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M&Aを検討する前に考えるべき選択肢 ~養子承継のメリット・デメリット~

前回の記事で、出口戦略には実は4つしかない(廃業・社内承継・M&A・IPO)ことを記載していました。

選択肢の中でも、社内承継は理想的でありつつも、ハードルがあって、進まないことが多く、M&Aを検討する経営者も増えてきていることも記載しました。

M&Aは、良い手法でありながらも、結局はオーナーが変わるので長期的にみて「思っていた事と違った」となるリスクはあります。

本来的には、生え抜き社員・番頭・親族が、これまでの歴史を踏襲しながら、若きリーダーとして会社を牽引していくのが望ましいように私は思います。(個人の主観です)

中小企業白書2023においては、事業承継をしてから2年間は業績が低下(横這い)するが3年目以降は伸びていく傾向にある、というデータもでています。

そのため、先代ほどのリーダーシップはなくとも、社内の若い人材が新社長として牽引していくことは、既存社員のストレスも少ないと私は思うのです。

(もっとも「業界再編真っ只中」の状況ではそんな悠長なことも言えなくなってきますが・・・)

前置きが長くなりましたが、社内承継の新しい選択肢に、「養子承継」があるのではないかと私は考えます。

養子承継とは、わかりやすいケースですと、娘さんしかない社長が、優秀な婿養子を加えて新社長に置くというものです。

(息子さんがいらっしゃるのに、婿養子を新社長候補で迎えることもあるかと思いますが、このようなケースはレアかもしれません。)

一般にこのような動きをとるメリットは
・自社との取引がある外部の優秀な営業マンに声をかけるなど、能力がわかっているビジネスマンにアプローチができる
・「経営者のイス」をフックに、優秀なビジネスマンを採用できる可能性
・「親族」になるので後継者側の腹も決まりやすい
(「お試しで社長をやる」というスタンスになりづらい)
・お孫さんが生まれたら、自社の株や資産を孫にストレートに移せて、税務上で効率高く承継ができる可能性がある
・いきなり社長にするのではなく、数年は管理者や役員として様子をみて段階的に引き継ぐことができる
などでしょうか。

私のお客様で、年商50億円ほどの規模で、継続的に利益をあげている、「地域の名士企業」においては、養子承継をすすめている企業がありました。

新社長は、大手総合商社で海外畑のいわゆるエリートサラリーマンでした。会長からすると、長いつきあいもあり人柄も能力もわかっていて、「彼にだったら社長を託せる」と密かに思っていたようです。

その後、新社長は会長から経営を学びながら、事業を伸ばすことに成功しています。その企業が確固たる強みをもった安定企業だったことが大前提かもしれませんが、事業承継の1つの好事例ではないかと、私は思います。

他にも大企業ですと、キューピーの中島会長は海外大学MBAを取得し、金融機関に勤務されていた「養子」です。企業規模に関わらず、今後より注目されている承継手法となるのではないでしょうか。

一方、昨今メディアを騒がせている、ミツカンのお家騒動などもあり、簡単な手法ではないのも事実です。

婿養子の立場からすると
・ハイキャリアな道をすてて飛び込んでよいのか
・本当に良い会社なのか (強みは?業界展望は?)
・年収はいくらもらえるのか
・いつになったら社長を任せてくれるのか
・「院政」を敷いてくるのではないか
・株はもらえるのか
などは、絶対に気になるでしょうし、

経営者からすると
・本当に優秀なのか 
・自社の番頭らとうまくやれるのか
・娘がどう思うだろうか
・反りがあわなくなったらどうしよう
・子供(孫)がうまれなかったらどうしよう
・「決め打ち」ではなく、何人かと比較検討したい
なども気になるでしょう。

上述したミツカンの事例は極端かもしれませんが、
会社の価値を大きく棄損するような出来事になっては元も子もありません。

事業承継を考えるタイミングで、1つの選択肢として頭にいれながら、番頭でも、実子でも、養子でも、誰でも継ぎたくなるような良い会社を作る、というのが一番の承継対策ではないかと私は思います。

考慮すべき点も多い手法ですが、ぜひ一度可能性はご検討いただければと思う次第です。

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