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オランダアートひとり旅#03.ファン・ゴッホ美術館①~企画展は家族の物語~

 見事な色彩感覚と大胆な筆使いで西洋美術史に多大な影響を与えたポスト印象派の巨匠、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)。

 世界最多のゴッホ・コレクションを所蔵するファン・ゴッホ美術館(Van Gogh Museum)では、《ひまわり》《じゃがいもを食べる人々》《画家としての自画像》《黄色い家》など、数多くの傑作を楽しむことができます。

 美術館へは、朝9時の開館に合わせて行きました。

 チケットは前もってサイトで購入。その後に送られてくるバーコード、またはQRコードを見せて、入館します。チケットはスマホ画面でも読み取れるので、紙に印刷する必要はありません。ただし記載されている来館時間から30分以上遅れると入館できなくなるため、注意が必要です。

企画展:Choosing Vincent - Portrait of a Family History

 1973年に設立され、今年で50周年を迎えた美術館では、ゴッホゴッホの弟・テオ(Theo van Gogh, 1857-1891)、テオの妻・ヨハンナ(Johanna van Gogh-Bonger, 1862-1925)、そして、テオとヨハンナの息子でゴッホの甥・フィンセント(Vincent van Gogh, 1890-1978)のそれぞれの「決断」に注目した企画展を4月10日まで開催しています。

15歳のテオと19歳のゴッホ(1873年当時)

 ゴッホ美術館は、画商だったテオが蒐集・保有した作品が基となっています。

 テオは、経済的にも精神的にも、最期までゴッホを献身的に支えました。しかし1890年にゴッホが亡くなると、その翌年、もともと病弱だったこともあり、兄を追うようにして33歳の若さでこの世を去ります。

《療養施設の庭の噴水(Fontein in de tuin van de inrichting)》1889年

 結婚して2年も経たないうちに夫を失ったヨハンナ(通称ヨー)。

 残された幼子と多数の絵画を目の前にして、彼女の辛労辛苦は相当なものだったことでしょう。それでも、ゴッホの才能を強く信じ、画家として成功することを願ったテオの夢を引き継ぐ決意をします。

 ヨー曰く、《療養施設の庭の噴水》はテオが最も愛したゴッホ作品だったとか。そのため、彼女は決してこの絵を売ろうとしなかったそうです。

《花咲くアーモンドの木の枝》1890年

 ヨーの没後は、甥のフィンセントがコレクションを相続します。

 エンジニアとして人生を歩んでいたフィンセント。特に1945年以降になると積極的にゴッホ作品の保存に尽力します。オランダ政府との合意のもと、1960年にはフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立、2年後にはコレクションを寄託します。これに伴い、政府が美術館を建設し、だれもがゴッホの名画を鑑賞できる環境を整えました。

 《花咲くアーモンドの木の枝》は、フィンセントの誕生を記念してゴッホが贈った絵画です。企画展では、最初にこの傑作が訪問者を迎えてくれます。

◇◇◇◇◇

 鑑賞時間は、じっくりと見て1時間程度。

 現代でもこうしてゴッホ作品を味わうことができるのは、画家としての彼の才能を信じ、人生を掛けて支援した家族がいたからこそ。そしてその想いは、子孫を含む後世の人々に受け継がれているのだと感じる展示でした。

 実際の企画展の様子は、こちらの動画でご覧いただけます。


 常設展は次回に続きます。

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