるもの、と考えればわかりやすい。自動ドアは、人がその前に立つとセンサーが検知して開くが、社会ではマジョリティに対してドアが開きやすいしくみになっており、マイノリティに対しては自動ドアが開かないことも多い。マイノリティはドアが開かずに立ちはだかるため、ドアの存在を認識している。
しかし、マジョリティ側はあまりにも自然に常に自動ドアが開いてくれるので、自動ドアの存在すら見えなくなってしまう。特権をたくさんもっていても、その存在に気づきにくいため、マジョリティ側は自分に特権があるとは思っておらず、こうした状況が「当たり前」「ふつう」だと思って生きているのである。

東京人権啓発企業連絡会 広報誌「明日へ」寄稿記事

特権を自覚するメリット

ここでは、決してマジョリティ側に属している人に対して無意識のうちに特権を得ていたことを反省したり、罪悪感を持って欲しいわけではありません。
むしろ、自身の特権性を自覚して、それを特権のない人たちのために活用するきっかけにしていただきたいのです。

自らのマジョリティ性を自覚することで期待できるメリットを3つ挙げます。

①マイノリティの課題を自分ごと化できる

マイノリティの人が課題を抱えていても「大変そうだな」で終わるのではなく、「自分はその課題に直面しなくていい特権がある」と自分が無意識に受けている恩恵の形に捉えることができます。ここからマイノリティの課題感や社会構造について思いを馳せるきっかけになります。

東京人権啓発企業連絡会 広報誌「明日へ」寄稿記事


②DE&Iの取り組みに納得/肯定感を持てる

女性活躍推進やLGBTQなど一部の人だけに施策や制度が注力されることが納得いかない、という方もいると思います。まず、自分自身がマジョリティ側としてこれまで無意識のうちに恩恵を受けていたこと、を理解できれば、マイノリティ側に対する取り組みに納得感や肯定感を持つことができるのではないでしょうか。

③DE&Iの取り組みに関わる自信がつく


元々DE&Iに関心はあったが、当事者でもないのに偽善的と思われないか、といった不安を感じている方は、自身の特権性を自覚した上で「アライ」としてマジョリティ側もマイノリティ側も生きやすい社会を作っていくことができます。

ここでいうアライとは、マジョリティ集団の一員でありながら、マイノリティ集団への差別や不公正に対して異議を唱え、行動を起こす人々のことで、例えば、白人が人種差別に反対する、男性が性差別(セクシズム)に反対する、日本人が在日コリアン差別に反対するといったことが挙げられます。
すべての人をアライにすることは不可能ですが、アライの数が増えることで、誰もが声を上げやすくなる社会が実現できるのではないでしょうか。

東京人権啓発企業連絡会 広報誌「明日へ」寄稿記事


偽善的な活動ではなく、自分が特権を持っているので、その立場を活かして、社会を良い方向に変えようとしているのです。

米国でもペギー・マッキントッシュさんが『白人特権』を提唱して初めて、白人は白人の特権に向き合いましたが、実はそれ以前からずっと黒人は声をあげていました。でも、白人は白人の言うことしか聞かなかった。だから、“特権”を持つ側が声を出すことがすごく大事です。

あなたは優位な立場かもしれない 気づきにくい“特権”とは



最後に

出口先生の言葉を引用しつつ。焦らず、日々意識しつつ、これまで見えていなかった「自動ドア」を考えてみる。そんなことから始めれるのではないでしょうか。

自分の特権に自覚的になることは、時間はかかるが、意識していると少しずつできていくものだ。焦らず、マイノリティの声に耳を傾け、彼らに見えていることは自分には見えていないことが多いだろうという謙虚な気持ちでいることが大切である。差別の問題を自分ごととして捉え、自分自身を変えていかなくては、と考えることが、真のダイバーシティを実現するための鍵となる。ぜひ仲間と共に一歩を踏み出してほしい。

東京人権啓発企業連絡会 広報誌「明日へ」寄稿記事


自分は特権を活かして、何ができるだろう?
と考えるきっかけになれば幸いです。

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