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40代の転職が可能になった原因は人口動態である・・・少子化は良いこともあるという話

 少し前まで転職は35歳が限界という説があった。この歳を超えて転職すると前職と同じ待遇はまず臨むべくもなく、年収300万のブラック企業に行かざるを得ないというものだ。

 ところが最近は40歳辺りにあっても転職が可能な時代になっているらしい。40代後半となると以前と同じような社会的転落が待っているが、年限は少し伸びたようである。

 この変化が起きた原因は少子高齢化であり、ベビーブームの終焉である。日本の過去の出生数を示したグラフを見てほしい。

 現在50前後である、1970年代生まれは他の世代に比べて人数が多くなっている。したがって、この世代は元々競争相手が多い。需要と供給の関係で職にあぶれたり、不利な条件で働かざるを得ない人が続出した年代だ。いわゆるロストジェネレーション・氷河期世代である。この年代は人が余っているため、運良く大企業のイスにありつけた者も一度その特権を手放してしまえば奈落の底だ。

 ところがその下の1980年代半ば以降に生まれた年代となると、話が異なる。この年代は急速に子供の数が減っていったため、競争相手は少ない。むしろ労働力不足が始まる年代だ。したがって、現在の40前後の人々は少子化の恩恵を受けて転職が容易になっているのである。

 ロスジェネに関してはこれまでも幾度となく議論に上っている。この世代は大学受験も就活も厳しく、辛酸を舐めてきた。これは必ずしも景気失速だけが原因ではない。同年代の人数が多すぎるのが最大の原因だ。今後日本の年金が枯渇し、介護難民となるのもこの層だろう。

 子供が増えるのは良いことだという固定概念が日本を覆い尽くしている。確かにこれは間違いではない。ただし、この意見は統治者や経営者の見方に偏っている。子供が多いと企業は安く労働力を買い叩けるので利益になる。ところが当事者にとっては溜まったものではない。大企業正社員のイスを勝ち取るのが非常に難しいし、仮に勝ち取れたとしても会社に対して強く出れなくなる。

 これからの日本は人口減少が始まるので、今よりもゆとりある社会になる。教育や就職は終わりなき競争という側面が薄くなり、純粋な社会貢献へと変わっていくだろう。経営者に優しい国から労働者に優しい国へと日本は生まれ変わっていく。最近の企業のホワイト化もその一環だ。

 日本の論者は何故か政府や企業の目線でものごとを見がちだ。しかし、日本人の大半は雇われなので、違った目線で見る必要があるだろう。市場は縮小するが、それ以上に労働人口が減少するので労働者は得をする。氷河期世代はまだ日本の人口が多かった頃のマイナス面を象徴する最後の世代になるに違いない。

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